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最新・相続ジャーナル

財産リストを作成しましょう

2025.1.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

皆さんは実際に贈与をする際、何のために贈与をするのか、贈与をすることでその目的は達成できるのか、しっかりと検討をされていますか?

 

例えば相続税の負担を抑えるために贈与を検討している方の中には、実際には相続税がかからない見込みの方もいます。具体的に対策を講じる前には、財産の明確なリストアップをしておきましょう。次のような財産リストを参考に、ぜひ作成してみて下さい。

 

思ったより大変な相続手続き

2025.1.6

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

ご相続手続きを一通り終えた方の感想は、大半が「ほっとしました」「大変でした」です。相続手続きの煩雑さも大きな理由でしょう。ご相続が起きた場合に戸惑わないように、どんな相続手続きが必要でいつまでに行うのか確認しておきましょう。

 

■相続開始後のスケジュール

路線価を確認しましょう

2024.12.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

毎年7月は、相続税や贈与税の算出基準となる路線価が公表される月です。路線価が定められている土地の相続税評価の仕方を、改めて確認しておきましょう。

路線価は道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額で、千円単位で表示されています。まずは自宅として使用している土地の評価額を次の計算例で確認してみましょう。

 

賃貸されている土地については権利関係に応じて次のように評価額を調整して算出します。

 

相続の準備にあたり、相続税がかかるかの確認は必須といえます。自宅を含め、ご所有地の路線価はぜひ毎年確認をしておきましょう。

 

「タワマン節税」活用の可能性について(その4)

2024.12.2

今回は、マンション評価方法改正後の「タワマン節税」活用の可能性をマンションの性質から見ておきましょう。

 

  1. 1 マンション評価方法が改正(「理論上の市場価格」の60%の評価)されたが、なお評価額40%分の引き下げと債務控除(金利負担がある)の効果が残るので、「タワマン節税」による相続対策の効果がない訳でもないと見られます(「その2」の3参照)。

  2. 2 タワマンは、容積率の高い土地に建設され、建物の取得価額に占める割合が高いので、賃貸して建物を減価償却をすると評価額が下がり、相続税評価額を圧縮します。

    1. (1) タワマンを賃貸すると、相続評価額が「借家権割合30%」で、下記の通り現金の相続に比べて評価額が低くなり、土地は時価の8割程(1-(18~21%))、建物は固定資産税(建築代の6~7割)の「30%減」で建築代の約50割程となります。
      • (ア)土地の相続税評価額×(1-借地権割合(60~70%)×借家権割合×賃貸割合)
      • (イ) 建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合(30%)×賃貸割合)
    2. (2) タワマン購入後の賃貸は、賃料収入を得て建物の原価償却できるので「所得税対策」としても有用性があります。しかし以下の点を考慮する必要があります。
  3. 3 タワーマンションについては法的な規定がなく、一般的に高さ60m、20階以上の超高層マンションを指すとされています。
    1. (1) 超高層建築物は、建築基準法20条1項が定めた「構造耐力」(建築物の自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対する構造上の安全性)について国土交通省の審査と同省大臣の合格認定を受けること、高さが100m(30~33階位)を超える場合は、消防庁の「指導基準」で火災発生など緊急時避難用の屋上ヘリポートの設置を要します。
    2. (2) タワマンの多くは、周辺に便利な施設が集積する都心部や駅近に建造され、交通の便も良く賃貸や売買には有利な条件が備わり、将来性があるとされています。
      • (ア) タワマンは、再開発の一環として開発されることも多く、ゆくゆく周辺環境が整って資産価値が高くなり、中古でも高額で売り易いと予測される。
      • (イ) また高層階には、共用施設として展望室、ラウンジを設けられ魅力的で、陽当たり、眺望などさまざまな利便性がある。しかし、次の点に注意を要する。
      • (ウ) 特に高層階の場合、エレベーターの待ち時間が長く、携帯電話、ポケットWi-Fiが繋がり難く、騒音の悩みもあり、洗濯物をベランダに干せないなど、毎日の暮らしに関わるデメリットがあると言われている。

