知っておきたい生前贈与の基本と活用
2022.9.15
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
皆さんもご存じの通り、平成27年の相続法改正による基礎控除額の大幅引き下げに伴い、相続税は資産家でなくとも身近な問題となっています。そのため将来の相続税をふまえた対策をご検討の方も多く、今回からは相続税対策としてご相談を受けることも多い、生前贈与のお話をしていきます。
贈与とは、自分(贈与者)の財産を無償で他人(受贈者)に与えることをいいます。生前に財産を渡しておくことで相続税の課税対象となる財産が減り、相続税の節税をすることができます。節税方法の中でも贈与は取り組みやすく、特に現金の贈与は比較的手続きが簡単ですので、将来の生活資金をふまえて余剰がある方にはおすすめをしています。このような節税効果に目が行きがちな贈与ですが、思わぬトラブルを生じさせないためには基本事項の確認が大切です。実行する前にぜひ確認をしておきましょう。
贈与をする際の目的は大きく2つにわけられ、ひとつは「あげたい」という意思の実現、もうひとつは冒頭でもお話しした相続税の「節税」です。まずは自分の財産を他の人に「あげる」点では同じ「贈与」と「相続」の違いについて、親から子供に財産を渡す場合を例にみてみましょう。
贈与は、生前に親の意思で必要な時やあげたい時に何回でも渡すことができます。渡す相手は法定相続人でなくてもよいので、子供だけでなく孫に渡すこともできます。贈与のたびに「ありがとう」と感謝され、子供や孫の喜ぶ顔が見られるのも嬉しいポイントでしょう。
それに対して相続は、死亡時に一度だけ、さらに法定相続人にだけ財産を渡すことができます。相続の場においては、贈与と異なり感謝よりも権利主張になりがちなうえ、必ずしも親の意思が反映されるとは限りません。そのような事態を避け、親の意思を実現しようとするときには、遺言書の出番となります。遺言書によれば法定相続人以外の例えば孫にも財産を譲り渡すこともできますが、その際には相続税の2割加算にも注意しましょう。
贈与は、相続時の問題を解消する遺言書と組み合わせることによってさらにその効果を高めることができます。贈与とともに誰に何を譲り渡すのかを遺言書を作成しておくことで、残されるご家族が困ることのないよう準備をしておきたいですね。
税金の面では、贈与では基礎控除額110万円を超えると贈与税の対象となり、特例による非課税枠もあります。相続では相続財産が基礎控除額を超えると、相続税の対象になります。贈与税の特例については次回以降に詳しくお話しします。