配偶者の税額軽減 ~配偶者がすべて相続は一番お得?~
2023.1.16
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
相続の準備を始められた方からよく確認されるのが、「配偶者がすべて相続するのが、相続税がかからず一番お得ですよね」です。皆さんはその通りだと思われますか?
実は、お得かどうかはよく調べてみないと分かりません。配偶者が相続する際には「配偶者の税額軽減」という優遇措置があり、確かにこの制度を利用すると例えば夫の相続(一次相続)の時は相続税がかからない、かかっても少額というケースが多いでしょう。ただお得かどうかを判断するのに注意したいのは、次の妻の相続(二次相続)の時の相続税がいくら位になるかです。配偶者の税額軽減の制度内容とともに、考え方を確認しておきましょう。
■配偶者の税額軽減とは?
相続により配偶者が取得した財産が下記①②のいずれか多い額まで相続しても、配偶者の相続税の負担は0円になります。
①1億6000万円/②法定相続分相当額
具体例でみてみましょう。
Q.遺産総額1億円/相続人:配偶者と子
配偶者が相続ですべての相続財産である1億円を取得すると相続税はかかりますか? |
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①1億6000万円
②法定相続分相当額5000万円 |
配偶者はいずれか多い額(このケースは①)まで
相続しても相続税はかからない |
A.1億円を相続する配偶者には、相続税はかかりません |
つまり、配偶者は最低1億6000万円までは財産を取得しても相続税がかからないといえます。なおこの「配偶者の税額軽減」は、相続税の申告をすることで適用できる制度です。相続税の申告書の提出が必要なことを見落としがちですのでご注意ください。
■妻の相続時(二次相続)で起きること3つ
二次相続時には、相続税について次の①~③が起きます。その結果、一次相続で配偶者が相続する割合を増やすほど、二次相続時の相続税が増えるケースが多いようです。一次相続では相続税は0円で得をしたはずだったのに、二次相続時に思いがけず高額な相続税がかかってしまった、というようなことがないようにしたいですね。
①夫婦の財産が合算され、相続税の税率もアップ
一次相続は夫の財産のみですが、二次相続では夫の財産+妻の財産
②基礎控除額がひとり分(600万円分)少なくなる
一次相続で相続人が3人の場合は4800万円、二次相続では4200万円
③配偶者の税額軽減の適用がない
■夫婦の相続では、二次相続までのシミュレーションを
税理士にシミュレーションを作成してもらい、一次相続・二次相続あわせての相続税の負担が少ない遺産の分け方を確認しておきましょう。また相続税の負担を減らすこと以上に大切なのは、残される配偶者が生活資金・介護資金等に不安なく暮らせるかです。これから年末に向けて、ぜひご家族想いの相続を考えていきましょう。