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会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その18)

2022.8.1

今回から、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)の「民法の遺留分に関する特例」について話します。

 

【Ⅵ】 「民法の遺留分に関する特例」(円滑化法3条~10条)

 

  1. 1 (その12)から(その17)まで「事業承継税制」(中小企業の経営承継に伴う贈与税・相続税の納税猶予及び免除)について説明しましたが、そのほかに「円滑化法」は民法上の遺留分の問題に対応する「特例法」を整備しました(令和3年改正)。
    1. (1) 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に対する相続できる遺産の最低保障額を言い(民法1042条1項)、遺言や生前贈与などによる相続分が遺留分を下回った場合に、多く受け取った相続人から遺留分侵害額を請求できる権利で、「遺留分侵害額請求権」と呼ばれています(令和2年の相続法改正)。
    2. (2) 生前贈与等により、事業後継者に自社株式等の事業資産を取得(相続)させたが、他の推定相続人から遺留分侵害額請求を受ければ、事業承継計画が破綻するので、それを防止するための施策として「民法の遺留分に関する特例」が設けられました。
      • (ア) 「民法の特例」を活用すると、<非上場株式>が先代経営者から後継者に贈与等される場合に、後継者及び先代経営者の推定相続人全員が合意し、<① 遺留分算定基礎財産から除外除外合意)><② 遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定固定合意)>を締結することができます。

        • a) 後継者が他の相続人との話し合いにより「除外合意」をすれば、全株式を後継者に引き継ぎその散逸を防ぐことができ、場合によっては自社株式以外の財産についての合意もすることもできます。
        • b) 「固定合意」は、相続財産の自社株式が非上場株式(未公開株式)で評価が難しく、また相続開始までに変動の可能性もあり、遺留分侵害額請求による不測の事態の発生を避けるために、その評価額を合意時に固定して置くものです。
      • (イ) 更に、株式の場合は<①>や<②>と一緒に、<③ 自社株式以外の財産に関して付随合意)>を行うこともできます。
        • a) 「付随合意」を締結することにより、後継者が先代経営者から生前贈与された自社株式以外の事業用財産(例えば、会社所在の不動産、事業用機器、現預金など)を遺留分の対象から除外したり、また、後継者以外の相続人が贈与を受けた財産を遺留分の対象から除外するなどの合意ができます。
        • b) <③>だけを単独で締結することはできません。
      •  (ウ) なお、上記の<会社経営者の株式>のほかに<個人事業者の業務用財産>についても、ほぼ同様の手続が認められていますので次回以降に説明します。
    1.  (3) 「民法の特例」は、「事業承継税制の特例」との併用が可能ですが、それぞれ要件や申請手続きなどが異なります。
      •  (ア) 「事業承継税制の特例」は、生前贈与のほか相続や遺贈でも適用できるのに対し、「民法の特例」は生前贈与に限られますが、贈与時に旧代表者が代表を退任している必要はありません。
      •  (イ) また「事業承継税制の特例」では、最大3人の後継者まで適用できるのに対し、「民法の特例」では後継者1人に限られ、また旧代表者以外からの贈与は「民法の特例」の対象とはなりません(「その15」参照)。
    2.  (4) 「民法の特例」により、「推定相続人全員の合意」で上記<①><②><③>を締結し、その合意の範囲で「遺留分侵害額請求」を適用しないようにする為には「経済産業大臣の確認」(円滑化法7)及び「家庭裁判所の許可」(同法8)を必要とします(円滑化法4Ⅰ①)。
      •  (ア) 「経済産業大臣の確認」は合意から1か月以内に中小企業庁に申請し、家庭裁判所の許可は、当該確認から1か月以内に申し立てる必要があります。
      •  (イ) なお、贈与から合意までの期間については定めがなく、10年前の贈与や数年間に及ぶ贈与についても合意は可能です。
    3.  (5) なお、「円滑化法」の「遺留分に関する民法の特例」に似た「遺留分の放棄」(民法1043条)の制度があります。
      •  (ア) 被相続人の生前でもそれぞれの相続人が家庭裁判所の許可を得れば遺留分を放棄することができ、また被相続人の死後には自由に放棄ができます。
      •  (イ) しかし「民法の特例」の場合は、相続人毎に意向が分かれることがないので「遺留分の放棄」よりも利点があると言えます。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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