遺産分割協議に期限ができる? ~令和5年4月1日施行の改正民法~
2023.3.2
こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。
いよいよ今年の4月から「所有者不明土地」問題の解消に向けた法律が段階的に施行されます。令和5年4月1日施行の改正民法では、遺産分割に期限が設けられることとなりました。遺産分割の制度が見直されますので、内容を確認しておきましょう。
■なぜ遺産分割に期限が設けられるのか
所有者不明土地が発生する原因の7割が、相続登記をせずに放置していることといわれています。相続登記だけでなく、遺産分割協議がまとまらないままのケースも多いでしょう。現在の法律上は遺産分割に期限は設けられていませんので、相続から何年経っても遺産分割協議はできます。ただ遺産分割協議が長期化するほど、特別受益や寄与分を主張するのに必要な証拠等は集めづらくなり協議もまとまりづらくなります。その結果、相続人が誰かもすぐに分からない、所在不明で連絡もとれない事態となり「所有者不明土地」が生じるケースはよくあります。このように遺産分割協議に期限がないことが所有者不明土地の生じる一因となっていることから、今回の制度見直しが行われることとなりました。
■遺産分割協議の期限は10年に
4月から施行される改正民法では、遺産分割ができる期間自体に期限は設けられません。ただ相続開始から10年経過した後の遺産分割では、原則として法定相続分によることとされます。これはつまり、10年経過した後は特別受益や寄与分といった具体的相続分による遺産分割を主張できなくなるということです。
特別受益とは、被相続人から生前に多くの財産を貰っていたなどの特別な利益のことをいいます。生前に財産を貰っていない相続人は、特別受益に配慮した公平な遺産分割をしたいと主張することができます。また寄与分とは被相続人に一定の貢献をした相続人がいるとき、その貢献度に応じて特別に認められる持分をいいます。例えば、被相続人の入院費や治療費を負担していた場合に寄与分が認められることがあります。
今回の改正により、この特別受益や寄与分を主張できる期間が10年に制限されることになります。令和5年4月1日の施行より前に発生した相続にもこの新しいルールは適用され、過去の相続も対象となりますので気をつけたいところです。
■猶予期間と例外的な取り扱い
施行後の混乱をさけるための経過措置として、少なくとも改正法施行日から5年の猶予期間が設けられます。また例外的に、相続開始から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたときなどには、引き続き具体的相続分により遺産分割をすることができます。
今回の制度見直しは、特別受益や寄与分を主張する権利を制限するものといえます。主張をしたい側にとっては10年経過した後に遺産分割をすると不利益を受けることもあるでしょう。遺産分割をしないままの財産がある方は早期に問題を解消する必要があるでしょう。また将来相続が起きた際にこのような事態とならないよう、遺言書を作成するなどの準備もしておきたいですね。