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最新・相続ジャーナル

遺言書のきほん(その7)

2024.4.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

遺言書を完成させるには、段取りがとても大切です。具体的な流れを3つのステップで確認しておきましょう。

 

ステップ1 遺言内容の方針を立てる

遺言書作成の目的・趣旨は何かをはっきりさせる

財産を誰にどのように分配したいのかを考える

 

①相続財産の調査:財産目録(財産の一覧)を作成

  • ・不動産・・・名寄帳や固定資産税課税通知書を確認
  • ・預貯金・・・通帳の記帳をし、残高を把握

 

②推定相続人の確認:推定相続人はだれか?

  • ・戸籍謄本を取得(場合によっては出生まで)
  • ・相続関係図を作成

 

➂相続財産を金銭に評価すると、いくら位になるかを算出

  •  遺留分の問題が生じるか、財産を評価する
  •  ・不動産…実際の流通価格を把握
  •  相続税がかかるか、財産を評価する
  •  ・特例の適用を考える必要があるか確認

遺言書のきほん(その6)

2024.4.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

遺言書には3つの方式があります。それぞれの概要と長所、短所を確認しておきましょう。

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

➂秘密証書遺言

…遺言書を自ら作成して封印し、封印した遺言書を公証人に提出、その存在を公に記録してもらう方法による遺言

 

遺言書の作成は公正証書遺言が基本と考えましょう

 

公正証書遺言と自筆証書遺言の比較1

公正証書遺言 自筆証書遺言
概要 公証役場(出張作成も可能)で、2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言の内容を公証人に口述し、公証人が遺言書を作成 遺言の全文と日付、氏名を全て自書し、押印する

■自筆証書遺言の方式緩和■

財産目録については自書を要さず、パソコン等で作成して遺言に添付できる

下記の方も遺言をすることができる

・病床の方

・文字を書けない方等

相続発生後、家庭裁判所の検認が必要

※検認を受けてからでないと各種相続手続きに進めません

■自筆証書遺言の保管制度■

保管された自筆証書遺言は検認不要

 

公正証書遺言と自筆証書遺言の比較2

公正証書遺言 自筆証書遺言
長所 法的根拠能力が高く、手続き上、無効になるおそれがほとんどない 自分一人で作れる

誰にも知られずに作成できる

偽造、変造、紛失の危険性がない 作成費用がかからない
いつでも自由に書き直すことができる
短所 内容が他人(証人等)に知られる 方式が厳格であり、方式違背があれば遺言が無効になるおそれがある
全文を自筆する必要があり、かなりの労力がいる
作成費用がかかる(公証人の報酬) 偽造、変造、隠匿、紛失のおそれがある
専門家に相談なく作成できるために、内容が不明確になりがち(後日トラブルが起きやすい)

贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その2)

2024.4.1

前回は「令和5年の税制改正と生前贈与による節税対策の概略・概要」について話しましたが、今回はより具体的に見てみましょう。

 

【第2】<暦年贈与>における「税制改正法」による加算対象期間の延長等について

  1. 1 「暦年贈与」の「贈与税」は、1年間に贈与による取得財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を控除した残額に、「一般税率」又は「特例税率」の累進税率を適用して算出します。
    1. (1) 「暦年贈与」は、受贈者ごとに1年間の贈与の総額が110万円の「基礎控除」(非課税枠)内では贈与税はかからず、超過した部分に対してのみ課税されます。

    2. (2) 贈与された財産は、原則、将来の相続発生時に相続財産に含まれないので相続税の節税となり、特例贈与財産(直系尊属から直系卑属に贈与された場合)に該当すると、贈与税の負担(特例税率)が少なくて済みます。

