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事業承継〈会社経営者の事業承継について〉(その10)

2021.9.2

  1. 15 会社の事業承継において、(その4)の9の(4)で「「自社株」を後継者に集中させるためには、贈与、売買、相続などにより移転させます」の内、今回は前回の「信託」に関連して「事業承継信託」を取り上げます。

    1. (5) 「事業承継信託」

      • (ア) この種の信託の目的は、多くは非上場会社(個人会社)が会社経営を長期に安定して継続させるために、会社の株式の相続等による分散を防止することにあり、この信託において要になる信託財産は「株式」です。
      • (イ) しかし、個人事業主の場合は、事業の基盤となる個人所有の不動産、重要な動産等を確実に後継者に引き継がせるために後記の対応を必要とします。
      •  a) 委託者は、「受託者」ら他の信託当事者と信託行為の内容を確認・検討し、その結果を合意書とし、これを公正証書とするか公証人の認証を受けておきます。
      •  b) 金融機関等からの債務を信託財産とする場合は、「受託者」が「事業信託」において、後記の通り「信託財産責任負担債務」として引き受けることを理解しておく必要があります。
      • (ウ) 高齢となった会社のオーナーは、信託を設定して、事業の承継者の受託者に株式や事業用不動産等を移転し、その管理運用を委ねながら自らに一定の権限を留保する信託の活用を考えます。
      •  a) 全財産・権限を渡さずに、株式の議決権を留保し、役員等の地位を確保する。
      •  b) 委託者あるいは委託者が指定した指図権者の指図により、受託者が株式の議決権を行使する。
      •  c) 委託者が配当金等を受領する。
      • (エ) 次期の事業承継者は決定しているが、一定の時期に他の特定者(直系卑属など)に事業承継者を変更したい場合は、前回の「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の活用を検討します。
      • (オ) 高齢となった会社のオーナーが事業承継者を決めていない場合
      •  a) 後継者候補が未成年であるとか、他の職業に就いていて直ぐに後継者を受け難い場合などや、経営者に直系卑属が無く、親族などから後継者を選定する場合は、承継取得できるまでの信託とします。
      •  b) その時は受託者として、一般社団法人を置くようにします。
    2. (6) 「事業信託」とは、個人又は法人が営む特定の事業を信託の対象とするものです。
      • (ア) 例えば、倉庫業を営むオーナーが、長男が会社員なので、事業の後継者を長男の子(孫)A又はBにしたいが、未だ幼く、適性・能力・意欲などが判らないので、「事業信託」を活用し、自己の死後は事業の片腕となっている自分の弟を事業の「受託者」とし、同人らを「事業承継指定権者」(残余財産に関する受益権者指定権者)にして、「受益者」とするA・Bが成人した時点で適任者1名を選任し、これを残余財産受益者(法182Ⅰ①)として、事業を承継させるような場合です。
      •  a) この信託では、「受託者」に対し、倉庫、事務所、敷地、車両、売掛金・営業資金、借入金・取引上の買掛金などの債務、従業員との雇用関係、得意先との契約関係、その他の機械設備など事業用財産のすべてを移転して承継させる。
      •  b) 「受託者」は、当初の受益者A、Bに対し、事業の収益からその一部を給付し、孫達の生活資金を確保し、その成長を待つ。
      •  c) 「残余財産受益者」(法182Ⅰ①)とは、「受益者としての権利を現に有する者」(例えば「残余財産の帰属」に規定する残余財産受益者)である。停止条件付で信託財産の受給権を有する者、「委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託」に規定する委託者死亡前の受益者」等は含まれない。
      • (イ) 「事業信託」は、信託法が信託行為の定めにより「信託財産責任負担債務」として債務引受けをできるとしたので(法21Ⅰ③)、可能となりました。信託行為の内容は、事業を包括して信託すると言った簡潔な条項にはできません。
      •  a) 「事業信託」は、「特定の事業」を信託の対象とし、法律的に積極財産に対する信託の設定と消極財産に対する債務の引受けからなり、その複合的な集合体について信託行為を定めることにより、実質的に委託者の事業自体を信託した状態を創出する。
      •  b) 信託行為では、積極財産及び消極財産に関すること、これらに関する取引上の地位や従業員の雇用関係の地位などにつき個別的に条項を設け、移転承継の関係や会計処理等を明らかにする必要がある。
      •  c) 「信託財産責任負担債務」とは、「信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの」である(信託法21Ⅰ)。
      • (ウ) 「事業信託」は、個人事業や家族型企業における特定の事業を信託の対象とする家族信託の性質を有し、これを「遺言」で行うことは難しいと思われます。
      • (エ) 「事業信託」をする場合は、専門家に相談し丁寧な検討を必要とします。
    3. (7) 信託の課税関係について税制上の優遇はありません。
      • (ア) 新たに信託の設定を行った場合、受益者が適正な対価を負担することなく受益権を取得した場合には、受益者に贈与税や相続税の負担が発生します。
      • (イ) 信託を事業承継に活用する場合には、後継者や受益者の納税資金負担も考慮に入れておく必要があります。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

