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贈与税(相続税法21条以下)に関する<令和5年税制改正>について(その5)

2024.7.1

第5回は相続税対策の一つとして都度贈与について見ておきましょう。「都度贈与」は聞き慣れないかもしれませんが、皆さんが常々行っている家族の生活や教育を支える贈与の仕方です。後継者の育成に役立つ大事な資金の投資にもなります。

 

【第5】「贈与税」(相続税法21条以下)には「非課税財産」(相続税法21条の3)の一つとして「都度贈与」があり、それは生活費又は教育費について扶養義務者から必要の都度に贈与を受ける場合を言い、その目的のために1回で全額使い切ってしまえば贈与税はかからない制度です。

 

  1. 1 「都度贈与」は、文字通り生活費又は教育費の名目で必要の都度受け取った財産をその都度費消したものを、下記の通り非課税とすると規定しています。
    1. (1)<相続税法21条の3贈与税の非課税財産

      • (ア) 「次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない
        •  扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
      • (イ) <相続税法基本通達21条の3-3~6>〔扶養義務者からの生活費等関係
        • a)「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く)を含む(21の3-3)。
        • b)「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、分具費等をいい、義務教育費に限らない(21の3-4)。
        • c)生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。従って、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合、又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱う(21の3-5)。
        • d)「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいう(21の3-6)。
    2. (2)「扶養義務者」とは、配偶者や直系血族(親や祖父母など)、兄弟姉妹を指します。
      • (ア) 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、「通常必要と認められるもの」を言います。
      • (イ) 祖父母から孫への生活費や教育費の贈与も必要な都度であれば非課税です。
      • (ウ)「必要な都度」、「必要に応じて」、「お金を贈与する」ことが条件です。
        • a)通常必要な生活費・教育費の他にも、出産資金、結婚資金・新居のための家具資金等、子供や孫の家賃なども「都度贈与」に含まれます。
        • b)生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てた場合は、贈与税がかかることになります。
  1. 2 生活費や教育費としての「都度贈与」には譲渡金額の上限は設けられていませんが、その使途目的から自ずと限度があることを弁えておく必要があります。

    1. (1) 例えば、大学の入学金・授業料を併せて1,000万円を必要とし、それを祖父母が孫に贈る場合の教育資金も上記の財産に該当し、進学に伴う費用分を入学時に渡す場合は非課税となり、贈与税はかかりません。
    2. (2) 「都度贈与」の非課税は、あくまでも必要に応じて実施した場合で、将来の分まで渡すと全額を教育に使ったとしても非課税の対象外になりますし、教育資金として渡したのを、他の用途に使った場合も贈与税を課せられます

      • (ア) 例えば、大学の学費4年分をまとめて贈与したり、生活資金や教育資金を数年分一括して贈与した場合は、直ぐに必要な分以外は通常の贈与税の対象となります。
        • a)大学の授業料や生活費を一括して贈与を受け、その資金を貯金したり株の購入や車の購入といった贈与の目的以外に使った場合は、目的以外に使った部分に贈与税が課せられます。
        • b)孫が誕生したときに、義務教育にかかる費用分をまとめて贈与すると非課税になりません。
      • (イ) 贈与を受けて余った分を趣味などに充てたり、贈与を受けた目的以外の事に使ってしまうと、その部分には贈与税が課せられます。
    3. (3) 「都度贈与」は扶養義務を履行するための贈与であり、贈与契約書は不要ですが、非課税を確保するため必要な金額を正確に把握し、また万一税務署からのお尋ねがある場合に備え、領収書等の証拠を保管しておくことも大事です。
      • (ア) 祖父母が入学費や授業料を贈与する場合、孫やその両親の口座に振り込んだ証拠を残し、贈与金の使途や支払日などを明確にしておきます。
      • (イ) 祖父母が、孫の学校に直接振込めばより明らかになります。
      • (ウ) なお、贈与した教育資金を他の目的などにも充てる場合は、総額が年間で110万円を超えないのであれば「暦年贈与」の方が課税上のリスクがなくなるので、良く見極めた上で非課税とする方法を選択すべきです。
    4. (4) なお、教育資金の贈与に関しては「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」により30歳未満の孫などが祖父母など直系尊属から贈与を受けた場合は、受贈者1人あたり最大1500万円まで令和8年3月31日までの特例)非課税となります。
    5. (5) 更に、結婚・子育て資金の一括贈与に関しては、18歳以上50歳未満の人が金融機関等との資金管理契約に基づき直系尊属からの信託受益権を取得し、贈与により金銭を銀行等に預入れた場合等は、1,000万円まで資金非課税申告書の提出等をすることにより(令和7年3月31日までの特例)、また住宅取得等資金に関しては、直系尊属から自己居住用家屋の新築、取得又は増改築等のために「住宅取得等資金」の贈与を受けた場合(「省エネ等住宅の場合」1,000万円まで、「それ以外の場合」500万円まで)は(令和5年12月31日までの特例)いずれも非課税となります。
  2. 3 既述の通り、被相続人(贈与者)が「贈与税」の制度を活用し、生前に配偶者や子供達に財産分けをすることで相続による不公平を防ぐ効用があり、また、相続財産を減少させ相続税の負担を軽減する効果が期待できますので、個々具体的に慎重に検討し専門家にも相談することが必要と思われます。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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