    3. (3) しかし、相続直前の贈与税や相続税の負担逃れを防止するため、相続開始前3年以内の贈与財産は、贈与がなかったものとして相続財産に含める「持ち戻し」がされるので、この加算される生前贈与分については基礎控除が失われ相続税の節税効果はなくなり、ただ既に支払った贈与税分は相続時に控除されるだけになります。
  2. 2 しかし、令和5年の改正法で相続又は遺贈による財産の取得者が、その被相続人から相続開始前7年以内に暦年贈与による取得財産がある場合は、その取得財産の贈与時の価額を相続財産に加算することになりました。但し、延長された4年間の贈与による取得財産の価額については、総額100万円まで加算されません

 

  1. 3 改正法適用(令和6年1月1日以降)の前後での贈与による取得財産に係る相続税への<加算対象期間>は、次の通りとなります。

    1. (1) 贈与の時期が<~令和5年12月31日まで>(改正前)の場合は、加算対象期間は相続開始前3年間です。
    2. (2) 贈与の時期が<令和6年1月1日以降>(改正後)の場合は

      • (ア) <贈与者の相続開始日が令和6年1月1日~同8年12月31日の場合>の加算対象期間は、相続開始前3年間となり
      • (イ) <贈与者の相続開始日が令和9年1月1日~同12年12月31日の場合>の加算対象期間は、同6年1月1日~相続開始日まで<3年+経過年数>となり
      • (ウ) <贈与者の相続開始日が令和13年1月1日以降の場合>の加算対象期間は、相続開始前7年間となります。

 

【第3】<税制改正による「相続時精算課税」>について

  1. 1 「相続時精算課税」は原則として、① 「贈与者」が贈与の年の1月1日において60歳以上であり、② 「受贈者」が同日において18歳以上で、かつ贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人またはである場合に選択することができます。
    1. (1) 但し、一旦選択すると同じ贈与者について暦年課税に戻れなくなり、また同制度で住宅を取得し自己所有となると、小規模住宅等の特例を利用できなくなります。

    2. (2) そして、贈与者の相続時には特別控除2,500万円を適用分も含めた贈与財産が相続財産に持戻され「相続時精算課税」(相続税額の計算)されることになります。
  2. 2 改正法による相続時精算課税に係る基礎控除の創設
    1. (1) 相続時精算課税を選択した受贈者(「相続時精算課税適用者」と言う)が、令和6年1月1日以降に相続時精算課税の選択に係る贈与者(「特定贈与者」と言う)から贈与取得した財産に係るその年分の贈与税については、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除されることになります。
      • (ア) 同一年中に<2人以上の特定贈与者から贈与財産を取得した場合の基礎控除額110万円>は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分されます。
      • (イ) 例えば、令和6年中に特定贈与者から取得した贈与財産の価額の合計額が基礎控除額(110万円)以下の場合は、同年分の贈与税の申告の必要はありません
      •  a)従来は、金額の多寡にかかわらず贈与税の申告が必要でした
      •  b)相続時精算課税を選択した場合は、その特定贈与者からの贈与については暦年課税の基礎控除の適用はできません。
      • (ウ) 累積2500万円までの特別控除額に変更はなく、特別控除額を超える贈与を行った場合には一律20%の税率により贈与税が課されます。
    1. (2) 特定贈与者から令和6年1月1日以降に取得した贈与財産の価額のうち、特定贈与者の相続税に加算される課税価格は、基礎控除額を控除した後の残額となります。
    2. (3) 特定贈与者の総資産が相続税の基礎控除内に納まる場合は、例えばその子に大きなお金が必要となる時に後顧の憂いなく「相続時精算課税制度」を利用できます。
  1. 3 改正法は、相続時精算課税適用者が土地又は建物について、贈与の日から特定贈与者の死亡で相続税申告書の提出期限までの間に,「令和6年1月1日以降の災害」で「一定の被害」を受けた場合は,その相続税の課税価格へ加算する価額は,その贈与時の価額から,被災価額を控除した残額とすることができるとしました。
  1. 4 「相続時精算課税」を選択する場合は、原則として贈与税の申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出します。
    1. (1) 贈与税の申告書を提出する必要がある場合は,申告書に添付して提出します。
    2. (2) その必要がない場合は,同届出書だけの提出となります。
  2. 5 以上を纏めると,次のようになります。
    1. (1) <贈与税額>は、受贈者特定贈与者ごとに1年間に取得した贈与財産の価額の合計額から、基礎控除額(110万円)を控除し、特別控除(最高2,500万円)の適用がある場合はその金額も控除した残額に20%の税率を乗じて算出します。
    2. (2) <相続税>については、相続時精算課税適用者は特定贈与者から取得した贈与財産の贈与時の価額(災害で一定の被害を受けた場合で土地又は建物を贈与日から災害発生日まで継続所有の場合は、再計算後の価額)から基礎控除額を控除した残額を、その特定贈与者の相続財産に加算します。
  3. 6 次回は、「贈与税の計算」について説明します。

