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財産リストを作成しましょう~家屋の評価方法~

2025.9.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は家屋の評価方法をご紹介します。まずは自用の家屋の評価方法を確認しましょう。

 

■自用の家屋の評価方法

自宅や事業で使用している家屋の相続税評価額は、その家屋の固定資産税評価額が用いられます。

固定資産税評価額は、毎年5月頃に届く「固定資産税の納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認できます。課税明細書の「価格」や「評価額」という欄に記載されている金額が固定資産税評価額です。

もし課税明細書がお手元にない場合は、市区町村役場で「名寄帳」を取得して確認することもできます。名寄帳は、所有する土地や家屋などの不動産を一覧にした書類です。

 

■貸家・アパートの家屋の評価方法

第三者に貸している貸家やアパートの家屋は、次の計算式に基づいて評価します。借家権割合は現在、全国一律で30%となっています。

 

■財産リストを完成させましょう

ここまで確認ができれば、財産リストは完成です。ひと通りの財産のおおまかな評価額を把握することができるでしょう。ただし相続税が実際にかかる見込みかどうかの判断は、専門家に相談しながら確認をすると安心です。

相続対策と相続税対策について(その4)

2025.9.1

今回は「相続対策」(夫婦間での不動産の移転)についてお話しします。

 

  1. 7 「生前贈与」をすると、遺産分割の対象財産から外れるので、相続時のトラブル防止のメリットがあるが、場合によってはデメリットもあるので注意を要します。
    1. (1) 例えば、不動産(自宅)を配偶者に生前贈与すると、受贈者(配偶者)名義の財産になり、相続時には原則相続財産でなくなるので他の遺産から相続分を取得することができ、また、仮に相続放棄をしても自宅を失うことはありません。
      • (ア) この「生前贈与」は「特別受益」(民903Ⅰ)に該当し、相続財産への持戻し(原則)となりますが、前回説明の通り、民法改正で「婚姻20年以上の配偶者への自宅の贈与」については、持戻し免除の意思表示の推定規定(民903Ⅳ)が新設され、その適用により遺産分割対象から外すことができます
      • (イ) 但し、他の相続人が遺留分侵害額請求をした場合は、原則加算されますがこれも民法改正で、贈与が相続開始より10年前であれば加算されないことになったので(民1044Ⅲ)、自宅を生前贈与する場合は、時期を考えることが重要です。
    2. (2) 「居住用不動産の配偶者控除」を活用すると、税法上、将来の相続財産を減らすことで相続税の節税効果を生じさせることができます。
      • (ア) 「配偶者控除の特例」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産又はその取得のための金銭が贈与された場合、贈与税の申告をすると基礎控除額110万円に加え最高2,000万円まで控除することができる制度です。
        • a) 受贈した翌年3月15日までに、取得した居住用不動産又は金銭で取得した居住用不動産に受贈者が現実に居住し、引き続き住む見込みであることを要する。
        • b) 同じ配偶者から一生に一度しか配偶者控除の適用を受けることができない。
      • (イ) 居宅兼店舗の生前贈与等があった場合に店舗部分の処理、相続させる旨の遺言の場合に持戻し免除の意思表示の推定に関しては、必ず専門家に相談して下さい。
      • (ウ) 贈与する居住用不動産と同じ敷地内に、居宅以外に「事業用部分(農作業用の作業小屋など)」(特例の適用不可)があれば、分筆登記をして用途を区分する
    3. (3) 不動産は、例えば自宅の持分を数年に分割して贈与し、110万円の基礎控除を活用する方法もあり、それによって贈与税を抑えられます。
      • (ア) しかし、贈与者が亡くなった場合は、相続税で贈与を受けた日から7年以内の生前贈与分が、相続財産に持ち戻して加算されます。
        • a) 改正後の7年ルールが適用されるのは、2024年1月1日以降の贈与である。
        • b) 毎年一定金額の贈与をする場合に「定期贈与」とみなされると、その全部に贈与税が課税されるので、贈与の都度「贈与契約書」作成等の対応を要する。
      • (イ) また、贈与の都度、登録免許税や諸費用などがかかるので注意を要します。
    4. (4) 生前贈与のデメリットは「登録免許税」「不動産取得税」が高い上、固定資産税等の維持費の支払を要するので、贈与税は抑えられてもそれ以外の費用が高額になることがあるので事前の検討を要します。

