改正された贈与税の制度、どのように利用しますか?
2024.9.17
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
令和6年1月1日から、贈与税の制度が変わりました。皆さんは今後も相続対策の効果がある贈与の方法、確認をされましたか?制度の改正点をおさえたうえで、贈与の利用は再検討が必要です。
■改正された暦年課税制度と相続時精算課税制度
贈与税の制度には暦年課税制度と相続時精算課税制度があり、どちらの制度を使って贈与をするのか選択することができます。暦年課税制度では、1年間の贈与額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に贈与税がかかります。改正前は、この暦年課税制度を使って相続開始前3年以内に贈与した財産は、相続財産に加算されることになっていました。110万円以下の贈与であっても加算の対象です。令和6年1月1日の贈与からは、この加算対象となる贈与財産が7年以内のものに拡大されました。節税効果は低くなったといえるでしょう。なお、相続開始前4年から7年以内の贈与財産については、贈与合計額から100万円を控除することができます。
相続時精算課税制度では、贈与財産を相続時に精算して相続税が課税されます。原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して贈与する場合にこの制度が使え、2,500万円の特別控除額までの贈与であれば贈与税がかかりません(2,500万円超は税率20%)。この2,500万円の特別控除額に加えて、令和6年1月1日の贈与からは新たに毎年110万円の基礎控除額ができました。この基礎控除額110万円以下の贈与については贈与税がかからず、相続財産への加算も不要なため相続税もかかりません。
それでは、改正された贈与税の制度を今後はどのように利用すると良いでしょうか。
■子へ110万円までの贈与をするときは?
贈与をするのは子(18歳以上)へ毎年110万円までと決めている方は、相続時精算課税制度を使うと有利といえるでしょう。令和6年1月1日からの贈与では、相続時精算課税制度を使った場合、基礎控除額の110万円以下の贈与は贈与税も相続税もかかりません。
相続時精算課税制度を使いはじめるときは、贈与税の申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を忘れずに税務署へ提出しましょう。提出しない場合、暦年課税制度を使っての贈与として相続財産への加算対象になってしまいます。
■孫への贈与は有効
暦年課税制度では、相続財産への加算の対象になるのは「相続又は遺贈により財産を取得した者」への贈与とされています。これは大半が法定相続人への贈与ですので、法定相続人への暦年贈与は節税効果が下がったといえます。一方、「相続又は遺贈により財産を取得した者」以外への贈与、例えば孫への贈与は、相続財産への加算がなく変わらず節税効果がありますので、積極的に活用したいところです。ただし、孫が代襲相続人、養子、遺言等で財産を取得、保険金受取人の場合には、孫も加算対象です。この場合、孫が18歳以上であれば、相続時精算課税制度を使い110万円までの贈与が有効でしょう。
これらの方法は多くの方に有利と思われます。ただ実際に贈与をされる際は、家族構成や財産状況、資産、遺産の分け方等をふまえて適切かどうか、必ず専門家にご相談ください。