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会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その20)

2022.10.1

今回は、前回に引き続き「円滑化法」(民法の特例)の「特例合意の要件」等について話します。

 

  1. 1 <特例合意>の必要的要件

    1. (1) <会社経営者の場合>の<特例合意の定め>は、「後継者が先代経営者から贈与、又は当該株式等の受贈者からの相続により取得した株式等の全部又は一部」を対象とし、次の内容となります(法4)。

      • (ア) 特例中小企業者の経営承継の円滑化を図ることを目的とした合意であること。
      •  a) 後継者となるべき者を含む推定相続人全員の「合意書面」とする(法4Ⅰ)。
      •   1) 推定相続人でも遺留分権のない兄弟姉妹及びこれらの者の子は除かれる
      •   2) 特例合意では、推定相続人の1人が他の推定相続人の代理人になれない。
      •   3) 被後継者への代償財産は必ずしも必要でない
      •  b) 後継者の有する株式等が、特例合意対象株式等を除くと議決権の100分の50を超えていないこと(法4Ⅰ但書)。過半数を超えている場合は適用されない。
      • (イ) 除外合意株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない(除外する)旨の合意)(法4Ⅰ①)。
      •   a)他の相続人は「除外合意」により、後継者が先代経営者から贈与等によって取得した自社株式の価額について遺留分の主張ができなくなる
      •   b)これにより相続紛争のリスクを抑え、後継者に集中的に株式を承継させることができる。
      • (ウ) 固定合意株式等の全部又は一部について「遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額」を当該合意の時における価額(相当な価額として証明をしたものに限る。)に固定する旨の合意)(法4Ⅰ②)。
      •  a) 現経営者が高齢でなく死亡(相続開始)まで相当の歳月があるとき、後継者の貢献によって株式の評価が上昇した場合、「遺留分の争い」や経営のモチベーションの減退を起こさせないように、予め「固定合意」をし、生前贈与後相続開始時までに上昇した株式価値を遺留分額の算定に影響させないようにする。
      •  b) 合意時の「固定合意」の株式価額の相当性を担保する為、税理士、公認会計士、弁護士等による証明を必要とする。
      • (エ) 以下の事由が生じた場合には、後継者以外の推定相続人が対処できる措置を定めておく必要がある(法4Ⅳ)
      •  a) 後継者が合意の対象となった株式等を処分した場合(Ⅳ①)
      •   1) 「定め」は、「非後継者に一定の金銭を支払う」、「非後継者はその合意を解除できる」などとする。
      •   2) また、「この場合でも非後継者は何も異議を述べず、一切の金銭を請求しない」とすることもできる。
      •  b) 先代者の生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなった場合(Ⅳ②)
      •   1) その記載例として「旧代表者の生存中に後継者が合意対象株式を処分し、又は特例中小企業者の代表取締役を退任したときは、後継者以外の推定相続人は特例合意を解除し、又は一定額の違約金の支払いを請求することができる。」とする。
      •   2) あるいは「旧代表者の死亡後に後継者が合意対象株式を処分し、又は特例中小企業者の代表取締役を退任した場合でも、後継者以外の推定相続人は何らの異議を述べず、一切の金銭の請求をしない。」としても良い。
      •  c) <後継者が死亡した場合で、子供(先代経営者の孫)が後継者の受贈した株式等を相続し、既に経営に参画している場合>は、先代経営者の存命中に孫が叔父・叔母ら推定相続人と合意すれば、再度特例の適用を受けられる。

 

    1. (2) <個人事業者の場合>先代の個人事業者の後継者と推定相続人は、全員の合意をもって後継者が先代からの贈与、又は当該事業用資産受贈者からの相続により、取得した事業用資産の全部、又は一部について書面で「除外合意ができる(法4Ⅲ)。

      • (ア) 上記(1)の(エ)(法4Ⅳ①②)と同様の措置を定める必要がある(法4Ⅴ①③)。

      • (イ) 当該事業用資産を事業用以外の用に供した場合に取る措置(法4Ⅴ②)の定め。
      • (ウ) 個人事業者の場合は「固定合意」(株式等の価額に関する合意)の適用はない。
    1. (3) 「円滑化法」は、「付随合意(オプションの合意)を任意に追加とすることを認めている(法5)。但し、固定合意の場合は除く
      • (ア) <会社の旧代表者の推定相続人>は4条1項の合意の際に、<個人事業者の推定相続人>は4条3項の合意の際に、併せて全員の合意をもって、書面で次の定めをすることができる。

        • a) 「株式以外の財産の除外合意
        •  1) 後継者が当該旧代表者から贈与された株式等以外の財産の全部又は一部について、その価額を遺留分算定基礎財産から除外する旨の定め(法5①)。
        •  2) 例えば、工場、土地、機械等の事業用財産、特許等の知的財産権など。
        • b) 個人事業者の場合の事業用資産を除く、その他の財産(法5②)。
      • (イ) 「公平措置の合意」(法6)(会社の場合、個人事業者の場合)
        • a) 推定相続人全員の書面により、「推定相続人間(後継者を含む)の衡平を図るための措置」について合意することができる(法6Ⅰ)。
        •  1) 例えば、後継者が後継者以外の推定相続人へ一定額の金銭を代償金として支払う旨の合意
        •  2) 他の相続人の相続株式を一定額で買い取る合意なども可能である。
        •  3) 上記1),2)の場合において、支払の分割、会社経営が思わしくなくなった場合の支払中止、あるいは延期等の条件を付することもできる。
        • b) 前項の合意として、財産の全部又は一部について、その価額を遺留分算定財産から除外する旨の合意(法6条Ⅱ)。
    1. (4) 特例合意について、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受けることについては,次回に説明します。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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