相続税の税務調査が増える? ~新型コロナ「5類」移行後の傾向~
2023.7.1
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行したことにより、増加傾向にあるのではといわれているのが「税務調査」です。税務調査とは申告内容が正確なものか税務署が調査を行うもので、申告漏れや無申告を指摘されると、追徴課税がペナルティとして課せられます。
■5類移行後の相続税の税務調査、変化はあるのか
コロナ禍では税務調査についても、感染防止の観点から、税務署の職員が自宅に訪問して資料の確認や聞き取りを行う、対面での実地調査を控える傾向にありました。その影響により、相続税の実地調査件数は令和元事務年度10,635件、令和2事務年度5,106件、令和3事務年度6,317件と、コロナ禍では5~6割程に減っています(国税庁「相続税の調査等の状況」より)。気になるのは、コロナ禍では実地調査件数自体は減っているものの、なんと実地調査1件当たりの追徴税額が増えている点です。制限のある状況下で、税務調査の効率と精度が上がっていることが窺えます。5類移行に伴い、実地調査件数はコロナ前と同水準に戻るのか、調査効率が上がったことの影響はあるのか、今後の税務調査に注目したいですね。
■知っておきたい税務調査が入りやすいケース
税務調査が入るのはちょうどこれからの時期で、申告の翌年か翌々年の8月から11月にかけてが大半です。特に次のようなケースは税務調査が入りやすいとされています。
- ①遺産が多額…地域によって多額の基準に多少の違いはありますが、富裕層、医師、弁護士、著名人、経営者といった高収入で遺産が多額と見込まれる方々の相続では、税務調査が入りやすいようです。実は健在のうちから数十年にわたり、税務署が預金調査をしているともいわれています。
- ②中小企業の経営者…経営者個人と会社の両方が調査対象となり、個人と会社間の取引は特に厳しくチェックされています。
- ③高所得者のはずなのに遺産が少ない…高所得である場合は職業を問わず管理システム上で把握され、遺産の額が収入に見合っているか確認されているようです。
- ④年齢・収入に見合わないくらい資産の多い家族がいる…未成年者や専業主婦といった資産背景がないのに、預金が高額である場合等は、名義預金がないかのチェックが入ります。
- ⑤海外資産がある、海外送金をしたことがある…海外資産は最近特によくみられているようです。1回に100万円超の海外送金をすると税務署に通知が届きますので、後々遺産と照合することができます。
- ⑥生前に不動産を売却している…残っているであろう額と遺産に大きな差があると、税務調査をされることがあります。
- ⑦税理士に依頼せずに自分で申告…税務の専門家である税理士が携わっていないことから、申告内容にミスや財産の見落としがないかと、厳しくチェックされるようです。
税務調査が入る事態を避けるためにも、相続税の申告は信頼できる税理士としっかり相談をして、正しく申告することが得策といえるでしょう。