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会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その21)

2022.11.1

今回は、「円滑化法」の「民法の特例」適用のための「手続要件」及び申請手続等について話します。申請手続等が煩雑ですが、このような準備を要することを確認しておいてください。

 

  1. 1 民法特例の適用のための「手続要件」
    1. (1) 経済産業大臣の確認を得る(法7)。
      • (ア) 特例合意後1か月以内に「遺留分に関する民法の特例に係る確認申請書」と「確認証明申請書」を大臣に提出する(2項)。申請は、中小企業庁に対し後継者単独で行います(3項)。
      • (イ) 経済産業大臣が円滑法に合致しているかを確認します。
        • ① 当該合意が経営の承継の円滑化を図るためにされたこと(1号)
        • ② 申請者が当該合意をした日において後継者の要件を満たすこと(2号)
        • ③ 当該合意をした日において合意対象の株式を除くと後継者が議決権の過半数を確保することができないこと(3号)
        • ④ 旧代表者の推定相続人及び会社事業後継者が、後継者が合意対象の株式を処分した場合、及び旧代表者生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなった場合に取ることのできる処置の定めをしていること(4号)
      • (ウ) 「申請書」に次の書類を添付します(3項)。
        • a) 合意の当事者全員の署名又は記名押印のある次に掲げる書面。
        •  ⅰ 「合意に関する書面」(当事者全員の印鑑登録証明書を添付
        •  ⅱ 「合意の当事者全員が特例中小企業者の経営の承継の円滑化を図るために当該合意をした旨の記載のある書面」
        • b) 遺留分計算を合意時の株式等の価額で固定する定めをしたときは、その「固定価額の証明を記載した書面」
        • c) その他、定款、登記事項証明書、従業員数証明書、貸借対照表・損益計算書及び事業報告書(過去3期分)、上場会社に該当しない旨の誓約書、旧代表者が従前代表者であった旨の登記事項証明書、推定相続人を明らかにする戸籍謄本(他に相続人がいないことの確認)、株主名簿等、農業生産法人である場合はその法人である旨の農業委員会の証明書等
      • (エ) 上記確認を得ると、「確認書」と同時に「遺留分に関する民法の特例に係る確認証明書」の交付を受け、これらが家庭裁判所の許可申立てにおける添付書類となります。
    1. (2) 家庭裁判所の許可を受ければ効力を生じます(法8)。
      • (ア) 後継者は、経済産業大臣の確認を得た後、1か月以内に「家事審判申立書」により許可の申立をする(1項)。
      • (イ) 特例合意が推定相続人全員の真意に出たかを審判の対象とし、裁判所はその心証を得たときに許可する(2項)。
      • (ウ) 家事審判法第9条第1項甲類に掲げる審判事項とみなされる(法11)
  1. 2 合意の効力(法9)は、除外合意、固定合意、付随合意に規定した通りです。

    1. (1) 合意の効力は、当事者以外の者(第三者)に対してする遺留分侵害額の請求に影響を及ぼさない(3項)。
    2. (2) 特例合意の当事者が旧代表者よりも先に死亡した場合は、当該当事者の代襲者は、その特例合意の当事者たる地位を相続するから、代襲者には特例合意の効力が及ぶ。
  2. 3 合意の効力が消滅する場合は次の通りです(法10条)。

    1.  ① 経済産業大臣の確認が取り消されたとき(①)。

    2.  ② 旧代表者の生前に後継者が死亡し、又は後見開始、補佐開始の審判を受けたとき(②)。
    3.  ③ 特例合意の当事者以外の者が新たに旧代表者の推定相続人になったこと(再婚、新たな子供の出生など ③)。

    4.  ④ 特例合意の当事者の代襲者が旧代表者の養子となったこと(遺留分を取得する者が新たに生じた場合 ④)。

  3. 4 <二人の子供を共に経営者にする場合>は、次の点に注意を要します。

    1. (1) 旧代表者の子供2名を共に後継者とする場合は、共には「後継者」の要件を満たせないので、会社を2分割して子供2名をそれぞれの会社の代表者とし、各会社の「後継者」とする対策を検討すべきです。
    2. (2) この場合には、子供が相互に他の会社の経営に関与させないようにします。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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