事業承継〈会社経営者の事業承継について〉(その9)

2021.7.1

  1. 14 会社の事業承継において、(その4)の9の(4)で「「自社株」を後継者に集中させるためには、贈与、売買、相続などにより移転させます」の内、今回は前回の「遺言」に関連して「信託」を取り上げます。

    1. (1) 相続財産の多くが自社株である場合の事業承継の対策として、「自社株式」の「信託」を考えてみましょう。

      • (ア) 今回は、事業承継対策に信託を活用しようとするもので、活用のメリットは信託財産が遺産分割協議の対象とならず相続トラブルの発生を抑えられるようですが、
      • (イ) 遺言では、後継者に自社株を相続させた場合に、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされれば、自社株の集中相続の実現が困難となります。それを回避するため、二男や長女に「無議決権株式」を相続させる方法を検討しました。
      • (ウ) 矢張り「遺留分侵害額請求」の適用を免れられないこと、信託では信頼できる「受託者」を選任できることが重要となることを念頭に置いて下さい。
    2. (2) 「遺言代用信託」の活用を考えます。

      • (ア) 「遺言代用信託」は、委託者となる財産(自社株式)所有者が生前に受託者(財産を管理処分する人)に信託し、死亡時に指定済みの承継者に信託財産(受益権)を引き継ぐとする「信託契約」を設定する制度です。

      • (イ) 経営者(委託者)が、生前に自社株式を「当初は先代経営者を受益者とし、先代経営者死亡後は後継者を受益者とする。」とする信託を設定します。

        • a) 「自益信託」(委託者=受益者/信託財産の所有権は、委託者から受託者に移転する)の場合は、信託財産は受益者のために管理・運用され、信託財産から生じる収益は受益者が受け取り、その実質的な所有者は受益者となる。
        •  1) 「自益信託」の設定時は、信託財産の実質的な所有者は変わっていないので、贈与税などは課税されないが、後継者が信託財産を承継した場合は、相続税の対象となる。
        •  2) 相続人が複数存在し、後継者以外の相続人も受益者に含める場合は、後継者のみに議決権の行使の指図権を付与すると定めるようにする。
        • b) これにより、委託者は生存中は従前通り自ら受益者であるが、亡くなった時に受益権(自社株式)を指定承継者に承継させるので、遺言によって自社株式を遺贈したのと同様に「遺言代用」機能を発揮させることができます。
        •  1) 遺言代用信託で財産管理を受託者に任せることができれば、受益権の承継者を自ら財産管理を行うことが難しい障害者・持病のある人・判断能力の低い人にすることも可能になります。
        •  2) 残された遺族の生活上の不安を和らげたい人にとっては、遺言とは違った局面で利用できるし、親族関係が複雑な場合には、資産承継の道筋を決めておくこともできます。
        •  3) 相続人同士の争いを防ぎ、特定の相続人の生活を安定させる方法を予め定めておくためにも利用できます。
    1. (3) 「他益信託」(委託者≠受益者/委託者とは別の人が受益者になる信託)の活用も検討して置くべきでしょう。
      • (ア) 「他益信託」の場合は、経営者(委託者)が生前に自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において「後継者を受益者とするが、議決権の行使の指図権は委託者が保持する。」と定めることもできますが、受益者に対して贈与税が課税されます。
      • (イ) これにより、先代経営者が議決権を保持しつつ、後継者が自社株式に係る財産権(配当権及び残余財産分配権など)を保持すると同様の効果が得られますので、そのメリットを活用すべき場合もあるでしょう。

      (4) 「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の活用を検討しましょう。

      • (ア) 「A(経営者)が保有する株式について、Aが死亡したら二男Cへ遺贈する。その後Cが死亡した場合には、亡長男Bの子Dに遺贈する。」といった、第一次受益者(A)の受ける財産上の利益が、第二次受益者(C)、第三次受益者(D)に移転するような「後継ぎ遺贈」を希望する場合、遺言では最初の二男Cへの遺贈しか効力を認められないとされており、その有効性に問題がある。
      • (イ) そこで「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」を活用し、先代経営者(委託者)が自社株式などを対象に信託を設定し、信託契約において「後継者を受益者とし、受益者(後継者)が死亡した場合には、その受益権は消滅し、次の後継者が受益権を取得する。」と定めた信託契約を締結する。

