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相続税のきほん(その7)

2023.11.9

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回から相続財産の評価方法についてお話しします。

おさえておきたいポイントは次の3つです。

①それぞれの相続財産の評価方法

ポイント…難しいけれど特に知っておきたい不動産の評価方法

②自宅の評価が8割減額!「小規模宅地等の特例」

ポイント…自分や親の相続の際に特例を使える?

③評価方法からわかる相続税の対策

ポイント…自分や親の相続に備えてこれからできる対策は?

 

それでは順番にご説明していきます。

①それぞれの相続財産の評価方法

1.金融資産の評価方法

現金 相続発生日に存在した金額(財布、金庫など)
預貯金 相続発生日の残高の合計額

相続申告日は、税務署には残高証明書を提出

  •  ※定期預金の場合は、残高だけでなく既経過利息を加算
  •   金融機関には既経過利息計算書の発行を依頼
上場株式 次のうち、最も低い金額で評価

①相続開始の日の最終取引価額

②相続開始の月の最終取引価額の月平均額

③その前月の最終取引価額の月平均額

④その前々月の最終取引価額の月平均額

投資信託 相続発生日の時価
自社株 会社の規模などにより、評価の仕方が異なる

 

相続税申告をする際には、各金融機関で残高証明書を取得

相続発生日の残高を金融機関が証明する書類(証明書の取得には費用がかかる)

 

2.不動産の評価

建物 固定資産税の評価額

  •  ・固定資産税の課税明細書、名寄帳に記載がある
  •  ・税務署へは固定資産評価証明書を提出(市区町村役場で取得)
土地 ①路線価方式(市街地の土地)

  •  ・路線価に地積をかけて算出
  •  ・国税庁HPで「路線価図」を取得

②倍率方式(市街化調整区域、農地・山林など)

  •  ・固定資産税評価額に倍率をかけ合わせる
  •  ・国税庁HPで「評価倍率表」を取得

 

3.金融資産・不動産以外の財産の評価

中古車市場での流通価格
会員権 相続発生時の取引相場を確認し、取引価格の70%
書画・骨董 相続発生時における時価

税務署には美術商による鑑定評価書を提出

家財道具 生活規模により、概ね10万~30万円程度で計上
電話加入権 1,500円で計上

 

次回は少し難しいお話しになりますが、不動産の評価方法をもう少し詳しくご説明します。

「配偶者の居住の権利」を考える(その4)

2023.11.2

今回は前回までに説明した「配偶者居住権」の活用について見てみます。その活用に当たっては、難しいので詳しくは専門家にお尋ね下さい。

 