      • (エ) 地震が起きると、地震波の「長周期」の揺れと建物の「固有周期」が共振し易く、特に高層の上階が激しく長く揺れるので家具・家電の移動・転倒や、停電によるエレベーター、給水等のライフラインの停止など、日常生活に様々な支障が生じる虞もあり、そのための避難や安全の対策も必要となる。
    3. (3) 「タワマン節税」を上記の事情を踏まえて資金面(借入・返済)と便宜性の面から改めて慎重に検討して見ると、必ずしも上階に拘わる必要性がないとも言えます。
      • (ア) タワマンは、低層階も高層階に劣らず眺望や採光が良く、その割に価格が比較的安いので、賃貸には低・中層階を購入するも良い選択と言えよう。
      • (イ) 一般的に、20階建ての場合は1~7階位まで、40階以上の場合は14~15階位までが低層階になると見られており、災害時や停電時にエレベーターが止まった場合でも階段で移動できるといったメリットがある。
      • (ウ) 都心立地や駅近の利便性、エントランスや外観の豪華さは、高層階と同様に享受でき、ラウンジやゲストルームなどの共用施設は階数に関係なく利用できる。
  4. 4 今後の「タワマン節税」の活用でも、相続取得後早期に「タワマン」を売り抜ける手法を取らなければ、大規模修繕への配慮を必要とします。
    1. (1) タワマンに限らず、マンションにおける重要な問題の一つは、経年劣化に伴い大規模修繕の時期を迎えるので修繕積立金について考えておきましょう。
    2. (2) 大規模修繕の費用は、マンションの規模が大きく高層になるほど維持管理費と共に増加傾向にあり、資金不足等により適切な修繕が行われないとその維持管理に大きな影響を与えると言われています。
    3. (3) タワマンを購入し賃貸収入を得る場合は、他の収入も念頭に置き、マンションの管理費・修繕積立金等の増額を予想し、借入返済が確実にできる無理のない資金計画を立てるなど、長期的展望をもって慎重に検討する必要があります。
      • (ア) マンション分譲時の修繕積立金は少な目になされる傾向があり、年月の経過と共に収入の減少や物価上昇等があって大規模修繕時には資金不足に陥り、管理組合が区分所有者に追加負担を求めざるを得ないことがあると言われている。
      • (イ) 借入金の返済額が大きい場合は、借入返済と管理費に加え修繕積立金が増額となるとマンション賃貸事業自体への負担が増大する懸念がある。
  5. 5 タワマンの資産価値の殆どは「建物自体の価値」で、建築後その価値が減額して行くので、将来マンション売却を考慮している場合は、次の点に注意が必要でしょう。
    1. (1) マンションは、容積率600%まで緩和された敷地に高層建築物を建て、価格配分が土地約30%、建物約70%の比率で資産価値の殆どは建物価格です。

      • (ア) 資産価値の比率が高い建物が減額するのであれば、土地価格が相当に上昇しないとマンションの価値を維持が難しくなると言う問題もある。
      • (イ) 建物が経年劣化しても資産価値を維持できるのは、都心部の限られたエリアに敷地を有するマンション、すなわち「ブランド力のあるマンション」だと言われているので「土地」の持つ価値についても考慮する必要がある。
    2. (2) 付け加えると、マンションは一面区分所有者の共同体であり、マンションの良好な居住環境による価値の維持には、所有者全員が管理組合のルールを遵守し協力し合うことが重要であり、中にコミュニケーション能力に欠けるクレーマーがいると維持管理に困難を来す虞のあることにも注意する必要があります。
  6. 6 マンションの評価方法の改正後、「相続対策」としての「タワマン節税」の途が全く閉ざされた訳ではなく、その活用については上記の各点に配慮し、高価格帯でなく多額の借入金を要しない「中低層階」の選択をも検討し、かつ相続承継人の所得税における「タワマン投資」の効用も考慮することが大事であると思われます。その場合は専門家とも相談してみて下さい。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」

年末に確認しておきたい相続の情報とは?

