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贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その2)

2024.4.1

前回は「令和5年の税制改正と生前贈与による節税対策の概略・概要」について話しましたが、今回はより具体的に見てみましょう。

 

【第2】<暦年贈与>における「税制改正法」による加算対象期間の延長等について

  1. 1 「暦年贈与」の「贈与税」は、1年間に贈与による取得財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を控除した残額に、「一般税率」又は「特例税率」の累進税率を適用して算出します。
    1. (1) 「暦年贈与」は、受贈者ごとに1年間の贈与の総額が110万円の「基礎控除」(非課税枠)内では贈与税はかからず、超過した部分に対してのみ課税されます。

    2. (2) 贈与された財産は、原則、将来の相続発生時に相続財産に含まれないので相続税の節税となり、特例贈与財産(直系尊属から直系卑属に贈与された場合)に該当すると、贈与税の負担(特例税率)が少なくて済みます。

    3. (3) しかし、相続直前の贈与税や相続税の負担逃れを防止するため、相続開始前3年以内の贈与財産は、贈与がなかったものとして相続財産に含める「持ち戻し」がされるので、この加算される生前贈与分については基礎控除が失われ相続税の節税効果はなくなり、ただ既に支払った贈与税分は相続時に控除されるだけになります。
  2. 2 しかし、令和5年の改正法で相続又は遺贈による財産の取得者が、その被相続人から相続開始前7年以内に暦年贈与による取得財産がある場合は、その取得財産の贈与時の価額を相続財産に加算することになりました。但し、延長された4年間の贈与による取得財産の価額については、総額100万円まで加算されません

 

  1. 3 改正法適用(令和6年1月1日以降)の前後での贈与による取得財産に係る相続税への<加算対象期間>は、次の通りとなります。

    1. (1) 贈与の時期が<~令和5年12月31日まで>(改正前)の場合は、加算対象期間は相続開始前3年間です。
    2. (2) 贈与の時期が<令和6年1月1日以降>(改正後)の場合は

      • (ア) <贈与者の相続開始日が令和6年1月1日~同8年12月31日の場合>の加算対象期間は、相続開始前3年間となり
      • (イ) <贈与者の相続開始日が令和9年1月1日~同12年12月31日の場合>の加算対象期間は、同6年1月1日~相続開始日まで<3年+経過年数>となり
      • (ウ) <贈与者の相続開始日が令和13年1月1日以降の場合>の加算対象期間は、相続開始前7年間となります。

 

【第3】<税制改正による「相続時精算課税」>について

  1. 1 「相続時精算課税」は原則として、① 「贈与者」が贈与の年の1月1日において60歳以上であり、② 「受贈者」が同日において18歳以上で、かつ贈与時において贈与者の直系卑属である推定相続人またはである場合に選択することができます。
    1. (1) 但し、一旦選択すると同じ贈与者について暦年課税に戻れなくなり、また同制度で住宅を取得し自己所有となると、小規模住宅等の特例を利用できなくなります。

    2. (2) そして、贈与者の相続時には特別控除2,500万円を適用分も含めた贈与財産が相続財産に持戻され「相続時精算課税」(相続税額の計算)されることになります。
  2. 2 改正法による相続時精算課税に係る基礎控除の創設
    1. (1) 相続時精算課税を選択した受贈者(「相続時精算課税適用者」と言う)が、令和6年1月1日以降に相続時精算課税の選択に係る贈与者(「特定贈与者」と言う)から贈与取得した財産に係るその年分の贈与税については、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除されることになります。
      • (ア) 同一年中に<2人以上の特定贈与者から贈与財産を取得した場合の基礎控除額110万円>は、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格であん分されます。
      • (イ) 例えば、令和6年中に特定贈与者から取得した贈与財産の価額の合計額が基礎控除額(110万円)以下の場合は、同年分の贈与税の申告の必要はありません
      •  a)従来は、金額の多寡にかかわらず贈与税の申告が必要でした
      •  b)相続時精算課税を選択した場合は、その特定贈与者からの贈与については暦年課税の基礎控除の適用はできません。
      • (ウ) 累積2500万円までの特別控除額に変更はなく、特別控除額を超える贈与を行った場合には一律20%の税率により贈与税が課されます。
    1. (2) 特定贈与者から令和6年1月1日以降に取得した贈与財産の価額のうち、特定贈与者の相続税に加算される課税価格は、基礎控除額を控除した後の残額となります。
    2. (3) 特定贈与者の総資産が相続税の基礎控除内に納まる場合は、例えばその子に大きなお金が必要となる時に後顧の憂いなく「相続時精算課税制度」を利用できます。
  1. 3 改正法は、相続時精算課税適用者が土地又は建物について、贈与の日から特定贈与者の死亡で相続税申告書の提出期限までの間に,「令和6年1月1日以降の災害」で「一定の被害」を受けた場合は,その相続税の課税価格へ加算する価額は,その贈与時の価額から,被災価額を控除した残額とすることができるとしました。
  1. 4 「相続時精算課税」を選択する場合は、原則として贈与税の申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の納税地の所轄税務署長に提出します。
    1. (1) 贈与税の申告書を提出する必要がある場合は,申告書に添付して提出します。
    2. (2) その必要がない場合は,同届出書だけの提出となります。
  2. 5 以上を纏めると,次のようになります。
    1. (1) <贈与税額>は、受贈者特定贈与者ごとに1年間に取得した贈与財産の価額の合計額から、基礎控除額(110万円)を控除し、特別控除(最高2,500万円)の適用がある場合はその金額も控除した残額に20%の税率を乗じて算出します。
    2. (2) <相続税>については、相続時精算課税適用者は特定贈与者から取得した贈与財産の贈与時の価額(災害で一定の被害を受けた場合で土地又は建物を贈与日から災害発生日まで継続所有の場合は、再計算後の価額)から基礎控除額を控除した残額を、その特定贈与者の相続財産に加算します。
  3. 6 次回は、「贈与税の計算」について説明します。

 

 

 

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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