  1. 6 「配偶者居住権」を相続税対策としての活用について考えましょう。

    1. (1) 例えば、相続税評価額が1億円の不動産について配偶者と子が相続する場合、「夫→妻→子」の順番で相続すると、妻の相続時には相続税の配偶者の税額軽減によって相続税がかからない場合があります。
      • (ア) 「配偶者の税額の軽減」は、① 配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が「配偶者の法定相続分相当額」と、② 「1億6千万円」の①と②とを比較し、多い金額までは相続税が軽減されるので、多くの場合、配偶者に相続税はかかりません。
      • (イ) しかし「妻→子」の相続では、相続税評価額1億円全部が課税価格に含まれ、また「夫→子」とする場合でも同様に1億円全額が課税価格に含まれ、相続税がかかります。
    2. (2) そこで「配偶者居住権」を活用し、配偶者が「配偶者居住権」を、子が「配偶者居住権付所有権」を相続し、「配偶者居住権」の価額が6,000万円で「配偶者居住権付所有権」の価額が4,000万円だとすれば、妻の相続分に課税価格6,000万円が含まれても配偶者控除内であれば相続税はかからず、子の相続分に課税価格4,000万円が含まれて課税されるだけとなります。
      • (ア) その後、妻が死亡すると「配偶者居住権」は消滅し、子の「所有権」は配偶者居住権の制約から外れ、子の財産価額は6,000万円分増加します。
      • (イ) 妻から子への相続の場合に、この増加分を相続税の課税対象としていないので、相続税対策として有効な手段となり得えます。
    1. (3) すなわち、一次相続で「配偶者居住権」を適用すれば、二次相続で節税することが可能となるということです。
      • (ア) 一次相続で、配偶者は「配偶者居住権」を税額の軽減措置により、相続税の課税無くして取得できる。そして配偶者が死亡すると「配偶者居住権」は消滅するので、子が取得した所有権は制約の無い完全な所有権となる。
      • (イ) 二次相続で、配偶者の死亡によって「配偶者居住権」は消滅するので、「配偶者居住権」は相続人の子が取得する相続財産には含まれず、結局、子は課税無しで土地や建物の完全な所有権を獲得できることになる。
      • (ウ) すなわち「配偶者居住権」消滅は、それを構成する「配偶者居住権」と「敷地利用権」が消滅するので、二次相続では相続税の負担がない。
      • (エ) 但し、次のような理由で配偶者居住権が消滅した場合は、配偶者から所有者へ居住権部分の贈与があったとみなされ、贈与税が課税されます。
        •  a)存続期間の中途で配偶者と所有者の合意解除で消滅した場合
        •  b)配偶者が配偶者居住権を放棄した場合
        •  c)所有者による消滅の請求があった場合(民法1032Ⅳ、使用収益の違反、無断増改築、第三者の無断使用・収益)
        • ※【相続税法基本通達9-13の2】(配偶者居住権の合意等による消滅)
        •   配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意、若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合、又は民法第1032条第4項(建物所有者による消滅の意思表示)の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む)の所有者(以下9-13の2において「建物等所有者」という)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として当該建物等所有者が、その消滅直前に当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益、又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする(令元課資2-10追加)
          •  (注) 民法第1036条(使用貸借及び賃貸借の規定の準用)において、準用する同法第597条第1項及び第3項(期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了)並びに第616条の2((賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了))の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する
        •  d)次のような場合は、贈与にはあたらず贈与税は課税されません
          •  1) 相続時に設定していた存続期間が満了した場合(① 配偶者が死亡した場合、② 配偶者が配偶者居住権存続期間(有期で設定の場合)が満了時に生存していた場合)
          •  2) 建物の滅失によって配偶者居住権が消滅した場合
    1. (4)
    2. (4)<居住建物の所有者から所有権部分の贈与があった場合>は、所有権の受贈者に贈与税課税がされる(課税価額は配偶者居住権付所有権の評価額)。
    3. (5)
    4. (5)<配偶者より先に居住建物の所有者が死亡した場合>は、所有者の相続人に相続税が課税される。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

相続税のきほん(その6)

2023.10.23

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、相続税のかからない財産についてです。

相続財産から差し引くことができる「債務」と「葬式費用」

差し引くことができる債務

被相続人の債務は、相続財産の価格から差し引きます

●借入金

●未払金(未払いの入院・治療費)

●被相続人が納めなければならなかった税金で、まだ納めていないものなど(住民税・所得税・固定資産税など)

 

控除できる葬式費用

被相続人の葬式に対して相続人が負担した葬式費用は、相続財産の価額から差し引かれます

●葬式についてのお寺などへの支払い(戒名代・読経代など)

●火葬に要した費用

●葬儀社、タクシー会社などへの支払い、心づけ

●通常の葬式等に伴う費用で相当と認められるもの(お通夜、告別式と同時に行った初七日法要の費用など)

 

【葬式費用に含まれないもの】

✓墓地などの購入費用

✓香典返しの費用

✓葬儀終了後の法要(初七日・四十九日など)に要した費用

 

次回からは、相続財産の評価方法についてお話しします。

相続税のきほん(その5)

2023.10.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、相続税のかかる財産・かからない財産についてお話しします。まずは相続税のかかる財産に含まれるものを確認しておきましょう。

 

①被相続人が亡くなった時点において所有していた財産

●土地・建物(借地権含む)

●有価証券(株式や公社債など)

●預貯金・現金など ※名義預金:被相続人の財産で家族名義になっているもの

●車・家財道具一式

●絵画・骨董・宝飾品

●金

●ゴルフ会員権・リゾート会員権・貸付金・特許権

●その他、金銭に見積もることができるすべての財産

●日本国外に所在する財産

 

②みなし財産

●被相続人の死亡に伴い支払われる生命保険金(被相続人が負担した保険料に対応する部分に限る)

●被相続人の死亡に伴い支払われる死亡退職金 ※ただし、一定の金額までは非課税となります

〈 非課税額の算出方法 〉

500万円 × 法定相続人の数

 

③相続時精算課税制度の適用を受けて贈与された財産

●贈与をした当時の価格を加算

 

④被相続人から相続開始前3年以内に贈与された財産

●被相続人から相続などにより財産を取得した人が、被相続人から亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産は、相続税の課税対象(上記③を除く)

●基礎控除額(110万円)以内の贈与も、相続税の課税対象

 

【問題】

長男が父死亡の2年前に贈与を受けた財産(金100万円)は?