2024.11.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

秋も深まり朝夕はめっきり冷え込むようになり、年末に向けて慌ただしい時期に入りました。年末が近づくこの時期に相続の分野で気になるのは、やはり来年度の税制改正大綱の発表でしょう。税制改正大綱は税制改正の概要をまとめた大枠の方針で、毎年12月中旬から下旬頃に発表されます。新聞や雑誌でも特集が組まれ毎年注目を集めますが、昨年発表の税制改正大綱には、暦年贈与の相続財産への加算期間3年から7年への延長が盛り込まれたことで特に関心が高まりました。適切な相続対策を検討し直した方も多いでしょう。

相続税や贈与税についての制度は毎年のように内容が変わっています。情報収集をしっかりと行い、現在の対策が有効かどうかを検証されている方は、税金の負担を抑えてより多くの資産をご家族に残されています。相続にかかわる情報は、毎年次のスケジュールで発表されていますのでおさえておきましょう。

 

■12月中旬~下旬 税制改正大綱の発表

税制改正大綱をもとに作成された税制改正法案は国会で審議・可決されると、4月から新しい税制が施行されます。この頃から本格的にセミナーなどが行われるようになりますので、しっかり情報収集をしていきましょう。

 

■3月下旬 公示地価の発表

公示地価は土地の売買取引の指標となる価格です。7月に発表される相続税路線価とあわせて把握しておきましょう。

 

■4月初旬 固定資産税路線価の発表

固定資産税などの算定に用いられる価格で、同時にはじまる縦覧期間では、市区町村役場で公開される縦覧帳簿で市区町村内のすべての土地・建物の固定資産税評価額を確認することができます。5月頃に届く固定資産税納付通知書(課税明細書)でも、ご自身の土地・建物の固定資産税評価額を確認することができます。今年は3年ごとの評価替えの年ですので、改めて確認しておきましょう。

 

■7月1日 相続税路線価の発表

相続税路線価はその年の相続税・贈与税を算定するうえで基準となる価格です。相続が発生するまで支払わなければいけない相続税がいくらか知らなかったという事態にはならないように、相続税の試算は必ずしておきたいところです。

 

■9月下旬 基準地標準価格の発表

公示地価と同じように売買取引の指標となる価格で、公示地価の不足地点を補完するものです。

マンション(一室の区分所有権等)の相続税評価額について(その3)

2024.11.1

今回は、マンション(一室の区分所有権等)の相続税評価額を、個別通達「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(令和5年9月28日)(本通達)に基づいて算出するのを、国税局のタックスアンサーNo.4667「居住用の区分所有財産の評価」の「計算事例」(事例マンション)を参考にして確認してみましょう。

 

  1. <マンション相続税評価額」>は、最初に「財産評価基本通達」(昭和39年4月25日)に従い、<区分所有権の価額(家屋)(①) +敷地利用権の価額(敷地)(②) の算式で算出し、そして令和6年1月1日以後は、上記「個別通達」本通達に従い、後記「2の計算式」により「区分所有補正率(③)、即ち(=「評価乖離率」(④)(理論上の評価額)×「補正率」)を乗じて評価し直します

     ※ ≪計算式 =((①)+(②))×(③)(=「評価乖離率」(④)×「補正率」)≫

    1. (1) (①)は<本通達適用前の区分所有権の価額自用家屋としての価額×「区分所有補正率」(③)> により算出する。
      • (ア) 「自用家屋としての価額」= 「固定資産税評価額」×1 (「評価基本通達89」)。
      • (イ) ≪事例マンション≫の「固定資産税評価額」は、「納税通知書」の「価格 4,000,000円」であるから、固定資産税評価額×1.0=4,000,000円となる。
    2. (2) (②)は<本通達適用前の敷地利用権の価額自用地としての価額×「区分所有補正率」(③)」> により算出する。
      • (ア) 「自用地としての価額」=「路線価」(1㎡当り)× 地積× 敷地権の割合(同通達7、11、13、14、89)
      • (イ) ≪事例マンション≫の「登記事項証明書」の「表題部」の「**マンション」に、地積3,500㎡、敷地権の割合1,050,000分の6,300とあり、「正面路線価」を500千円/㎡と仮定すると、下記の項目を計算し「評価額」を算出する。
        • a)<敷地全体の価額>=500千円/㎡×3,500㎡=1,750,000千円
        • b)「本通達適用前の敷地利用権の価額」 =「敷地全体の価額」×「敷地権割合」=1,750,000千円×(6,300/1,050,000)= 10,500千円
    3. (3) ≪事例マンション≫の「評価額」=4,000,000円10,500千円14,500千円となる。

 

  1. 2 次に区分所有補正率(③)」は、「評価乖離率」(④)、「評価水準」(⑤)により、下記の計算式で算出します(「本通達」1項(11)、タックスアンサーNo.4667)。
    1. (1) <評価乖離率(④)>は、マンションの<評価基本通達による相続税評価額市場価格>との乖離する割合を表しており、次の計算式で算出する。