 

  1. 8 「相続」のメリット・デメリットについて見てみます。
    1. (1) 不動産を「相続」で取得する場合のメリットは、「配偶者控除」の枠が大きく非課税になる場合がほとんどで、仮に「相続税」が課税される場合でも「贈与税」より基本的に低くなる可能性があります。
      • (ア) 相続税での配偶者の税額を軽減する「配偶者控除」制度は、<課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1/2)>、または<1億6,000万円>のどちらか多い金額が控除額となり相続税がかかりません。
      • (イ) 従って、殆どの場合は配偶者控除の枠を利用すれば、不動産の相続税額は非課税になり、「相続税」が課税となる場合でも原則「贈与税」より安くなります。
    2. (2) また「小規模宅地等の特例」、すなわち相続や遺贈による取得財産のうち、相続開始の直前に被相続人の居住用の宅地等(土地又は土地上の権利)のうち、一定の面積について相続税の課税価格に算入すべき価額を一定の割合で減額できます。
      • (ア) 「小規模宅地等の特例」は、土地の評価に関する特例で、例えば自宅の相続税の評価額を80%、その他の場合は50%減額できるのです。
        • a) <相続人で利用可能な者>は、配偶者一緒に住んでいた同居家族3年以上賃貸や社宅に住んでいる別居家族であり、限度面積は330㎡までである。
        • b) 居住用の判定は、住民票での形式的判断でなく実際の居住を要する。
        • c) 土地評価額が「基礎控除3,600万円」までは、税金はかからない(上記(1))。
      • (イ) 「小規模宅地等の特例」の適用は「個人が相続または遺贈で取得した財産」に限られ、生前贈与で取得した不動産は、相続財産に含まれる場合でも適用されない。
        • a) 贈与を受けた日から7年以内に贈与者が亡くなり、生前贈与分が相続財産に加算(持戻し)される場合は、「小規模宅地等の特例」は適用できない。
        • b) 「居住(保有)継続要件」があり、相続税の申告期限が過ぎるまでは売却できなくなり、申告期限を待たずに売却すると80%の減額が取消しとなり、その取消し部分に対し過少申告加算税・延滞税がかかる。
        • c) 但し<相続人が配偶者の場合は、「居住(保有)継続要件」がない>ので、売却時期の制限がなくいつでも売却できる。
        •  1) 配偶者は、被相続人の居住用だけでなく、被相続人以外の生計一の親族(例えば長男)の居住用を取得した場合も特例を適用できるが、同要件は要する。
        •  2) なお、配偶者が事業用宅地(特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地)を相続する場合は「保有継続要件」があるので要注意。
        • d) 相続不動産の売却が、相続開始から3年10か月以内であれば、相続税額の一定金額を譲渡資産の取得費(B)に加算し、「譲渡所得税」の引下げができる。
        •  ※「譲渡所得税」={不動産の売買金額(A)-不動産を取得した金額(「取得費加算」)(B)-諸経費(C)}×20%  (国税庁No.3267参照)No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
    3. (3) 不動産相続のデメリットは、遺産分割協議による場合は分割方法(「換価分割」、「現物分割」、「代償分割」(一人が取得し他に金銭等を支払う)、「共有分割」)が難しいので、遺言により取得方法を定めておくのが最善です。
    4. (4) 以上の通り、「相続」の方がベターな場合が多く、「生前贈与」を利用するのは例えば「前妻の子でなく後妻に自宅を取得させたい場合(婚姻期間が20年以上、遺留分の持戻しが想定されない(贈与者が10年後存命))」や「負債が大きく相続人が相続放棄をする場合」(但し、生前贈与が詐害行為に該当しないこと)などである。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」

令和7年分の「路線価」公表!4年連続の上昇

2025.8.1

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

7月1日に公表された今年の路線価、みなさんはもう確認されましたか?路線価は毎年1月1日時点の道路に面する土地1㎡当たりの価格を評価したもので、その年の相続税や贈与税を算定するうえで基準となる指標です。

 

今年の路線価は昨年に比べ全国平均で2.7%上昇し、4年連続で前年を上回りました。上昇率は毎年大きく伸びていて、一昨年1.5%、昨年2.3%、今年2.7%の上昇と、今年は現在の計算方法となった10年以降で最大の伸び幅となりました。インバウンド需要や駅周辺の開発が地価上昇を後押しした一方で、一部の地方では下落傾向が続いています。