        • a) 「受益者連続信託」とは、受益者の死亡により、その受益者の有する受益権が消滅し他の者が新たな受益権を取得する旨の定めがある信託をいう。
        • b) これにより、孫の世代の後継者まで承継の道筋を先代経営者が自己の意思で決定することができるが、それぞれの承継時の相続税課税を免れることはできない。
  2.   (5) 次回は「事業承継信託」について検討しましょう。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

法改正で変わる土地の相続 ~相続登記の義務化~

2021.5.29

相続登記の義務化についての改正案が2021年4月21日参院本会議で可決・成立し、

ニュース等でも大きな注目を集めています。
改正法は2024年までに施行される予定です。

 

具体的なルールが決まるのはこれからで、

改正法施行により影響があるのはまだ先となりますが、土地の相続が大きく変わります。

ポイントを確認しておきましょう。

 

■相続登記の義務化で何が変わる?
法改正により、相続が発生したら3年以内に相続登記(不動産の名義変更)をしなければならず、

違反した場合は10万円以下の過料の対象になります。
この期限は厳密にいうと、相続開始と不動産を相続する権利があることを知ってから3年以内です。

 

何らかの事情により相続登記ができないときのために、

相続人申告登記(仮称)という相続登記の義務を一旦免れる制度も新設されます。

 

相続登記の義務化により、実質的に遺産分割協議にも3年以内という期限ができることになります。
遺産分割協議では、他の財産についても話し合いをしないと、不動産を誰が取得するかはなかなか決まりません。
不動産がある相続には期限ができることを今から意識して準備をしておきたいですね。

 

■過去の相続も義務化の対象に
改正法の施行前に発生した相続も、相続登記の義務化の対象になるとされています。
例えば「20年前に亡くなった祖父名義のままの土地」といった、

過去に相続が起きて相続登記をしていない全てが義務化の対象になるということです。
まだ時間の余裕があると思わずに、早めに相続登記の準備を始めましょう。

 

■住所・氏名変更登記の義務化と、土地の所有権放棄制度
相続登記とともに、住所・氏名の変更登記も義務化されます。
住所や氏名に変更があった場合も、変更日から2年以内に変更の登記申請をしないと5万円以下の過料の対象です。

 

また、土地の所有権の放棄ができる制度も新設されます。
残念ながら放棄を考えている方にとっての朗報とはいえず、

放棄される土地は国が受け入れますが、「問題のない土地」であることが条件です。

 

建物がなく更地として利用できる、境界が明確で権利関係に争いがない、

土壌汚染がない等の条件を満たしている必要あり、

その土地の管理費10年分相当の負担金を納付する必要もあります。
利用にはなかなかハードルの高い制度になりそうですね。

 

今後も増加が続く見込みの所有者不明土地への対策として、

このように法整備が進められています。
相続登記がされない要因のひとつに、相続の準備不足があるでしょう。
「何となく相続の話し合いをせずに10年以上」というケースは、

話し合うと相続トラブルに発展することが多いのが実状です。

 

皆さんは遺言書を作成する等の相続の準備はされていますか?

「わが家は心配ない」とは思わず、誰にでも起こり得ることとして相続の準備をしたいですね。

今からはじめる贈与のすすめ

2021.5.6

令和3年の今年も、もうすぐ折り返しを迎えますね。

年末に向けて、今からできる相続税の対策を考えてみませんか?

 

今回お話しする子や孫への「生前贈与」は、

相続税の対策としては有効な方法のひとつです。

 

年間で110万円以内なら贈与税はかからないといった話を聞いたことはありますか?

 

贈与税は財産を貰った人が支払いますが、

贈与を受けた金額が年間で110万円以内なら贈与税はかかりません。

 

生前にとる対策の基本は、相続発生時までにできるだけ少ない負担で、

相続税がかかる財産の額を減らしておくことです。

税金の負担なく下の代へ財産をあげられるのは、大きなメリットといえますね。

 

贈与税の税率は、相続税の税率よりもかなり高く設定されていますので、

一度に多額の財産を贈与すれば税金も多くかかります。

 

そのため長い期間をかけて多くの人に少しずつ贈与を行うことで、

税金の負担を抑えながら、財産を移転することができます。

 

ただ、注意をしたいポイントが2つあります。

  1. ①相続発生前3年以内の相続人に対する贈与は相続財産に加算され、相続税の対象になります。
  2. ②贈与の内容によっては遺産分割の際に相続財産に持ち戻される場合もあり、

相続人同士で過去の贈与をめぐってトラブルになる可能性もあります。

 

「かえって多額の税金や諸費用を支払うことにならなってしまった」

「良かれと思った贈与が、相続発生後の争いの種になってしまった」

といった事態にならないように、よく検討する必要がありますね。

 

相続手続きに便利!「法定相続情報制度」をご存知ですか?