 

 

 

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

遺言書のきほん(その5)

2024.3.21

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は遺言書が有効、必要なケースをお話しします。

 

家族間に事情がある場合

①親子間・兄弟間の仲が悪い

②行方不明の家族がいる

➂遺産分割協議に法的に加わることができない家族がいる 例)認知症や障害がある者、未成年者など

④再婚しており、現在および前の配偶者との間に子供がある

⑤夫婦間に子供がいない

 

不動産等、相続財産に事情がある場合

⑥自宅がほぼ全財産を占める

⑦自宅が子供の一人と共有になっている

⑧土地が、子供名義の建物の敷地になっている

⑨一人へ資産を集中して相続させたい(事業を営んでいるなど)

 

物理的に遺産分割協議・相続手続きが難しい場合

⑩相続人に高齢者がいる

⑪相続人に海外居住者がいる

⑫家族がみな遠方に住んでいる

⑬子供が忙しかったり病気がちで手続きが進まない

 

相続人の将来の生活設計を守る必要がある場合

⑭相続財産が特定の家族の生活の支えになっている

 

節税・納税対策上の必要性がある場合

⑮特定の相続人に相続させないと多額の相続税がかかる

 

相続人以外の人に財産を渡したい場合

⑯配偶者や子供がおらず、推定相続人と疎遠になっている

⑰相続人が誰もいない場合

⑱孫や、子の配偶者、内縁の妻などに遺贈する場合

遺言書のきほん(その4)

2024.3.11

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

ここからは、遺言書でできることは何かをみていきましょう。

法定相続分と違う分け方を指定できる

遺言書は、次のとおり相続分を指定する

妻 浦和花子(5分の3) 法廷相続分は2分の1

長男 浦和太郎(5分の1) 法廷相続分は4分の1

長女 浦和恵子(5分の1) 法廷相続分は4分の1

 

相続人でない人に財産を渡せる(遺贈)

相続税の2割加算に注意しましょう

※その他の相続人でない人に財産を渡す方法

・生前に贈与(贈与税に注意)

・相続後に贈与(贈与税に注意)

・生命保険金(相続税の非課税枠対象外)

 

相続の権利を失わせる相続人の廃除

・被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な屈辱を加えた相続人

・その他の著しい非行があった相続人

 

自分の死後の、子の認知

未成年後見人および後見監督人の指定

祭祀承継者の指定

生命保険の受取人の変更

 

戸籍集めが楽になる新制度がはじまりました

2024.3.1

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は新しくはじまった制度のお話です。戸籍集めの手間と時間が大幅に軽減される制度が、本日3月1日からはじまりました。さっそく内容を確認しておきましょう。

 

■相続での戸籍集めは意外と大変

相続手続きでは相続人が誰なのかを確認するため、「亡くなられた方の出生から死亡までの一連の戸籍」を集める必要があります。この戸籍は、預貯金の払戻や名義変更、株式などの名義変更、不動産の名義書き換え、相続税申告といったほとんどの相続手続きで必要です。