都道府県別の上昇率は、東京都の8.1%が最大で、沖縄県6.3%、福岡県6.0%と続きました。上昇した都道府県の数は、昨年より6多い35都道府県に増えています。その一方、奈良県1.0%、和歌山県0.7%、新潟県0.6%など12県が昨年に続き下落しました。今年の路線価は昨年の能登半島地震の影響が初めて反映されています。被害の大きかった輪島市の「朝市通り」は昨年比16.7%の下落となりました。

 

埼玉県内の路線価は昨年に比べ平均2.1%上昇し、4年連続で上昇しました。

県内で路線価が最も高かったのは、さいたま市大宮区の「大宮駅西口駅前ロータリー」で1㎡当たり592万円。上昇率は11.9%と、昨年の11.4%を上回る大幅な伸びを見せました。さいたま市浦和区の「浦和駅西口駅前ロータリー」は、10.8%上昇し、1㎡当たり256万円。10.8%の上昇となり今年も大きく伸びました。

さいたま市が推進する「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」により、大宮駅周辺には今後も複数の商業施設や、オフィスビル、マンション建設が進む見込みです。浦和駅前では地上27階、地下2階建ての複合施設「URAWA THE TOWER」の建設が進んでおり、住宅需要・オフィス需要から両エリアともに今後も上昇傾向が続くことが考えられます。

 

路線価が全国で一番高かったのは今年も東京都中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前の銀座中央通りで、昨年比8.7%上昇し1㎡当たり4,808万円でした。昭和61年分以降、全国首位は40年連続です。

 

路線価が公表されるこの時期は、ご自身の資産の相続税評価額を見直す良い機会です。路線価が変わることで所有する土地の評価額は変わり、相続税額も変わります。相続対策の見直しが必要となることもあるでしょう。ぜひ相続に強い専門家の手を借りながら、円満な相続を迎える準備をなさってください。

財産リストを作成しましょう~アパート等の土地の評価方法~

2025.7.17

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は前回お話しした「貸宅地」に続き、「貸家建付地」の評価方法をご紹介します。貸家建付地は、貸家の敷地となっている土地のことをいいます。例えば自分の土地にアパート等の建物を建てて他人に貸し出している場合です。今回も少し難しい内容ですが、もし対象となる土地をお持ちの場合は確認しておくと安心でしょう。

 

■貸家建付地の評価方法

貸家建付地の評価をする際の計算式は次の通りです。

 

計算例をみてみましょう。まずは前回お話しした貸宅地と同じように、路線価図で対象地の路線価、借地権割合を確認しましょう。計算式にある「借家権割合」は、現在は全国的に30%とされています。「賃貸割合」は賃貸している床面積の割合で、すべて貸し出している場合は100%です。

 

財産リストを作成しましょう~貸している土地の評価方法~

2025.7.1

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は前回お話しした「自用地」とは違うタイプの土地について、評価方法をご紹介します。少し難しい内容ですが、もし対象となる土地をお持ちの場合は確認しておくと安心です。

 

■ほかの人に貸している土地(貸宅地)の評価方法

自分の土地をほかの人に貸していて、そこに借地権などが設定されていると、その土地は「貸宅地」として評価されます。貸宅地の評価は下の計算例のように、まず自用地(その土地を自分で使っているとき)の評価額を考えます。その評価額から、借地権の分を差し引いて算出します。

路線価図には、その土地の路線価と一緒にアルファベットの記号が書かれています。この記号は「借地権割合」を示していて、例えば下の路線価図のように「400D」と書かれている土地なら借地権割合は60%です。アルファベットの記号と借地権割合の一覧表は、路線価図の上部にも記載されています。

 

■貸宅地を評価するときに気をつけること

一般的な借地契約がされているような場合は上記の方法で評価します。ただ、契約の内容によっては貸宅地として評価しないこともあります。例えば、受け取っているお金がとても安いときや「無償返還の届出」という書類を税務署へ出している場合などは上記の方法で評価しないことがあります。またお金のやり取り(権利金や地代)がなく、借りている人が無償で使っている「使用貸借」の場合は、貸宅地ではなく自用地として評価します。例えば、親が所有する土地に子が家を建てて住んでいるケースなどがあるでしょう。

