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贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その4)

2024.6.1

第4回は、<暦年贈与>と<相続時精算課税制度>を活用する際の選択の方法について見て行きましょう。

 

  1. 5 これまで説明したことに基づいて、贈与税や相続税の課税対象にならない金額、持ち戻しの対象になる金額を比較して有利不利を考えてみます。
    1. (1) <事例1> 相続開始前の10年間、毎年110万円贈与した場合
      • ①贈与税の納税額は、<暦年贈与>でも<相続時精算課税制度>でも基礎控除内となるため、贈与税は発生しません。
      • ②相続税の対象となる金額
      •  (ア) <暦年贈与の場合>は相続開始前7年以内の贈与が持ち戻しの対象となり、110万円×7年=770万円が相続財産に加算される。但し、相続開始前3年を超え7年以内に贈与された財産については、合計100万円の非課税枠があり、770万円-100万円=670万円が相続財産に加算される。
      •  (イ) <相続時精算課税制度の場合>は、基礎控除内の贈与であれば持ち戻しの対象にはならず持ち戻しの金額はゼロとなる。
      • ➂節税効果は、基礎控除内の贈与を行った場合は相続時精算課税制度を利用した方が、税負担が少なくなります。
    2. (2) <事例2> 相続開始前の10年間、毎年300万円贈与した場合

      • ①贈与税の納税額
      •  (ア) <暦年贈与の場合>は、毎年(300万円-110万円)×10%=19万円の贈与税が発生し、10年間で贈与税総額190万円を納税する。但し、相続時には7年間分が持ち戻しの対象となり、贈与税額は相続税の額から差し引かれ、精算されない実質的な負担金額は19万円×3年=57万円となる。
      •  (イ) <相続時精算課税制度の場合>、基礎控除までは非課税となる他、総額2,500万円まで贈与税は発生しないので、基礎控除を超える金額は10年間であわせて1,900万円となるため、贈与税は1円も発生しない。
      • ②相続税の対象となる金額
      •  (ア) <暦年贈与の場合>は、相続開始前7年間に贈与された2,100万円が持ち戻しとなるが、100万円の控除があるので実際、持ち戻して相続財産に加算されるのは2,000万円である。
      •  (イ) <相続時精算課税制度の場合>は、持ち戻しとなる金額は(300万円-110万円)×10年=1,900万円となる。
      • ➂暦年贈与の方が相続財産に加算される金額が多いため相続税の負担が大きくなり、相続時精算課税制度を利用した方が税負担が少なく済む。
    3. (3) <事例3> 相続開始前の30年間、毎年500万円贈与した場合
      • ①贈与税の納税額
      •  a)<暦年贈与の場合>は、贈与税の額は(500万円-110万円)×15%-10万円=48.5万円となり、30年間の贈与の合計税額は48.5万円×30年=1,455万円となる。但し、持ち戻しの対象となった7年分の贈与税は相続税の計算時に精算されるので、実質的に贈与税として負担すべき金額は1115.5万円(30年-7年=23年分)となる。
      •  b)<相続時精算課税制度の場合>は、贈与税の対象額は(500万円-110万円)×30年-2,500万円 =9,200万円で、30年間で9,200万円×20%=1,840万円の贈与税を納付し、この金額はすべて相続税の計算時に控除され、贈与税として確定した税額は1円もない。
      • ②相続税の対象となる金額
      •  a)<暦年贈与の場合>は、500万円×7年-100万円=3,400万円が相続財産に加算されます。
      •  b)<相続時精算課税制度の場合>は、(500万円-110万円)×30年=1億1,700万円が相続財産に加算されます。
      • ➂相続時精算課税制度を利用した場合の方が、持ち戻しの金額が8,000万円以上大きくなり相続税の負担は大きくなる。但し、この時の相続税の計算は相続人の数や他の相続財産の金額によって計算に大きく影響するので注意を要する。
    4. (4) <暦年贈与>と<相続時精算課税制度>の活用の有利不利については、相続財産の金額と相続人の数を念頭に置きながら、上記<事例>に実際に何通りかの贈与金額を当て嵌めて計算し、それらを比較検討しなければ適切な解答を得ることが難しいと思われます。自ら検討すると共に、専門家にも相談してみて下さい。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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