      • (ア) <計算式>は「(④)」A+ B+ C+ D+ 3.220」であり、算出値に基づき「相続税評価額」を市場価格に近づけるように補正する。

      • (イ) 例えば、マンションの築年数が新しく、総階数が高く、所在階が高層階で敷地持分が小さいほど評価乖離率は高くなり、評価額が高くなる。
      • ◎≪事例マンション≫の「登記事項証明書」には下記の記載がある。
      •  ⅰ)一棟の建物の表示(構造)… 鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付11階建
      •  ⅱ)敷地権の目的である土地の表示… 地積 3,500
      •  ⅲ)専有部分の建物の表示(種類)… 居宅、床面積… 3階部分 60、原因及び登記の日付… 平成○年○月○日新築
      •  ⇒  築年数27年と仮定する
      •  ⅳ)敷地権の表示(敷地権の割合)… 1,050,000分の6,300(=6,300/1,050,000)
      •  ⅴ)敷地利用の面積権=地積3,500 ×(6,300/1,050,000)=21㎡となる
      • (ウ)  「A」等の値は下記「計算式」で算出し、≪事例≫では下記の通りとなる。
      •  a)「A」=「築年数」×△0.033  = 27年×△0.033=0.891
      •  b)「B」=「総階数指数」(総階数÷33)=11階÷33(=0.333)×0.239  =0.079
      •  c)「C」= 「専有部分の所在階」(×0.018)=3階×0.018= 0.054
      •  d)「D」=「敷地持分狭小度」(21㎡÷60㎡=0.350)× 1.1950.419
      •  ※  「敷地持分狭小度」(小数点4位切上)= 「敷地利用権の面積」÷「専有部分の面積」(床面積)(狭隘な敷地が評価を下げる)
      •  e)評価乖離率が零、負数の場合、区分所有権、敷地利用権の価額は評価しない
      • (エ) 上記の計算式に上記「(ウ)」の値を算入すると、評価乖離率」(④)は「0.8910.0790.0540.4193.220」=「2.043」と算出される。
    1. (2) <「評価水準」(⑤)>は、< ÷「評価乖離率」(④)>(「評価乖離率の逆数」)により算出されるので、≪事例≫は< 1 ÷ 2.043 =「0.4894762604」>となる。
      • (ア) (⑤)の算出値で下記「評価水準」の 「区分所有補正率」(③)を決定する。

        • a)【 評価水準<0.6 】 ⇒ 「区分所有補正率」(③)=「評価乖離率」× 0.6
        • ⇒ この場合は「相続税評価額」(財産評価基本通達)が「理論上の市場価格」より安いので評価額が引き上げることになる
        • b)【 0.6≦評価水準≦1】 ⇒「区分所有補正率」(③補正なし(従来の評価額)
        • ⇒ この場合は「財産評価基本通達」により相続税評価額を評価する
        • c)【 1 <評価水準 】  ⇒ 「区分所有補正率」「評価額×評価乖離率
        • ⇒ この場合、「財産評価基本通達」による相続税評価額は「市場価格」より高いので、評価乖離率を乗じ、その結果、市場価格に引き下げられる
        • d)【評価水準≦0(0以下)】 ⇒ マンションは「0評価」(上記(2)e)参照
      • (イ) <区分所有者が一棟の区分所有建物の全専有部分を単独所有している場合>は「区分所有補正率」は1を下限とする
    1. (3) ≪事例マンション≫の場合は上記の通り<評価水準)(0.4894762604」)>で、上記「区分表」の【評価水準<0.6】に該当し、補正率」は「0.6」となる。

 

  1. 3 上記から≪事例マンション≫の「相続税評価額」は、「評価額」((①)(4,000,000円)+(②)(10,500千円))を区分所有補正率」(③)」(「評価乖離率(④)」×補正率」)により補正して算出する。

    1. (1) 先ず「評価額14,500,000円((①)+(②))」に「評価乖離率(④)2.043 」を乗じ、<「理論上の市場価格」と言われる価額= 29,623,500>を算出する。

    2. (2) 次いで「理論上の市場価格」に補正率を乗じ、<29,623,500円」×補正率 0.6>=「17,774,100円」(「(①)4,903,200円」と「(②)12,870,900円」)が算出される。