評価の方法を間違えてしまうと、支払う税金が多くなってしまったり、反対に安すぎたために追加で支払わなければならなくなることもあるでしょう。実際の状況に合わせて、専門家に相談しながら正しく評価をすることが大切ですね。

財産リストを作成しましょう~不動産はどのように評価する?~

2025.6.17

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は財産リストを作成するときの不動産の評価方法についてお話しします。まずは土地について確認していきましょう。

 

■自宅土地(自用地)の評価方法 路線価方式

路線価は毎年7月に公表され、その年の相続税や贈与税を計算する際の基準として使われます。路線価は道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価額を示していて、千円単位で表示されています。それでは、自宅として使用している土地の前面道路に路線価が付されている場合について、次の計算例で確認してみましょう。

 

■自宅土地(自用地)の評価方法 ②倍率方式

一方で、路線価が決められていない宅地の評価では倍率方式が使われます。この評価方法では、固定資産税評価額に国税庁が公表している「倍率表」に記載の倍率をかけて評価額を求めます。このように路線価方式と倍率方式のどちらを使うかは、土地の所在地によって変わります。まずはどちらの方式に当てはまるのか「路線価図」の確認からはじめましょう。

 

 

相続対策と相続税対策について(その3)

2025.6.1

今回は「相続対策」についてお話しします。

 

  1. 6 「相続対策」には、「分割対策」「節税対策」「納税対策」の三本柱があります。
    1. (1) 先ず最初に遺産分割の割振りを構想し、遺言書は「遺言公正証書」により遺産分割の紛争「争族」を可能な限り防止し、もちろん遺留分請求の排除はできませんが可能な限りそれを防止し、妻子の家族の絆を維持できるようにします。
    2. (2) 「相続対策」には、相続税法の改正を念頭に入れておく必要があります。
      • (ア) 平成27年1月1日の相続税法改正で、基礎控除額の引下げ、未成年者控除・障害者控除の引上げ、相続税率の変更、小規模宅地等の評価が見直され、特に基礎控除額が【5,000万円+1,000万円×法定相続人数】から【3,000万円+600万円×法定相続人数】に60%縮減され、相続税の納税対象者が増加しました。
      • (イ) 令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)で「相続時精算課税制度」に非課税枠110万円を創設し、「暦年贈与」は相続人への生前贈与の相続財産への加算対象期間が、相続開始前7年以内に拡大されたので注意を要します。
      • (ウ) 節税対策として「贈与」の非課税枠の利用には、次の措置が考えられます。
        • a) 「教育資金贈与の非課税措置」「都度贈与」など、また、みなし相続財産とされる生命保険の保険金受取人が死亡保険金のうち「500万円×法定相続人数」まで非課税措置の制度等、種々の手法を組み合わせた相続対策を検討します。
        • b) また、養子縁組により法定相続人数を増やして基礎控除額を増加させ、生命保険金や死亡退職金の非課税枠【500万円×法定相続人の数】も拡大させられるが、養子による相続分の取得で揉めるおそれもあるので注意を要します。
    3. (3) 夫婦間の相続については、相続税を軽減する次の「配偶者控除」があります。
      • (ア) 「配偶者の税額を軽減」する配偶者控除(課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1/2または1億6,000万円の多い金額)の特例を利用することができます。
      • (イ) 但し、妻あるいは夫が遺産の多くを取得した場合にはその遺産を二次相続で子が相続し課税対象となるので、その事情も考慮し、全体としての相続税の節税を考慮した上で遺産取得の割合等、一次相続のあり方を決める必要があります。
    4. (4) 相続税対策として、税法上の夫婦間の「居住用財産の遺贈、贈与」の規定につき、重要な民法改正があったので見ておきます。
      • (ア) 税法上、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅の不動産または自宅購入資金の贈与について、贈与税の基礎控除額年間110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる(相続税法21の6)とされています
        • a) 居住用不動産の一部でも、家屋の敷地の借地権でも、又は居住用不動産を取得するための金銭でも良く、敷地のみの場合は受贈配偶者がその家屋を所有するか、受贈配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有することを要する。
        • b) 特別受益者の相続分について、共同相続人中に「遺贈、婚姻・養子縁組・生計の資本の贈与を受けた者」(特別受益者)は、相続財産の価額にその遺贈、贈与の価額を「持ち戻し」し、「相続財産とみなし」、「900条から902条(法定相続分、代襲相続分、遺言による相続分)までの規定により算定した相続分から,遺贈、贈与の価額を控除した残額を相続分とする。」と規定している(民法903条1項)。
        • c) そこで民法改正前は、「上記(ア)」は「特別受益」として相続財産に「持ち戻し」されたので、残された配偶者の生活基盤は必ずしも確保されなかった。
      • (イ) しかしながら令和元年、民法903条4項が新設され「婚姻期間が20年以上の夫婦間」で「一方の被相続人が他方に対し、その居住用の建物又はその敷地(自宅)を遺贈又は贈与をしたとき」は、「当該被相続人はその遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」とされた。
        • a) 民法改正は「特別受益」の持戻しの原則(民903Ⅰ)に対し、被相続人と長年連れ添った配偶者の自宅の遺贈又は贈与に対し、持戻し免除の意思表示の推定規定(民903Ⅳ)を新設した
        • b) 「自宅」が遺産分割対象から外れるので、それ以外の相続財産に対して相続権を主張でき、他の相続人にその意思のない旨の主張・立証責任が転換された。
        • c) 「持戻し免除の意思表示」は「遺言公正証書」に明記しておくとよい。
    5. (5) 但し、他の相続人が「遺留分」を主張する場合は、免除されず原則加算されたが、平成30年に民法1044条3項が新設され,贈与が相続開始より10年前であれば加算されないことになりました(旧1030条が新1044条1項となり、2項・3項新設)。
      • (ア) 「贈与は相続開始前の1年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても同様とする。」(民1044Ⅰ)。
      • (イ) 相続人に対する贈与については、第1項中「1年」とあるのは、「相続開始前の10年間にされた贈与」「価額」は「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る」とされた(同条3項)。
        • a) 「生計の資本」とは居住用不動産の贈与、不動産取得のための金銭の贈与などで、贈与金額や贈与の趣旨などから判断される。
        • b) 相続の場合は不動産取得税はかからず、登録免許税も固定資産税評価額×0.4%であるが、生前贈与の場合は不動産取得税は固定資産税評価額×3%で、登録免許税も固定資産税評価額×2%と高くなりデメリットとなる。
        • c) なお、自宅を配偶者に相続させるか生前贈与するかは、相続財産額と「配偶者控除」「小規模宅地等の特例」の適用の有無や「遺留分」等を慎重に検討する必要がある。
      • (ウ) 「分譲マンション」の相続、遺贈、贈与に対する評価方法は、新しい「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」(令和5年9月改正、令和6年1月1日施行)が適用され、実勢価格の60%水準に上昇したので注意を要する。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」