課税対象になる

が父死亡の2年前に贈与を受けた財産(金100万円)は?

課税対象にならない

相続税のきほん(その4)

2023.10.9

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

さて、相続税のきほん(その1)から(その3)まで見てみると、配偶者がすべて相続するのが一番お得に思えますよね。ところがそうではないケースも多いので確認しましょう。

 

妻の相続時(二次相続)に起きること

①夫婦の財産が合算され、税率もアップ

一次相続・・夫の財産のみ

二次相続・・夫の財産+妻の財産

②基礎控除額がひとり分なくなる

一次相続・・基礎控除額4,800万円

二次相続・・基礎控除額4,200万円

③配偶者の税額軽減の適用はない

 

 

このことから、配偶者がどのくらい相続するかによって、一次相続と二次相続の納税額合計が変わってきます。一番お得なパターンは、税理士に次のようなシュミレーションを出してもらうのが良いでしょう。

相続税のきほん(その3)

2023.9.22

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

さて、配偶者がすべて相続するのは一番お得でしょうか?

今回は、配偶者の税額軽減についてお話しします。

配偶者の税額軽減とは?

配偶者が相続する際には、優遇措置がある

相続により配偶者が取得した財産が、①1憶6,000円を超えない場合、もしくは②法定相続分相当額である場合

いずれか多い額まで相続しても、配偶者の相続税の負担はゼロ円になります。

 

それでは、具体例で見てみましょう

①1憶6,000万円 ②法定相続分相当額 5,000万円

【配偶者はいずれか多い額まで相続しても相続税はかからない】

 1億円を相続する配偶者には、相続税はかかりません

 

①1憶6,000万円 ②法定相続分相当額 2憶円

【配偶者はいずれか多い額まで相続しても相続税はかからない】

4億円を相続する配偶者には、相続税がかかります

 

配偶者の税額軽減」3つの条件

配偶者の税額軽減を受けるには、次の条件を満たしていることが必要

①配偶者は婚姻の届け出をしていること(×内縁の妻)

②相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立していること

③申告書に配偶者の税額軽減を受けることを記載し、必要書類を添付し期限内に相続税の申告をすること

令和で増えた相続の「期限」、ご存知ですか?

2023.10.2

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

さて、相続の「期限」を皆さんはいくつご存知でしょうか。令和に入ってから実は相続の期限が急に増えています。その背景には、相続手続きが完了していないことが大きな原因となっている所有者不明土地問題解消に向けて、政府の取り組みが本格化したことがあります。以前から設けられているものとあわせて、相続の期限と注意点を整理しておきましょう。

■相続の期限と注意点

期限 注意点
相続放棄の申述 相続開始と相続人であることを知ってから3カ月以内 相続放棄を放置すると単純承認とみなされる
所得税の準確定申告 相続開始から4カ月以内 死亡日までの所得税を申告・納付
青色申告書承認申請書の提出 相続開始から4カ月以内 事業を承継した人が青色申告をする場合に税務署へ提出(※1)
相続税の申告・納付 相続開始から10カ月以内 申告・納税を放置するとペナルティの延滞金や加算税が加算
相続登記 NEW

令和6年4月1日施行予定

相続で不動産を取得したことを知ってから3年以内 相続登記を放置すると10万円以下の過料の対象

施行前に相続した分にもこのルールは適用(3年間の猶予期間あり)

遺産分割協議 NEW

令和5年4月1日施行

相続開始から10年

10年経過した後の遺産分割では、原則として法定相続分により遺産分割

10年経過した後は特別受益や寄与分を主張できない

施行前に発生した相続にもこのルールは適用(※2)

(相続開始前にさかのぼる期限)

遺留分 NEW

令和元年7月1日施行

相続人に対する特別受益としての生前贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限り遺留分の計算に含める 施行前に発生した相続には適用されない(10年の期限はない)