この「亡くなられた方の出生から死亡までの一連の戸籍」ですが、本籍地のある市区町村の役所窓口へ請求しても、その役所ではすべて揃わないことがよくあります。ご存知の方も多いかもしれませんが、過去に転籍(本籍地を変更)していたりすると、本籍のあった全国各地の市区町村それぞれへ戸籍を請求する必要があるのです。遠方の市区町村の戸籍は、郵便局の定額小為替を同封して郵送請求することもできますが、複数先へ郵送請求する場合には手間と時間がかかります。相続人が兄弟姉妹や甥姪の場合にはさらに大変で、亡くなられた方の両親の戸籍も出生までさかのぼり請求する必要があります。

 

■全国各地の戸籍を一括請求できるように

このように本籍地のある市区町村ごとに戸籍を請求しなければならず戸籍集めが面倒なのは、戸籍が市区町村ごとの個別システムで管理されていて、相互に連携がとれないことが原因でした。相続の際に限らず戸籍集めがあまりに大変な作業でもあったことから、新たな戸籍情報連携システムが導入され、ついに運用が開始されました。

この新制度では出生から死亡までの戸籍の本籍地が全国各地にあっても、最寄りの市区町村の役所窓口で一括請求できます。とても便利な制度ですが、注意したい点がいくつかありますので確認しておきましょう。

 

■新制度を使えないケースに注意

新制度で全国各地の戸籍を一括請求できるのは本人のみとされています。委任状で代理人が請求することや、司法書士や行政書士といった専門職が行う職務上請求は認められていません。また、本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母等)、直系卑属(子、孫等)の戸籍は全国各地の市区町村へ一括請求できますが、兄弟姉妹やおじ・おばの戸籍は対象外です。郵送での請求もできませんので、必ず市区町村の役所窓口に出向く必要があります。コンピューター化されていない戸籍も一部あるようです。

 

内容をまとめると、新制度では本人が最寄りの市区町村の役所窓口に出向いて、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属の戸籍であれば、全国各地の戸籍を一括請求できます。代理人等が請求する場合や、兄弟姉妹等の戸籍を請求する場合、郵送請求をする場合には、従来通りの方法で行うことになります。

遺言書のきほん(その3)

2024.2.22

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

遺言書の作成は、円満相続への最短ルートと(その1)でお話ししましたが、「遺留分」という最低限もらえる割合があり、この遺留分を巡ってトラブルになることがあります。

 

遺留分で揉めやすいのはなぜ?

留分をいくらにするのかで揉めやすい

不動産の価格(一物四価)は特に問題になりやすい

請求する側:高く評価したい 請求される側:安く評価したい

 

時点の評価で一番高い額を把握しておく

遺留分で揉めてしまう可能性があるか確認をしておきましょう

※遺留分を侵害する内容であっても、遺言書は有効です

 

遺留分についての法改正

分の請求があったとき(改正前:遺留分減殺請求)

不動産や株式を含む、すべての財産が共有関係となる →売却ができない(共有者間で協力できない場合)等の問題

分の請求があったとき(改正後:遺留分侵害額請求)

遺留分侵害額請求権は金銭債権

共有関係の問題を回避し、金銭で精算できるように改正

※注意点※金銭ではなく現物精算(不動産等)も可能ですが、その場合は譲渡所得税の課税対象になります

 

遺言書には付言事項を

事項とは

法的な拘束力はありませんが、遺言者の想い・遺言の内容を決めた経緯を書き記すことができます

【付言事項の例】

遺言書のきほん(その2)

2024.2.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は「法廷相続分」と「遺留分」についてお話しします。

まずは、相続人は誰なのか確認してみましょう。

 

 

法廷相続分とは?