財産リストを作成しましょう~財産の種類ごとの評価方法~

2025.5.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は前回に続き、財産リストの作成の際の、それぞれの財産の評価額の考え方についてお話しします。財産リストを作成することで、相続税がかかるかどうかを把握でき、自分に必要な対策が何かも明確になるため、遺言書の作成をスムーズに進めることができます。それでは、それぞれの財産の評価方法を確認していきましょう。前回掲載した財産リストの見本と照らし合わせてみてください。

 

■プラスの財産

①金融資産(預貯金・有価証券など)

金融機関名や支店名、預貯金の種類(普通預金・定期預金など)や、株式・投資信託の内容を記入し、現在の残高・評価額を記入します。

▶注意点:「タンス預金」や、家族名義の口座へ預金移動をした「名義預金」は、誰の財産とみなされるか、贈与として扱われるかなどで判断が分かれます。税理士によっても解釈が異なるケースが多いでしょう。残されるご家族が困ることのないように、事前に専門家へ相談しておくと良いでしょう。

②不動産(土地・建物)

土地や建物の評価額を記入します。計算方法が少し複雑なため、詳細は次回詳しく説明します。

➂その他の財産(書画・骨董品、贈与など)

書画や骨董品は、売却した場合の見込額を記入します。贈与財産については、「相続財産として扱うか」、「そもそも贈与と認められるか」など、判断が難しいポイントが多いです。贈与税の制度も変更されているため、専門家に相談して判断すると良いでしょう。

 