2021.4.1

相続手続きでは、お亡くなりになられた方の戸籍謄本等の束を、

銀行や証券会社などの相続手続きが必要な先に、何度も出し直す必要があります。

 

窓口での相続人の確認には時間がかかりますが、現在のコロナ禍では尚更のようで、

なかなかスムーズに手続きを終えられないようです。

 

戸籍謄本等の取得には意外と費用もかかりますので、コスト面のデメリットもあります。

 

そこで活用いただきたいのが、法定相続情報証明制度です。

 

登記所(法務局)に戸除籍謄本等と相続関係を一覧に表した図を提出すれば、

登記官からその一覧図に認証文を付した写しを『無料』で交付してもらえます。

 

その後の相続手続きは、この「法定相続情報一覧図の写し」を利用でき、

戸除籍謄本等の束をその都度出す必要がなくなります。

 

法定相続情報一覧図の写しは、銀行や証券会社の相続手続きだけでなく、

相続登記(不動産の名義書換)や相続税申告にも利用できます。

記載が必要な事項がそれぞれありますので、

作成前には各専門家と相談してから手配をすると良いですね。

 

 

事業承継〈会社経営者の事業承継について〉(その8)

2021.3.1

13. 会社の事業承継において、今回は前回の「遺言」に関連して(その7)12.の(2)(ウ)で述べた、後継者以外の兄弟姉

  妹に「議決権制限株式(無議決権株)」を取得させる遣り方を取り上げます。

 

  1.  (1) 相続財産の多くが自社株である場合に、その事業承継における相続対策として「議決権制限株式(無議決権株)」の利用を考えてみましょう。
  2.  (ア) 事例として、会社経営者が事業の後継者を長男とし自社株式を承継させたいが、相続財産の多くが株式である場合は
  3.   二男・長女への相続対応に苦慮します。

 a)遺言により後継者長男に自社株を相続させた場合に、二男・長女から遺留分侵害額請求がなされれば、自社株の集中

  相続の実現が困難となります。

 b)相続争いを避けるため、自社株を二男・長女にも分割すると、将来、株主総会での提案権、会社の帳簿閲覧請求権、

  取締役等の解任請求権などの少数株主権行使し、経営に口出され効率的な会社運営に支障を来す虞があります。

  1.  (イ) それを回避する手法として、二男・長女に「議決権制限株式(無議決権株)」を相続させる方法があります。そ
  2.   場合に、無議決株式を発行するには、後記の通り「会社定款」にその旨の規定が設けられている必要があります。

 a)「議決権制限種類株式」とは、株主総会の全部または一部の事項について、議決権の行使を制限できる株式を指し、

  会社法は「種類株式」と位置付け、保有株式数と議決権との関係を分離することを可能にした。

 b)「議決権制限株式」は、1) 完全無議決権株式、2) 特定の事項のみの議決権制限株式,の種類の株式を定めること

  ができる。

 c)「議決権制限株式」は、普通株式でも発行できるし、配当優先株とすることもできる。

  1)  一定の株式を全事項について議決権を有しない「完全無議決権株式」(配当優先権付)にすれば、相続人の内、

   議決権行使に関心のない二男・長女にこの株式を与えれば、後継者長男に経営権を集中させられる。

  2) 株式発行に当たっては、将来の相続を見据えて、予め株式の一部を配当優先及び取得請求権付の議決権制限株式の

   種類株式にして置くと良い。

  1.  (ウ) オーナー経営者一族の持株比率が低い場合などには,分散している株式を無議決権株式に転換することにより、
  2.   議決権を確保できるようになります。
  3.  (エ) 社員持株会がある場合は、その株式を配当優先権付の無議決権株式とすれば、オーナー経営者一族の議決権を確保し
  4.   安定的な経営が可能となります。

 

  1.  (2) この株式を発行する場合は、定款で発行可能種類株式総数と議決権行使事項・条件を規定しなければならず(108Ⅱ③,但しⅢ・規則20Ⅰ③)、定款に規定を設けるには、株主総会での特別決議(効力発生要件)を要し、また定款の変更登記を必要とします。