遺言書がない場合に、各法定相続人が譲り受けることのできる遺産の割合

遺産の分け方は、被相続人の意思「遺言書」が優先されますが、遺言書がない場合には、民法によって法定相続人が譲り受けることができる遺産の割合が決まっています

法定相続人と法廷相続分
第1順位 子ども  2分の1 配偶者  2分の1
第2順位 親    3分の1 配偶者  3分の2
第3順位 兄弟姉妹 4分の1 配偶者  4分の3

※同順位の者が複数いる場合は、さらに人数で頭割りします

 

遺留分とは?

法定相続人が有する、遺言によっても侵し得ない相続財産に対する最低限度の取り分

※兄弟姉妹には遺留分はありません

遺留分侵害額請求権(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅうけん)

遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合に、その侵害額に相当する金銭を請求する権利

自分の遺留分が侵害されていると知ってから1年以内に請求

〈遺留分の割合〉

・原則として、法廷相続分の2分の1

・父母だけが相続人の場合に限り、法廷相続分の3分の1

・兄弟姉妹には遺留分なし

 

相続人ごとの法廷相続分と遺留分

 

事例でわかる遺言書の効果

【事例】子供のいない夫婦の場合

遺言書のきほん(その1)

2024.2.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回から、遺言書のきほんについてお話しします。

遺言書を作っておくと相続トラブルをふせぐことができます。

 

公正証書による遺言書作成件数

 

自筆証書遺言の検認の件数

 

遺産の分け方 大原則

 

遺産分割協議の最大の問題点

遺言書は、円満相続への最短ルート

遺言書にも「遺留分」の問題はあります(後述)

遺産分割協議は、話し合いがまとまるかが最大の問題

・遺産分割協議で相続人同士が快く譲り合い協力しあえる?

・相続人間でバランスよく財産を分けられる?

・財産を渡す側の考え・想いは、もらう側に明確に伝わっている?

 

遺言書がある時とない時、どう違う?

遺言書がある場合には、遺言書が優先

例えば、妻が2分の1、子が2分の1、といった「法廷相続分」は遺言書により相続分の指定がない場面において問題となります

「遺留分」の割合 < 「法廷相続分」の割合

「遺留分」の割合は、「法廷相続分」の割合より少ない

原則的に、「遺留分」は「法廷相続分」の半分

遺言者の想いに沿った遺産の分け方を実現しやすいといえます

贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その1)

2024.2.1

これまで相続税の「軽減対策」として利用されてきた「生前贈与」のほとんどは「暦年贈与」でしたが、令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)により「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」に大きな変更があり、「相続時精算課税制度」も節税対策として選択されることも想定され、それらの適用に当たってどちらが効果的かを検討する必要があります。節税対策について数回にわたって概観してみましょう。

 

【第1】令和5年度税制改正の概略と生前贈与における節税対策の概要について

  1. 1 相続税は、相続財産につき<その「正味の相続財産」-「基礎控除額」(3,000万円+600万円×法定相続人の数)> = 「課税価格の合計額」)に課税されるので、<「課税価格の合計額」を減少させるための節税対策>として<生前贈与>が活用されています。
  2. 2 そして<令和5年税制改正>のポイントは、◎「暦年贈与制度」が相続財産の持戻し対象を相続開始日から遡って7年以内の贈与まで期間延長するとし、◎「相続時精算課税制度」が「暦年贈与」と同様の110万円の非課税枠を設け、相続時精算課税選択届出書を提出すれば、初回年から無期限で年間110万円以下の贈与財産に限り、贈与税の申告を要せず、相続財産への持戻しの対象としないとしたので生前贈与は複雑になりました。

  3. 3 「暦年贈与」では、令和6年1月1日以降に行われる贈与から相続税への持ち戻し期間を7年に延長したので、令和9年1月1日以降に発生する相続から相続税節税効果が少なくなる影響を受けるようになると思われます。

    1. (1) 「暦年贈与」は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に110万円の非課税枠(基礎控除)があり、これまで「暦年贈与」の相続税への持ち戻し年数を過去3年間としていました。