■みなし相続財産

④死亡保険金

保険会社名や保険の種類、受取額を記入します。相続時に支払われる死亡保険金のうち、被相続人が契約者で、相続人が受取人の死亡保険金には非課税枠があります。

非課税枠の計算方法:「500万円 × 法定相続人の数」

▶注意点:孫など相続人以外の人が受取人の場合はこの非課税枠が適用されず、さらに相続税が2割増しになる可能性があるため、契約内容をしっかり確認しておきましょう。

 

■マイナスの財産

⑤債務(借入)

借入金がある場合は、借入先・内容・残高を記入します。

 

財産リストを整理して必要な対策を把握することで、「誰にどの財産を残すのか」もはっきりしてきます。リストの作成をしっかり行い、相続の準備を進めてきましょう。

財産リストを作成しましょう~遺言書の準備~

2025.4.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、財産リストの作成についてお話しします。財産リストを作ると財産の分け方を検討しやすくなり、遺言書の準備がスムーズに進みます。さらに、相続税がかかるかどうかを確認することもできます。相続税がかかるかを把握することにより、分割対策・節税対策・納税対策(前回までにお話しした3つの対策)のうち、どの対策が必要かを検討しやすくなるでしょう。そこで、今回からは財産リストの作成に必要な相続税の知識について詳しく解説していきます。

では、相続税がかかるかどうかを判断するために、何を確認すればよいでしょうか。それには、次の2つのポイントが大切になります。

1.基礎控除額」の確認

2.相続税の対象となる財産の総額の確認

 

相続税の対象となる財産の合計額が「基礎控除額」を超えなければ、相続税はかかりません。つまり対象財産が基礎控除額以下であれば、基本的に相続税対策を考える必要はないということです。財産リストを作成することでこれら2つのポイントを確認でき、相続税がかかるかを把握することができます。

 

■財産リスト作成時のポイント

財産リストは、次のような形式で作成しましょう。ご夫婦の場合、それぞれ個別に作成することをおすすめします。

リストは上から順番に記入していきます。まずは基礎控除額の計算方法を確認しておきましょう。計算式は赤枠に記載の通りです。

 

法定相続人の人数ごとの基礎控除額は計算すると次の表のようになります。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

 

次回からは財産欄の記入ができるように、財産の種類ごとの評価額の考え方についてお話しします。

遺言書を作成する前に考えておきたい3つのポイント(その2)

2025.4.1

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、前回に引き続き遺言書を作成する前に押さえておきたい重要な3つのポイント中から、3つ目のポイントについてご説明します。

 

■3つ目のポイント:財産を分かりやすくリストにまとめる

遺言書を作成する前に、ご自身の財産をしっかり整理し、リストにまとめることが大切です。次の手順で進めてみましょう。

①財産の内容を書き出す

まず、金融資産であれば「〇〇銀行、普通預金」、不動産であれば「土地、さいたま市浦和区〇〇」、生命保険であれば「〇〇生命、終身保険」といった具体的な内容をリストアップします。ローンなどの債務がある場合も忘れずに記載しましょう。

②それぞれの財産の現在の価格を記入する

財産ごとに、現在の残高や評価額を記載します。生命保険であれば死亡保険金額を確認しましょう。

➂財産を誰に残すかを決める

前回お伝えした2つのポイントを思い出しながら、どの財産を誰に残すかを考えましょう。その際、家族全体のバランスに配慮することが大切です。過去に家族に金銭的な援助をした場合や、それぞれの現在の生活状況にも目を向けてみてください。

 

財産リストを作成すると、遺言書の作成に進めるように財産の分け方を事前にしっかり考えることができるだけでなく、相続税がかかるかどうかも確認しやすくなります。このことからも、財産リストの準備はとても大切といえます。

 

それでは、これまでの3つのポイントのおさらいです。

1.相続準備の目的をはっきりさせる
誰のために、どのような目的で相続準備をするのかを明確にすること

2.必要な相続対策を確認する

①分割対策、②節税対策、③納税対策、この3つの中で必要なものを見極めること

3.財産リストを作り、分け方を決める

財産をしっかりリストにまとめ、誰に何を残すか具体的に決めること

 

次回は、財産リストの作成方法について、相続税の確認もできるようにもう少し詳しくお話しします。2つ目のポイントである必要な相続対策を確認できるように、しっかり理解しておきましょう。

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