遺産分割協議では、このような特別受益の10年の期限はない

(※1)

相続開始が9月1日~10月31日の場合…その年の12月31日までに提出

相続開始が11月1日~12月31日の場合…翌年2月15日までに提出

(※2)

施行後の混乱をさけるための経過措置として、少なくとも改正法施行日から5年の猶予期間や、相続開始から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたときなどには、引き続き具体的相続分により遺産分割をすることができる例外措置も設けられています。

 

新しく設けられた期限は少し考え方が難しいので、実際に判断が必要なときは専門家へのご相談をお勧めします。

相続税のきほん(その2)

2023.9.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

それでは相続税の計算の流れを具体例で見てみましょう。

(1)課税遺産総額を算出する

正味の相続財産 1億円

法定相続人の数 3人

基礎控除額 4,800万円 =3,000万円+(600万円×3人)

課税遺産総額:1億円4,800万円5,200万 ※この額に相続税がかかります

 

 

(2)課税遺産総額を法定相続分で分ける(取得価格の算出)

 

相続税の税率は、相続税の税額速算表で確認しましょう。

 

相続税の税額速算表

注)各人ごとに、法定相続分に応じた取得金額に応じて税率をかけ、控除額を差し引きます

 

(3)各人の法定相続分に応じた取得価格に税率をかけて、各人ごとの税額を算出し、合計する

 

 

 

(4)実際に各人が負担する相続税額を出す

 

このように相続税は相続人各人ごとの税額を算出した後に相続税の総額を算出します。間違いやすいポイントですのでご注意ください。

次回は、相続税についての優遇措置についてお話しします。

相続税のきほん(その1)

2023.9.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回からは相続税のきほんのお話しです。

「相続税のきほん」3つのテーマ

相続税の計算の流れを体験しよう

ポイント… 「基礎控除額」と「課税遺産総額」

配偶者がすべて相続は一番お得?~配偶者の税額軽減~

ポイント… 一次相続と二次相続の両方を考える

相続税のかかる財産とかからない財産がある?

ポイント… 正しい相続税の対策を考える

 

それでは相続税の計算の流れをみてみましょう。

相続税とは

  • 遺産総額が基礎控除額を超えなければ相続税はかからない
  • 相続税を負担するのは、亡くなった人から財産を受け取った人
  • 遺産の総額法廷相続人の人数を把握できなければ、相続税がどれだけかかるか分からない

 

【参考】相続用語の確認

被相続人 亡くなった人のこと(相続される側の人)

相続人:被相続人を相続する人のこと

法定相続人:民法の規定により相続人となる人のこと

遺贈:遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与すること

 

相続税は、相続財産のどの部分に課税されるのでしょうか。考え方は次の図の通りです。

「課税遺産総額」から相続税の総額を計算します

 

ポイントとなる基礎控除額の算出の仕方を表にまとめてみました。

3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続財産が基礎控除額を超えた場合に相続税がかかる

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

 

【参考】法定相続人は何人いるの? 【「相続のきほん」講座の復習  】

  • 1. 配偶者は必ず相続人になります
  • 2. 血族相続人は相続になる順位が決められています
  •  先の順位に該当する人が誰もいない場合には、次の順位に該当する人が、順繰りに相続人になります
  • 3. 養子がいる場合の法定相続人の注意点
  • 4. 法定相続人のうちに養子がある場合は、基礎控除額に制限があります
  • (1)実子がいる場合・・・基礎控除に数える養子は1人まで
  • (2)実子がいない場合・・・基礎控除に数える養子は2人まで
  • ※養子縁組をして基礎控除額を増やすには制限があります

 

次回からは相続税の計算の流れについてお話しします。

 

 

「配偶者の居住の権利」を考える(その3)

2023.9.1

今回は前回説明した「配偶者居住権」の評価について話します。それは国税庁の通達で指定された評価方法によるので、やや複雑で難しいのですが、一般的にはこのような遣り方で行われることを知っておくだけで結構です。詳しくは専門家にお尋ね下さい。

 