 

  1.  (3) 非公開会社」では、議決権制限種類株式の発行数(発行割合)に制限がありません。従って、例えば普通株式1株を除いた残りの全てを無議決権株とすれば、1株で会社経営を牛耳ることができます。なお「公開会社」は、発行済の議決権制限種類株式の総数が発行済株式の総数の2分の1を超えることはできません(会115条)。
  •  (ア) 種類株式を発行すると、会社が一定の行為をする場合に種類株式に損害を及ぼす虞があるときは、種類株主総会の
  •   承認が必要となります(会322Ⅰ)。
  •  (イ) 定款変更に際し、種類株式の内容として、上記の種類株主総会の決議を要しない旨を定款に定めておくことが肝要
  •   であり(会322ⅡⅢ)、その定めがない場合は、種類株式が一種の拒否権付株式(黄金株)になってしまう虞がありま
  •   す。

 

  1.  (4) 経営者は、遺言書を作成し、後継者長男に普通株式を、二男・長女に議決権制限株式(配当優先株とする)を相続させるものとします。
  •  (ア) 議決権行使を制限する代わりに、剰余金の配当を優先とする配当優先権付議決権制限株式を発行し、二男・長女に
  •   与えるようにします。
  •  (イ) 遺言書は、例えば「遺言者は、相続人長男〇〇に議決権のある株式を、相続人次男・長女〇〇には、配当優先の無
  •   議決権株式を相続させる」などとします。

 

  1.  (5) 「完全無議決権株式」の評価は、原則として議決権の有無を考慮しません。
  •  (ア) 例外として、その評価について配当優先(劣後)の評価(同族株主が相続等で取得した場合)の特例があり、相続
  •   全員の同意の下に、配当優先株の評価又は原則的評価方法により評価した金額の95%相当額とした場合は、議決権株式
  •   の価額に評価減の5%を加算して評価することができます。
  •  (イ) 但し、次の要件が満たされる必要がある。

 a)相続税の法定申告期限までに、株式の遺産分割協議が確定し、相続取得した全同族株主から法定申告期限までに

   「無議決権株式の評価の取扱いに係る選択届出書」が、所轄税務署長に提出されていること。

 b)その相続税の申告に当たり、「取引相場のない株式の評価明細書」に、上記の調整計算の算式に基づく無議決権株式

   及び議決権のある株式の評価額算定根拠を、適宜の様式で記載して添付すること。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

もっと知り隊!第1回 新たな認知症対策「家族信託」とは?

2021.2.1

突然ですが認知症になり、判断能力がなくなるとどうなると思いますか?

1つ目は銀行口座が凍結される恐れがあります。

2つ目は不動産の売却、管理、修繕ができなくなります。

 

今までの法律だと、成年後見制度を使うしか方法がありませんでした。

しかし、成年後見制度は家庭裁判所に監督され、相続税対策ができない、不動産の売却に家庭裁判所の許可がいる、後見人に司法書士や弁護士などの専門家が就任する可能性がある、といったデメリットがあり、世間の評判はよくありません。

 

そこで登場するのが家族信託です。

 

家族信託とは、親が元気なうちに信頼できる子に財産の管理を託すという契約です。

※子以外が財産を管理する場合もあります。

 

家族信託をすると、財産の管理・運用は子に任せて、収益は親が受け取ることが出来ます。

 

 

これまでの法律では、財産を持っている人(所有者)は管理・処分権限と、利益を得る権限をどちらも持っているため、財産を持っている人が認知症になったり、死亡したときに、財産の管理や処分で困ることがありました。

 

アパートなら、修繕などの管理と、賃料をもらう権利が所有者にあるため、所有者が認知症になると、修繕が難しくなり、相続で財産を高齢な配偶者に渡すと、そこでもまた管理が難しくなる場合があります。

 

管理・処分権限と利益を得る権利は分離できず、常に所有者が持つためです。

 

 

ところが、家族信託を設定すると、財産の管理・処分を信頼できる家族に任せて、利益を得る権利を自分が指定できる人に渡せます。

 

アパートなら、修繕や不動産業者とのやりとりは家族に任せ、賃料は自分が指定する人に代々受け継がせることができます。

 

信託をすれば、管理・処分権限と利益を得る権利を分離することができ、自分の指定する人に渡せるためです。

 

このように、財産を管理する人と利益をもらう人を分けることが可能になり、財産の管理方法の様々な不安や悩みを解決できるようになりました。

 

 