    2. (2) すなわち、相続での財産承継人への暦年贈与のうち、相続開始日から遡って3年以内の贈与(110万円以下も含む)を計算対象とし(法19条(相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額))、相続税を軽減するための相続開始直前の「駆け込み贈与」を防止の措置としていました。

  4. 4 その一方で「相続時精算課税制度」(相続法21条の9以下)については、「2,500万円の非課税枠」とは別に、110万円の基礎控除(非課税枠)を新たに設け、しかも基礎控除内で贈与した財産の額は相続税の計算で持ち戻さず課税の対象とはしないので「相続時精算課税制度」の利用価値が増しました。

    1. (1) これまでは贈与額が合計2,500万円に達するまでは贈与税がかからず、2,500万円の枠は1年であるいは何年かで使っても良く、2,500万円を超えると超過額に一律20%の贈与税が掛かるとし、またこの贈与には110万円以下でもその度毎に申告を必要とされ、しかもこれらの贈与額は贈与者の相続開始時にすべて持ち戻されて、相続税の計算対象とされ「相続時に精算」されていました。
    2. (2) そして「相続時精算課税」の届出書を一旦提出するとその撤回ができないので(相法21の9-6)、それ以降の贈与で「暦年贈与」を選択できないため、非課税枠のある「暦年贈与」と比べ相続税の節税効果も低く、例えば値上がりが予想される収益物件を早期に贈与して、相続財産の評価対策を取る場合など以外には然程メリットがないので、その利用は限定的でした。

  5. 5 そこで令和6年以降は、節税対策として「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」(相続法21条の9)のどちらが有用であるかを検討する必要があります。

    1. (1) <毎年110万円以下の非課税枠内での贈与を続けていた場合>は、相続が開始すると「暦年贈与」は、7年分遡って770万円(但し新設の100万円控除の適用がある場合は670万円)が持ち戻されて相続税計算の対象となるのに対し「相続時精算課税制度」では非課税となった110万円以下の贈与財産の持戻しは一切なく、相続税の計算対象とならないので安定した節税効果が望めます。
    2. (2) しかし<贈与税の非課税枠を超えて行う贈与の場合>は、贈与額と贈与年数で異なるので、十分検討をして対応する必要があります。上記の通り「相続時精算課税制度」は一旦適用申請をすると「暦年贈与」に戻れないので、申請前に「生前贈与」の目的や方法等を基にして専門家に相談して十分検討して下さい。

    3. (3) 「暦年贈与」で注意すべきことは、<「暦年贈与」の持戻しの対象者>は相続の対象者だけで、相続人でない人には関係がありません
      • (ア) <贈与者の直系卑属である推定相続人以外の「孫」への贈与の場合>孫は法定相続人でないので、相続開始前7年以内の贈与であっても相続税の対象とならないということです。
      • (イ) 従って「孫への暦年贈与」は、相続開始前の「駆け込み贈与」だとしても非課税となり「暦年贈与」に有用性はあると言えます。
    4. (4) 一方、<法定相続人でない孫が「相続時精算課税制度」を利用した場合>は注意を要します。
      • (ア) 贈与者から孫が贈与を受け「相続時精算課税制度」を選択すると、贈与者の死亡時に贈与者の子が存命し、代襲相続が発生しない場合でも孫が贈与を受けた金額が年間110万円を超えた分は、相続税の計算対象となり(相続法21条の9)、相続人でない孫は2割増しで相続税を納付することなります。
      • (イ) 特に相続税が高額と見込まれる場合には、相続開始前に「相続時精算課税制度」を適用するよりも、早期に暦年贈与を計画的に実行することによって、贈与税を負担する方が結果的に得をする場合も想定されます。しかし、若年者への多額の贈与には思わぬ問題が起きることもあるので、慎重な判断が必要でしょう。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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