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会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その9)

2021.7.1

  1. 14. 会社の事業承継において、(その4)の9の(4)で「「自社株」を後継者に集中させるためには、贈与、売買、相続などにより移転させます」の内、今回は前回の「遺言」に関連して「信託」を取り上げます。

    1. (1) 相続財産の多くが自社株である場合の事業承継の対策として、「自社株式」の「信託」を考えてみましょう。

      • (ア) 今回は、事業承継対策に信託を活用しようとするもので、活用のメリットは信託財産が遺産分割協議の対象とならず相続トラブルの発生を抑えられるようですが、
      • (イ) 遺言では、後継者に自社株を相続させた場合に、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされれば、自社株の集中相続の実現が困難となります。それを回避するため、二男や長女に「無議決権株式」を相続させる方法を検討しました。
      • (ウ) 矢張り「遺留分侵害額請求」の適用を免れられないこと、信託では信頼できる「受託者」を選任できることが重要となることを念頭に置いて下さい。
    2. (2) 「遺言代用信託」の活用を考えます。

      • (ア) 「遺言代用信託」は、委託者となる財産(自社株式)所有者が生前に受託者(財産を管理処分する人)に信託し、死亡時に指定済みの承継者に信託財産(受益権)を引き継ぐとする「信託契約」を設定する制度です。

      • (イ) 経営者(委託者)が、生前に自社株式を「当初は先代経営者を受益者とし、先代経営者死亡後は後継者を受益者とする。」とする信託を設定します。

        • a) 「自益信託」(委託者=受益者/信託財産の所有権は、委託者から受託者に移転する)の場合は、信託財産は受益者のために管理・運用され、信託財産から生じる収益は受益者が受け取り、その実質的な所有者は受益者となる。
        •  1) 「自益信託」の設定時は、信託財産の実質的な所有者は変わっていないので、贈与税などは課税されないが、後継者が信託財産を承継した場合は、相続税の対象となる。
        •  2) 相続人が複数存在し、後継者以外の相続人も受益者に含める場合は、後継者のみに議決権の行使の指図権を付与すると定めるようにする。
        • b) これにより、委託者は生存中は従前通り自ら受益者であるが、亡くなった時に受益権(自社株式)を指定承継者に承継させるので、遺言によって自社株式を遺贈したのと同様に「遺言代用」機能を発揮させることができます。
        •  1) 遺言代用信託で財産管理を受託者に任せることができれば、受益権の承継者を自ら財産管理を行うことが難しい障害者・持病のある人・判断能力の低い人にすることも可能になります。
        •  2) 残された遺族の生活上の不安を和らげたい人にとっては、遺言とは違った局面で利用できるし、親族関係が複雑な場合には、資産承継の道筋を決めておくこともできます。
        •  3) 相続人同士の争いを防ぎ、特定の相続人の生活を安定させる方法を予め定めておくためにも利用できます。
    1. (3) 「他益信託」(委託者≠受益者/委託者とは別の人が受益者になる信託)の活用も検討して置くべきでしょう。
      • (ア) 「他益信託」の場合は、経営者(委託者)が生前に自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において「後継者を受益者とするが、議決権の行使の指図権は委託者が保持する。」と定めることもできますが、受益者に対して贈与税が課税されます。
      • (イ) これにより、先代経営者が議決権を保持しつつ、後継者が自社株式に係る財産権(配当権及び残余財産分配権など)を保持すると同様の効果が得られますので、そのメリットを活用すべき場合もあるでしょう。

      (4) 「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」の活用を検討しましょう。

      • (ア) 「A(経営者)が保有する株式について、Aが死亡したら二男Cへ遺贈する。その後Cが死亡した場合には、亡長男Bの子Dに遺贈する。」といった、第一次受益者(A)の受ける財産上の利益が、第二次受益者(C)、第三次受益者(D)に移転するような「後継ぎ遺贈」を希望する場合、遺言では最初の二男Cへの遺贈しか効力を認められないとされており、その有効性に問題がある。
      • (イ) そこで「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」を活用し、先代経営者(委託者)が自社株式などを対象に信託を設定し、信託契約において「後継者を受益者とし、受益者(後継者)が死亡した場合には、その受益権は消滅し、次の後継者が受益権を取得する。」と定めた信託契約を締結する。

        • a) 「受益者連続信託」とは、受益者の死亡により、その受益者の有する受益権が消滅し他の者が新たな受益権を取得する旨の定めがある信託をいう。
        • b) これにより、孫の世代の後継者まで承継の道筋を先代経営者が自己の意思で決定することができるが、それぞれの承継時の相続税課税を免れることはできない。
  2.   (5) 次回は「事業承継信託」について検討しましょう。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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