しかし、家族信託は新しい制度であり、非常に高度な知識が要求されるため、家族信託業務を行える専門家が少ないのが、現状です。

家族信託は契約によっては今後20年、30年と続くこともあり、契約を結んだときではなく、財産を持っている方(委託者)の死亡や、親族が死亡したときに契約書の欠点が出てきてしまう可能性があります。

 

必ず家族信託の相談実績が多く、契約後のアフターフォローまで対応してくれる専門家に相談することをおすすめします。

筆者紹介

司法書士

林 祐司(司法書士事務所 相続・家族信託の窓口 代表)

経 歴
さいたま市浦和区に相続・家族信託専門の司法書士事務所を立ち上げ、相談件数は年間100件を超える。 敷居が低い司法書士、親身に話を聞いてくれる司法書士、フットワークの軽い司法書士をモットーに土日祝日も営業、年中無休で活動を続ける。                   〈事務所概要〉〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤2-17-3 ℡:048-749-1111

税理士が解説!第3回 居住用財産の特例の適用関係について

2021.1.20

Q:本年に自宅(「居住用財産」といいます。)を売却する予定ですが、

  各種居住用財産の特例の適用関係について教えて下さい。

 

A:居住用財産を譲渡した場合には、一定の要件を満たすことを条件に、次の特例を受けることができます。

 

【措法31の3】

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)

【措法35①】自己の居住用財産の譲渡所得の特別控除(譲渡益から3,000万円控除)

【措法36の2①】

特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(譲渡益の繰延べ)

【措法41の5】

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

(買換えの場合の居住用の損失の損益通算等)

【措法41の5の2】

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

(ローン残があった場合の居住用の損失の損益通算等

 

 各種居住用財産の特例については、譲渡損益の別と、譲渡した居住用財産の所有期間で区分すると、次の組み合わせの中から選択することになります(組み合わせのうち、任意で一部の特例の適用を受けないという選択も可能です。)

 なお、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(措法41)も受ける特例によって併用することができる場合があります。

 

(1)譲渡益の場合

  □所有期間10年超の場合…措法35①+措法31の3

  □所有期間10年超かつ居住期間10年以上の場合…措法36の2②

  □所有期間10年以下の場合…措法35①

(2)譲渡損の場合

  □所有期間 5年超の場合…措法41の5(+措法41)

  □所有期間 5年超の場合…措法41の5の2(+措法41)

(注)同年に措法35①と措法36の2の適用を受けた場合には、併用することができず、措法35①が適用されることに

  なります。

各種居住用財産の特例の適用関係(措法35以外は国内財産に限ります。)

 

損益 所有期間 所得控除等 税率

 措法41

 控除適用

 

 

10年超 措法35①

(所有期間の要件なし)

措法31の3・・・

6,000万円以下14.210%

6,000万円超20.315%

併用不可
措法36の2②

(居住期間10年以上)

20.315%
10年以下 措法35①

(所有期間の要件なし)

5年超・・・20.315%

5年以下・・・39.630%

措法35③

(所有期間の要件なし)

5年超・・・20.315%

5年以下・・・39.630%

併用可

5年超 措法41の5

併用可
措法41の5の2

※ 20.315%…長期譲渡所得の課税の特例(措法31①)

    39.630%…短期譲渡所得の課税の特例(措法32①)

 なお、上記税率には住民税(根拠条文は省略)も含みます。

筆者紹介

税理士

高橋 安志(税理士法人 安心資産税会計 社長  一般社団法人 安心相続相談センター 理事)

経 歴
昭和26年 山形県大石田町生まれ 中央大学商学部卒業 [取材] 日本経済新聞、朝日新聞、週刊新潮、週刊ダイヤモンド、 サンデー毎日などに相続専門税理士として取材記事多数寄稿 [著書] 「小規模宅地の特例の活用」など著書累計27冊(2019年現在) [TV関係] ・テレビ埼玉・千葉テレビ・テレビ神奈川のマチコミ(水)という番組で準レギュラー生出演 ・TVCM 放映:月曜 TBSTV 5:30~ (あさちゃん)、木曜 テレビ埼玉22:00~ (ゴルフ番組)、日曜 テレビ埼玉 6:00~ (ゴルフ番組)

事業承継〈会社経営者の事業承継について〉(その7)

2021.1.4

12. 会社の事業承継において、(その4)の9.の(4)で「「自社株」を後継者に集中させるためには、贈与・売買・相続

  などにより移転させます」の内、今回は前回の「相続」に関連して「遺言」を取り上げます。

 

  1.  (1) 事業承継においても、「遺言」による相続対策は重要です

 