    3. (3) すなわち、≪区分所有補正率()≫ =<2.043× 0.61.2258>であるから、<「評価額14,500千円」×1.2258>= 「17,774,100円」となる。

 

  1. 4 以上の通り、「個別通達」によるマンションの「相続税評価額」の算出は複雑ですが、「計算事例」で判り易くしたので計算の仕組みを覚えておくと役に立つと思います。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

遺言書の必要度をチェックしてみましょう

2024.10.22

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

ご自身が遺言書を作成していないと大変かどうか、皆さんは調べてみたことはありますか?これから確認される方は、次のチェックリストを活用してみて下さい。当てはまる項目がある場合、遺言書がないと相続時にトラブルが起きてしまうかもしれません。もし3つ以上の項目に当てはまる場合には、遺言書がないと相続時に大変な事態となる可能性大です。早めに遺言書の作成をしておきましょう。

 

「タワーマンション節税」見直しの影響は?

2024.10.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

2024年1月1日以降の相続・贈与で取得した居住用の区分所有財産(分譲マンション等)の評価方法について、見直しがはじまりました。大きなポイントは、居住用の区分所有財産の相続税評価額が市場価格の60%に達しない場合は、60%まで評価額を引き上げるという点です。これはタワーマンションといわれる高層マンション購入による節税を規制する内容ともいえます。評価方法が見直された背景とともに、今後の対応を確認しておきましょう。

 

■タワーマンション節税の仕組みと見直しの背景

まず前提として、不動産の相続税評価額は市場価格の80%〜60%の価額に落ち着きます。ところがタワーマンションの相続税評価額は、特に都市部の高層階の場合、市場価格の60%どころか40%にも満たないケースが多くなりました。相続税評価額を市場価格から大幅に圧縮できるということは、相続税の負担を大幅に減らすことができるということです。とても高い節税効果が得られることから「タワマン節税」は広く知られ、多くの方が活用するようになりました。

その一方で、市場価格との差が80%〜60%程度であれば容認していた国税庁も、この「タワマン節税」については問題視していました。あまりにも大きい市場価格と評価額の乖離は見過ごせないとして、今回評価方法が見直されることになりました。

 

■新しいタワーマンションの評価方法

見直し対象は居住用の区分所有財産に限定で、下記のような物件は見直しの対象外です。

・居住用ではない事業用テナント物件等

・戸建住宅や一棟全体を所有する共同住宅(区分所有の場合は除く)

・2階建以下の建物

・区分所有されているのが3室以下で所有者や親族が居住の場合(二世帯住宅等)

 

見直された評価額の計算式は計算過程が理解しづらいのですが、簡単にまとめると次のような内容です。まず従来の評価額と市場価格がどのくらい乖離しているかを示す「評価乖離率」(国税庁が新たに作成した指標)を求めます。これを従来の評価額にかけると市場価格の理論値が算出されます。この市場価格の理論値の100%~60%の範囲内におさまるように調整され、評価額が算出されることになります。

今回の見直しにより評価額が上がりやすいのは、①築年数が浅い、②高層マンション、③高層階に所在、④建物の入居者が多い分譲マンション等の場合です。実際に評価額を算出する際は、従来の評価額に「区分所有補正率」をかけて求めます。区分所有補正率は国税庁のホームページに掲載の計算ツール(「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」)で簡単に計算できますので、試しに入力してみるのも良いでしょう。

不動産の評価額圧縮は、市場価格の60%までという認識が必要といえます。タワーマンションも評価方法は見直されましたが、節税効果は変わらず健在です。この機会に相続税の試算を改めて行うのも良いでしょう。

「相続登記の義務化」がはじまりました

2024.10.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

不動産を相続したときの登記手続き(相続登記)の義務化が、2024年4月1日からはじまりました。これまで相続登記は任意で、期限や罰則は設けられていませんでした。義務化されることになった背景には、「所有者不明土地」の問題があります。所有者不明土地が発生する大きな原因は、①誰のものか分からない(相続登記がされていない)、②所有者と連絡が取れない(住所変更登記がされていない)と考えられています。この「所有者不明土地」になるのを防ぐ目的で、相続登記が義務化されました。ポイントを確認しておきましょう。

 

