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贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その1)

2024.2.1

これまで相続税の「軽減対策」として利用されてきた「生前贈与」のほとんどは「暦年贈与」でしたが、令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)により「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」に大きな変更があり、「相続時精算課税制度」も節税対策として選択されることも想定され、それらの適用に当たってどちらが効果的かを検討する必要があります。節税対策について数回にわたって概観してみましょう。

 

【第1】令和5年度税制改正の概略と生前贈与における節税対策の概要について

  1. 1 相続税は、相続財産につき<その「正味の相続財産」-「基礎控除額」(3,000万円+600万円×法定相続人の数)> = 「課税価格の合計額」)に課税されるので、<「課税価格の合計額」を減少させるための節税対策>として<生前贈与>が活用されています。
  2. 2 そして<令和5年税制改正>のポイントは、◎「暦年贈与制度」が相続財産の持戻し対象を相続開始日から遡って7年以内の贈与まで期間延長するとし、◎「相続時精算課税制度」が「暦年贈与」と同様の110万円の非課税枠を設け、相続時精算課税選択届出書を提出すれば、初回年から無期限で年間110万円以下の贈与財産に限り、贈与税の申告を要せず、相続財産への持戻しの対象としないとしたので生前贈与は複雑になりました。

  3. 3 「暦年贈与」では、令和6年1月1日以降に行われる贈与から相続税への持ち戻し期間を7年に延長したので、令和9年1月1日以降に発生する相続から相続税節税効果が少なくなる影響を受けるようになると思われます。

    1. (1) 「暦年贈与」は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に110万円の非課税枠(基礎控除)があり、これまで「暦年贈与」の相続税への持ち戻し年数を過去3年間としていました。

    2. (2) すなわち、相続での財産承継人への暦年贈与のうち、相続開始日から遡って3年以内の贈与(110万円以下も含む)を計算対象とし(法19条(相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額))、相続税を軽減するための相続開始直前の「駆け込み贈与」を防止の措置としていました。

  4. 4 その一方で「相続時精算課税制度」(相続法21条の9以下)については、「2,500万円の非課税枠」とは別に、110万円の基礎控除(非課税枠)を新たに設け、しかも基礎控除内で贈与した財産の額は相続税の計算で持ち戻さず課税の対象とはしないので「相続時精算課税制度」の利用価値が増しました。

    1. (1) これまでは贈与額が合計2,500万円に達するまでは贈与税がかからず、2,500万円の枠は1年であるいは何年かで使っても良く、2,500万円を超えると超過額に一律20%の贈与税が掛かるとし、またこの贈与には110万円以下でもその度毎に申告を必要とされ、しかもこれらの贈与額は贈与者の相続開始時にすべて持ち戻されて、相続税の計算対象とされ「相続時に精算」されていました。
    2. (2) そして「相続時精算課税」の届出書を一旦提出するとその撤回ができないので(相法21の9-6)、それ以降の贈与で「暦年贈与」を選択できないため、非課税枠のある「暦年贈与」と比べ相続税の節税効果も低く、例えば値上がりが予想される収益物件を早期に贈与して、相続財産の評価対策を取る場合など以外には然程メリットがないので、その利用は限定的でした。

  5. 5 そこで令和6年以降は、節税対策として「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」(相続法21条の9)のどちらが有用であるかを検討する必要があります。

    1. (1) <毎年110万円以下の非課税枠内での贈与を続けていた場合>は、相続が開始すると「暦年贈与」は、7年分遡って770万円(但し新設の100万円控除の適用がある場合は670万円)が持ち戻されて相続税計算の対象となるのに対し「相続時精算課税制度」では非課税となった110万円以下の贈与財産の持戻しは一切なく、相続税の計算対象とならないので安定した節税効果が望めます。
    2. (2) しかし<贈与税の非課税枠を超えて行う贈与の場合>は、贈与額と贈与年数で異なるので、十分検討をして対応する必要があります。上記の通り「相続時精算課税制度」は一旦適用申請をすると「暦年贈与」に戻れないので、申請前に「生前贈与」の目的や方法等を基にして専門家に相談して十分検討して下さい。

    3. (3) 「暦年贈与」で注意すべきことは、<「暦年贈与」の持戻しの対象者>は相続の対象者だけで、相続人でない人には関係がありません
      • (ア) <贈与者の直系卑属である推定相続人以外の「孫」への贈与の場合>孫は法定相続人でないので、相続開始前7年以内の贈与であっても相続税の対象とならないということです。
      • (イ) 従って「孫への暦年贈与」は、相続開始前の「駆け込み贈与」だとしても非課税となり「暦年贈与」に有用性はあると言えます。
    4. (4) 一方、<法定相続人でない孫が「相続時精算課税制度」を利用した場合>は注意を要します。
      • (ア) 贈与者から孫が贈与を受け「相続時精算課税制度」を選択すると、贈与者の死亡時に贈与者の子が存命し、代襲相続が発生しない場合でも孫が贈与を受けた金額が年間110万円を超えた分は、相続税の計算対象となり(相続法21条の9)、相続人でない孫は2割増しで相続税を納付することなります。
      • (イ) 特に相続税が高額と見込まれる場合には、相続開始前に「相続時精算課税制度」を適用するよりも、早期に暦年贈与を計画的に実行することによって、贈与税を負担する方が結果的に得をする場合も想定されます。しかし、若年者への多額の贈与には思わぬ問題が起きることもあるので、慎重な判断が必要でしょう。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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