  1.  (2) 遺言は(その1)の6.で、会社オーナーが指名した後継者に事業を承継させるための財産の移転となります。
  •  (ア) 事業承継の対策を練った上で遺言書を作成します。遺言書は書き換えができるので、後日後継者に変更がある場合は
  •   早期に書き直すものとします。
  •  (イ) 後継者への「自社株式」を取得させる割合は、特別決議ができる3分の2とすることが望ましいのです。その理由は(その3)の8.で述べてあります。
  •  (ウ) さもなければ、後継者に普通株式をその他の相続人に議決権制限株式(配当優先株とする)を相続させるように考慮
  •   すべきです
  •  (エ) オーナーは、遺言書の「附言事項」に会社に対する想いと、スムーズな事業承継のために後継者を指定し、遺産を承
  •   継させる理由などを記載し、相続人らに説明し、相続人間に揉め事が生じないようにすることも大事です。
  •  (オ) 遺言書は、「自筆証書」よりもその効力に問題が起き難い「遺言公正証書」とし、遺言の内容は専門家に相談するなど
  •   して慎重に決定する必要があります。

 

  1.  (3) 遺言をするに当たっては、次の事項に留意しましょう。
  •  (ア) 後継者に上記の通り、経営権を安定させるに足る数量の株式、あるいは種類株式、その他の重要な資産を取得させます。
  •  (イ) 後継者以外の相続人に対しては、少なくとも遺留分を満足させる資産を取得させます。

a)その対応策として,受取人を後継者とし、後記の遺留分侵害額の支払に足りる金額を取得できる生命保険契約を締結し

 ておくのも一策です。

b)あるいは、一定額の財産を生前贈与し、家庭裁判所の許可を受けて、相続の開始前に遺留分の生前放棄(民法1049条)

 をして貰うようにします。

  •  (ウ) 「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」(民法改正(令和元年7月1日)に変更されたので、遺留分は侵害額の金銭請求のみとなり、具体的金額の請求があればその翌日から遅延損害金の支払義務が発生することになります。

a)金銭の代わりに相続財産を交付すると、従前とは異なり、税務上、当該物を売却して金銭を支払ったものとみなされ、

 譲渡所得の課税があります。

b)遺留分は「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき」、又は

 「相続開始の時から10年を経過したとき」に時効によって消滅します。(1048条)。

 

  1.  (4) これまで述べた「生前(相続前)」になす「売買」と「生前贈与」の承継方法に対し、「死後」のためになす「遺言」と
  2.  「死因贈与契約」の承継方法との特長点を対比しておきます。
  •  (ア) 「売買」は一般的に言えば、承継者と被承継者との相続財産の関係を切断できるメリットがあります。
  •  (イ) 株式については売買ではなく、特典のある生前贈与の検討が重要です。

a)「生前贈与」は、オーナーの存命中に承継させる便宜さがあり、また株式評価の特例、贈与税・相続税の免除の規定を

 適用することができます。

b)しかし、それが「特別受益」に該当すると相続財産への「持戻し」が問題となるので、遺言書で「持戻免除」の意思表

 示をしておく必要があります。

c)「特別受益」に該当する贈与の評価時期が相続時(民法1043条)となるので、遺留分の価格が上昇することがあります。

  •  (ウ) 「死後」の承継方法である「遺言」と「死因贈与」には、次の特徴があります。

 ①事業承継では「遺産分割協議以外の方法で事業用資産を承継者に承継させる」ことが重要であって、「遺言書」を書き

  置くことでそれを実現できます。

 ②「遺産分割協議」による場合は、相続開始時に「株式」等が準共有状態となりますが、遺言を遺すことによりこれを防

  止できます。

 ③遺言と死因贈与の場合は相続に伴う執行が必要になり、手間と時間が掛かるデメリットがありますが、それは専門家に

  委任することで省くことができます。

 

  1.  (5) 遺言書がなく遺産分割協議となり、その協議が整わないと議決権が行使でなくなります
  •  (ア) 遺産分割協議が成立しないと、株式は相続人の「準共有」状態になり、株主権を単独で行使できる者はいないので、
  •   取締役すら選任できず(株式数の過半数による「普通決議」を要する)会社の運営ができない状況になります。
  •  (イ) <共有者による権利行使者の決定>は、通常、共有物の管理に関する事項として各共有者の持分の価格に従い、その
  •   過半数で決します(民法252条本文)。
  •  (ウ) 会社法106条は、共有者による権利の行使について「株式が2以上の者の共有に属するときは、当該株式について
  •   の権利を行使する者1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ当該株式についての権利を
  •   行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合はこの限りでない。」と規定し
  •   ています。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