■不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料の対象

2024年4月1日より前に発生した相続も、義務化の対象です。正当な理由がないのに3年以内に相続登記をしなければ、過料を課される可能性があります。

3年以内に相続登記ができない場合のために、「相続人申告登記」という制度も新設されました。期限内(3年以内)に法務局に申し出て(必要書類を添付)、法定相続人として住所・氏名が登記された人には過料を課さないとするものです。申出は単独でできるうえ手続きも難しくなく、費用もあまりかからないので、使いやすい制度といえます。

いくつか注意点がありますので確認しておきましょう。相続人申告登記は、あくまで一時的に過料を免れることができる制度です。相続する人が決まったら3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料の対象です。

また、相続人申告登記は新たに設けられたばかりですので、相続人申告登記をした後の登記簿を見た他の相続人に「勝手に所有権移転の登記をされた」などと誤解される可能性もあります。思わぬ争いの種とならないようにするためには、相続人申告登記を行う場合は相続人間で共有しておくことも必要でしょう。

相続人申告登記をした不動産を、最終的に自分が相続しないこともありえます。相続人申告登記は自分の氏名・住所が登記されますので、利用するかは相続登記の期限ぎりぎりまで待つことも検討しましょう。

 

■海外居住者を所有者として登記するときは、国内連絡先を登記

所有者が海外居住の場合には、国内の連絡先となる者の氏名・住所等の登記が必要となります。連絡先は、第三者や法人とすることもできます。

登記についての新しい制度は、今後も段階的にはじまる予定です。所有する不動産をリスト化した証明書を法務局に請求できる「所有不動産記録証明制度」(2026年2月2日施行)、住所等の変更から2年以内にその変更の登記申請をしないと、5万円以下の過料の対象とする住所等の変更登記の義務化(2026年4月1日施行)、登記官が住基ネット等からの死亡情報に基づき、登記名義人が死亡している場合は符号で表示する制度(2026年4月1日施行)等にも注目していきましょう。

「タワマン節税」の「最高裁判決」の意味と国税庁の個別通達「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(令和5年9月28日)の今後の影響ついて見てみましょう(その2)

2024.10.1

 

  1. 1 「最高裁判決(令和4年4月19日)」は、課税価格6億円超の相続案件において、「タワマン節税」により「財産評価基本通達」を紋切り型に適用し相続税を「0円」と豪腕を振るった申告者に対し、実質的に租税負担の公平に反する事情があるとした国税当局の更生処分に合理的理由を認め「課税平等原則」に反しないと痛撃を食らわせ、その結果「タワマン節税策」は「失敗し墜落し」真に命懸けとなってしまいました。
    1. (1) タワマン2戸を約14億円で購入し、その相続税評価額3億3,300万円とし、借入金残9億6,300万円を控除して債務超過約6億3,000万円とし、その他の相続財産と相殺し2,826万1,000円となり、基礎控除1億円を下回るので相続税0円とした申告は、評価額と市場価格との乖離を利用した超絶技巧の「ウルトラC」でした。
    2. (2) しかし、最高裁は、その「タワマン節税」策がマンション購入時期、借入金の節税の意図(銀行の稟議書)、申告直前の1室売却等から近い将来発生する相続で税額減免を期待して敢行したと認定し、それに経済合理性が認められないとしました。
    3. (3) 税務専門家には「基本通達通りに節税対策をしただけなのに何故否認されるのか」との戸惑いがあったとも聞きますが、かかる節税策には経済的合理性が認められず、「租税負担の公平」に反すると指摘した最高裁判決を玩味すべきでしょう。
  1. 2 この判決を受け、国税庁はマンションの「相続税評価額」に「時価(市場売買価格)」との大きな乖離が生じた場合に、相続税評価を個別事案毎に判断している現状を回避し、納税者の予見可能性を確保するため、個別通達「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(令和5年9月28日)により、新しくその評価方法を定めて「令和6年1月1日以後に相続、遺贈、贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(分譲マンションの価額」の評価に適用するとしました(タックスアンサーNo.4667「居住用の区分所有財産の評価」(インターネットで参照)。