  1. 5 配偶者居住権を設定する場合は建物を「配偶者居住権」と「居住建物の所有権」に、土地を「敷地利用権」と「居住建物の土地の所有権」に区分し、配偶者が取得する自宅不動産の権利をそのうちの「配偶者居住権」と「敷地利用権」とし、それにより<配偶者居住権の評価>は建物の居住権等と敷地利用権の評価となります
    1. (1) <「配偶者居住権の相続税評価」(A) =「居住建物の相続税評価」(B) -「居住建物の所有権の相続税評価」(F) >となる。
      • (ア) 「配偶者居住権の相続税評価」(A) =「居住建物の相続税評価額」(B) - {(B) × (「(耐用年数-経過年数)(C) -存続期間(D)」/「(耐用年数-経過年数)」(C) }× 「存続期間に応じた法定利率による複利現価率(E)(相続税法23条の2Ⅰ・Ⅱ) ABB × (C-D) /C× E
        • a)「居住建物の相続税評価額」(B)=「固定資産税の評価額」である。
        • b)「居住建物の所有権の相続税評価」(F) =(B × (C-D) /C× E
        •  1) (耐用年数-経過年数)(C)=「残存耐用年数」は、自宅使用の場合の(家事用)耐用年数を算出し(家屋の構造の法定耐用年数(事業用)を1.5倍)、その耐用年数から経過した「築年数」を差し引く
        •  2) 「存続期間」(D)は、自ら何年住むかで配偶者居住権の年数を設定し、死ぬまで住むとすれば厚労省の平均余命年数を参考にする。
        •  3) 「複利現価率」(E)は、配偶者居住権の存続年数に対応するもの。
      •  (イ) 【参考事例(転載)】(相続財産)現金80,000,000円及び家屋の評価額:10,000,000円、木造家屋の耐用年数:33年(業務用耐用年数:22年×1.5)、経過年数:10年、存続年数:23年、複利現価率:0.744、上記家屋の敷地の評価額20,000,000円。
        •  a)家屋の所有権の評価額 =10,000,000円×(23-10)/23×0.744=4,205,217円。
        •  b)家屋の配偶者居住権の評価額 =10,000,000円-4,205,217円=5,794,783円

 

    1. (2) <「敷地利用権の相続税評価」(G)=「居住建物の敷地に供される土地の相続税評価額」(H) -(H) ×「存続期間に応じた法定利率による複利現価率」(E)>
      • (ア) 「居住建物の土地所有権の相続税評価」=「居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額」-「敷地利用権の相続税評価」
        • a)土地の相続税評価額=20,000,000円 × 複利現価率(0.744)=14,880,000円
        •  1) 「土地の相続税評価額」は、国税庁が定める「路線価」に基づいて算出する。
        •  2) 路線価の設定がない地域は、固定資産税の評価額に,国税庁が定める倍率表に基づいて算出する。
        • b)土地の配偶者居住権の評価額 =20,000,000円 -14,880,000円=5,120,000円
    1. (3) 上記の事例で配偶者居住権の評価額は、 <家屋の所有権の評価額:4,205,217円>、<家屋の配偶者居住権の評価額:5,794,783円>、<土地の所有権の評価額:14,880,000円>、<土地の配偶者居住権の評価額:5,120,000円>となり「配偶者居住権」の設定で下記が算出されました。
      • (ア) 「配偶者居住権の評価額」 = 家屋:5,794,783円 + 土地:5,120,000円 = 10,914,783円
      • (イ) 「所有権の評価額」 = 家屋:4,205,217円 + 土地:14,880,000円 =19,085,217円
      • (ウ) 相続財産を配偶者と子で、法定相続分で分割した場合の相続価額は次の通りとなる。
        • a)
          相続人 配偶者
          不動産 10,914,783 19,085,217 30,000,000
          現金 44,085,217 35,914,783 80,000,000
          55,000,000 55,000,000 110,000,000

          (単位:円)

        • b) 改正前は配偶者が住宅を相続した場合(合計3,000万円)に取得できる現金は2,500万円であったが、改正後は配偶者が現金約4,400万円を取得できるようになった。
    1. (4) 「小規模宅地等の特例」の特定居住用地に該当し適用が可能です。
      • (ア) 「小規模宅地等の特例」により被相続人の住宅用地を配偶者が相続をした場合、330㎡までを80%減額することができます。
      • (イ) 被相続人と同居する子が相続する場合は特例の対象となり、上記事例では子の相続で19,085,217円×0.8=1,600万円の減額となります。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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