事業承継〈会社経営者の事業承継について〉(その6)

2020.10.1

11. 会社の事業承継において、(その4)の9.の(4)で「「自社株」を後継者に集中させるためには、贈与、売買、相続

  などにより移転させます」の内、今回は「贈与」と「相続」について取り上げます。

 

  1.  (1)株式の贈与については、一般の贈与(暦年贈与)と「相続時精算課税制度」による贈与(相続税の課税対象となる)

  ものとがあります。

 

  •  (ア)<一般の贈与(暦年贈与)の場合>は、株式の価額、すなわち 「相続税評価額」に課税がなされます。
  •  a)非上場株式(取引相場のない株式)の株価の評価方法には、「類似業種比準方式」、「純資産価額方式」、「配当還
  •   元方式」があります。
  •   1)「類似業種比準方式」は,国税庁が業種ごとに公表する上場企業の1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額

   から、類似している業種の株価を参考にして株価を評価します。

  •   2)「純資産価額方式」は、相続税評価額による会社の純資産価額(資産・負債 を時価評価し、その差額の時価純資
  •    )を株主持分として株価を評価します。但し、純資産価額から帳簿価額を差し引いた差額の税額を控除します。
  •   3)「配当還元方式」とは、企業の配当金額を資本還元率で除して株価を算定します。
  •  b)各評価方式の特徴は、「類似業種比準価額」が「純資産価額」に比べて低くなる傾向があります。
  •  c)110万円の基礎控除がありますが、株価が高額であると贈与税の負担が大きくなり、また贈与税の税率も高くなり
  •   ます。また、遺留分の問題が残ります。
  •  (イ)<「相続時精算課税制度」による贈与の場合>は後日、相続開始の時点で相続税の課税対象となることがありま
  •    す。
  •  a)<限度額:2,500万円>の基礎控除(特別控除額)があり、贈与税額は贈与財産の価額の合計額から、複数年にわた

  り利用できる特別控除額(2,500万円)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。

  •  b)自社株式、現金、不動産等を対象にすることができます。
  •   1)自社株式の贈与のポイントは、「株価算定の基準が贈与時」となり、「相続時」ではない点にあります。
  •   2)そこで、自社株の株価が上昇機運にある企業では、株価引き下げ対策を行って後継者に自社株を生前贈与する方策

  を採るべきであり、「新型コロナ不況」下もその時期と言える場面であるかも知れませんので、検討を要します。

  •   3)オーナー社長が還暦前は暦年贈与の基礎控除110万円を活用し、その間に株価引き下げ対策を実施し、還暦後、

  相続時精算課税制度を活用して贈与をする策もあります。

  •  c)生前贈与財産は,その制度名通りに相続財産に持ち戻され「相続時に精算して課税」されるので注意を要します。基
  •   礎控除額を超過しなければ問題はありません。
  •  d)贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日におい
  •   て20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫とされています。
  •  e)相続時精算課税は、受贈者(子又は孫)が贈与者(父母又は祖父母)ごとに選択できますが、一旦選択すると選択し
  •   た年以後、贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。
  •  (ウ)取引相場のない株式(議決権のある株式)等の贈与税の納税猶予制度の利用も可能です。
  •  a)「経営承継円滑化法」(略称)による都道府県知事の認定を受けると、後継者が非上場会社の株式等を先代経営者等
  •   から贈与・相続により取得した際、贈与税・相続税の納税が猶予又は免除されますが、詳しくは専門家に相談してくださ
  •   い。
  •  b)この制度は「事業承継税制」と呼ばれ、個人事業者の事業用資産の贈与・相続の場合にも適用されます。

 

  1.  (2)相続による事業承継では、後継者に、できれば全株式を取得させる遺言を残すのが重要ですが、遺留分侵害額請求の

  問題は解決しておくべきです。

 

  •   (ア)遺言により後継者に有利に株式を取得させ、会社定款に株式の譲渡制限と売渡請求の定めを設けると、他の相続
  •     人が株式を取得しても強制的に買い取ることができます。
  •   (イ)遺言がないと、遺産分割協議の場で事業承継が問題がとなり、分割協議が整わないと、株式が宙に浮いてしまい
  •     会社の議決権の行使・運営が困難となります。
  •   (ウ)相続人株主が後継者以外にもいると、その議決権を振りかざし、後継者の意図に反する議決権行使をして会社運
  •     営が困難になることがあります。
  •   (エ)遺言は「遺言公正証書」によるものとし、その具体的な対策は専門家に相談してください。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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