    1. (1) <マンションの時価評価>は「宅地部分」を「財産評価基本通達」(昭和39年4月25日)で全体評価した後、各戸の所有割合、敷地権の割合で按分し、「建物部分」は、全体の固定資産税評価額を各戸に延べ床面積の比率で按分して算出します。
      • (ア) タワマンの上層階は、高額の資産価値を有するその時価が「路線価方式」、「固定資産税評価額」による「課税価格」まで大きく引き下げられ、更に借入金残高の控除(控除項目)で相続税額を大幅に圧縮することができていました。
      • (イ) しかし、この「タワマン節税」による「課税価格」の引下げを抑え、「相続税評価」を市場価値の60%に引き上げるために「課税価格」に「区分所有補正率」を乗じて算出することとしました。「区分所有補正率」は「評価乖離率」と「評価水準」から一定の計算式で算出されますが、その詳細は次回に説明します。
      •  a)これまでマンションの相続税評価額が、市場価格との平均評価乖離率が2.34倍の42.7%で、市場価格1億円のものが4,270万円と評価されたのを令和6年以後は平均評価乖離率を1.67倍の60%まで引上げることにしました。
      •  b)「相続税評価額」を実勢価格の60%の水準にすると、その乖離率は「評価水準60%」の逆数の1.67倍であり、例えば乖離率がそれ以上の2倍であるとすれば、評価水準がその逆数の50%で60%を下回るので、「相続税評価額」がその60%まで引き上げられることになります。
    2. (2) 見直しの対象となる「居住用の区分所有財産」とは、「居住の用に供する専有部分」である「マンション一室」であり、その相続税評価額は上記の通り、その「区分所有権(家屋部分)」と「敷地利用権(土地部分)」の各評価に「区分所有補正率」を乗じた価額に引き上げられ、乖離率によっては引き下げられる場合もあります。
      • (ア) 「居住の用に供する専有部分」とは、「構造上主として居住の用途に供する」、登記簿上「居宅」と表示されるマンションで、相続時点で事務所として使用する場合でも、登記が「居宅」であれば「個別通達」の適用の対象となりますが、下記のものは適用外となります。
      •  a)区分所有登記のない一棟所有の賃貸マンション、事業用の区分所有オフィス(事業用のテナント物件)などで、流通性・市場性が低く適切な評価乖離率の算定が困難なもの。
      •  b)居住用の区分所有マンションでも、地階を除く階数が2以下の低層の集合住宅、専有部分一室の数が3以下で、その全てを当該区分所有者又はその親族の居住用に供するもの(いわゆる二世帯住宅等)など。
      • (イ) 借地権付又は定期借地権付の分譲マンションの敷地の用に供される「貸宅地(底地)」の評価も、通常の宅地の底地として評価し、本通達は適用されません。
  1. 3 マンションの評価方法の改正により「理論上の市場価格の60%」の評価となり、「タワマン節税」の手法による大幅な節税効果を望めなくなったが、それでも評価額40%分の引き下げと債務控除(金利負担による問題は残る)の効果が残るので、ケースによっては 「タワマン節税」の活用の余地がないとは言い切れず、今後「個別通達」により「タワマン節税」が、どのように封じられるのかを見極める必要があると思われます。
    1. (1) 上記改正は、タワマンだけでなく区分所有登記をしたマンション一室の全てが見直しの対象となったので、通常のマンション所有者も改めて相続税を試算してみる必要がありそうです。
      • (ア) 新たな購入や売却にあたっては、「個別通達」に基づく評価額によって相続税を計算するなど慎重な検討が必要ですので、その時は専門家に相談して下さい。
      • (イ) マンション購入後相続までに年月が経過すると節税効果が薄れるし、相続開始直後に売却すると時価との乖離が露わになるので注意を要し、また5年以内の短期譲渡では譲渡益に高い所得税が課されることも念頭に置く必要があります。
      • (ウ) なお、マンションが貸家と貸家建付地である場合のそれらの評価、また小規模宅地等の特例(被相続人と同居)の適用は、上記で計算した価額を基に行います。
    1. (2) 今後は、相続の場合に生命保険の保険金受取人が死亡保険金のうち「500万円×法定相続人数」まで非課税となる措置や、贈与税の「暦年贈与」「相続時精算課税」による基礎控除額110万円の適用、「教育資金贈与の非課税措置」、「都度贈与」(令和6年のレインボーニュース(5回連載))など、種々の手法を組み合わせた相続対策を検討されると宜しいと思われます。
  1. 4 次回に、マンションの「理論上の市場価格の60%」等の評価計算を見てみましょう。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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