知っておきたい認知症の備え ~家族信託のデメリット~
2023.3.16
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
今回はアパートなどの収益物件を複数所有している場合の、家族信託を行うことによるデメリットについてお話しします。
■家族信託のデメリット・損益通算の禁止
アパートなどを複数所有している場合に一番注意をしなければいけないデメリットが、損益通算の禁止の規定です。
- ①信託財産である不動産(家族信託をした不動産)から生じた損失はなかったものとみなされ、信託財産以外からの利益と相殺することはできません。
- ②信託財産から生じた損失を翌年へ繰り越すことはできません。
- 損失はなかったものとみなされるため、他の収益との相殺も翌年への繰り越しもできないことになります。
所有する2棟のアパートのうち、1棟を信託財産にした場合を考えてみましょう。ある年、信託財産にしているAアパートは大規模修繕を行ったので100万円の赤字、信託財産にしていないBアパートは100万円の黒字となったとします。どちらのアパートも信託財産にしていない場合なら、2棟の所得を合算することができるので、所得は0円となります。
では、今回のようにAアパートを信託財産にしている場合はどうなるでしょうか。Aアパート(信託財産)の損失100万円は生じなかったものとみなされますので、Bアパート(信託財産でない)の所得100万円に対して税金がかかることになります。さらに、Aアパート(信託財産)の損失は翌年へ繰り越すこともできません。
なお信託契約が複数ある場合(不動産ごとに受託者を別にするためなど)にも、それぞれの契約をまたいで損益通算することはできません。
アパートなどを複数所有している場合には、この損益通算の禁止による税務上のデメリットと、家族信託によるメリット(判断能力の衰退により不動産を含む資産の有効活用ができなくなる問題の解消など)をよく検討する必要があります。家族信託を行う場合には資産状況とあわせて、予定している大規模修繕に応じて導入時期を見計らうと良いでしょう。