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~相続手続きに便利な「法定相続情報制度」~

2022.8.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

法定相続情報制度をご存知でしょうか?

相続手続では、お亡くなりになられた方の戸籍謄本等の束を、銀行や証券会社など相続手続を取り扱う窓口に何度も出し直す必要があります。代襲相続等がある場合には、窓口での相続人の確認に時間がかかり、手続きに日数を要することもあります。戸籍謄本等の取得には費用もかかり、特に改製原戸籍は高額なことが多いというデメリットもあります。

法定相続情報証明制度は、そんな面倒な手続きやコストを解消できる便利な制度です。登記所(法務局)に戸除籍謄本等と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官からその一覧図に認証文を付した写しが『無料』で交付されます。その後の相続手続は、この法定相続情報一覧図の写しを利用いただくことができ、戸除籍謄本等の束をその都度出す必要がなくなります。

相続税の申告書に添付する書類にも、この法定相続情報一覧図を利用できます。ただし、次の2点が必要とされていますので、ご利用の際はご注意ください。

A.系統図方式で記載されていること

相続税の計算においては、相続人の数のほか、相続分も明らかにしなければ適正な計算ができないことから、法定相続情報一覧図の写しの中でも、被相続人と各相続人の関係まで明らかになる系統図方式で記載されたものであることが必要とされています。

B.子の続柄は、実子又は養子の別が記載されていること

相続税の計算上、相続人の数にカウントされる養子の数に制限があるため、単に「子」という表示では正確な計算はできないことから、相続税の申告書に添付する法定相続情報一覧図の写しは実子と養子の別が記載されたものであることが求められています。

(養子の場合、養子の戸籍の謄本又は抄本の添付が求められています。)

 

会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その18)

2022.8.1

今回から、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)の「民法の遺留分に関する特例」について話します。

 

【Ⅵ】 「民法の遺留分に関する特例」(円滑化法3条~10条)

 

  1. 1 (その12)から(その17)まで「事業承継税制」(中小企業の経営承継に伴う贈与税・相続税の納税猶予及び免除)について説明しましたが、そのほかに「円滑化法」は民法上の遺留分の問題に対応する「特例法」を整備しました(令和3年改正)。
    1. (1) 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に対する相続できる遺産の最低保障額を言い(民法1042条1項)、遺言や生前贈与などによる相続分が遺留分を下回った場合に、多く受け取った相続人から遺留分侵害額を請求できる権利で、「遺留分侵害額請求権」と呼ばれています(令和2年の相続法改正)。
    2. (2) 生前贈与等により、事業後継者に自社株式等の事業資産を取得(相続)させたが、他の推定相続人から遺留分侵害額請求を受ければ、事業承継計画が破綻するので、それを防止するための施策として「民法の遺留分に関する特例」が設けられました。
      • (ア) 「民法の特例」を活用すると、<非上場株式>が先代経営者から後継者に贈与等される場合に、後継者及び先代経営者の推定相続人全員が合意し、<① 遺留分算定基礎財産から除外除外合意)><② 遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定固定合意)>を締結することができます。

        • a) 後継者が他の相続人との話し合いにより「除外合意」をすれば、全株式を後継者に引き継ぎその散逸を防ぐことができ、場合によっては自社株式以外の財産についての合意もすることもできます。
        • b) 「固定合意」は、相続財産の自社株式が非上場株式(未公開株式)で評価が難しく、また相続開始までに変動の可能性もあり、遺留分侵害額請求による不測の事態の発生を避けるために、その評価額を合意時に固定して置くものです。
      • (イ) 更に、株式の場合は<①>や<②>と一緒に、<③ 自社株式以外の財産に関して付随合意)>を行うこともできます。
        • a) 「付随合意」を締結することにより、後継者が先代経営者から生前贈与された自社株式以外の事業用財産(例えば、会社所在の不動産、事業用機器、現預金など)を遺留分の対象から除外したり、また、後継者以外の相続人が贈与を受けた財産を遺留分の対象から除外するなどの合意ができます。
        • b) <③>だけを単独で締結することはできません。
      •  (ウ) なお、上記の<会社経営者の株式>のほかに<個人事業者の業務用財産>についても、ほぼ同様の手続が認められていますので次回以降に説明します。
    1.  (3) 「民法の特例」は、「事業承継税制の特例」との併用が可能ですが、それぞれ要件や申請手続きなどが異なります。
      •  (ア) 「事業承継税制の特例」は、生前贈与のほか相続や遺贈でも適用できるのに対し、「民法の特例」は生前贈与に限られますが、贈与時に旧代表者が代表を退任している必要はありません。
      •  (イ) また「事業承継税制の特例」では、最大3人の後継者まで適用できるのに対し、「民法の特例」では後継者1人に限られ、また旧代表者以外からの贈与は「民法の特例」の対象とはなりません(「その15」参照)。
    2.  (4) 「民法の特例」により、「推定相続人全員の合意」で上記<①><②><③>を締結し、その合意の範囲で「遺留分侵害額請求」を適用しないようにする為には「経済産業大臣の確認」(円滑化法7)及び「家庭裁判所の許可」(同法8)を必要とします(円滑化法4Ⅰ①)。
      •  (ア) 「経済産業大臣の確認」は合意から1か月以内に中小企業庁に申請し、家庭裁判所の許可は、当該確認から1か月以内に申し立てる必要があります。
      •  (イ) なお、贈与から合意までの期間については定めがなく、10年前の贈与や数年間に及ぶ贈与についても合意は可能です。
    3.  (5) なお、「円滑化法」の「遺留分に関する民法の特例」に似た「遺留分の放棄」(民法1043条)の制度があります。
      •  (ア) 被相続人の生前でもそれぞれの相続人が家庭裁判所の許可を得れば遺留分を放棄することができ、また被相続人の死後には自由に放棄ができます。
      •  (イ) しかし「民法の特例」の場合は、相続人毎に意向が分かれることがないので「遺留分の放棄」よりも利点があると言えます。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

令和4年度税制改正大綱が決定 ~相続税・贈与税について変わるポイント~

2022.7.28

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

令和3年12月10日に、例年通りの日程で令和4年度税制改正大綱が決定し発表されました。注目されていた「相続税と贈与税の一本化」については、具体的な改正は来年度以降に持ち越し、住宅取得等資金贈与の非課税措置は2年延長となりました。それぞれの内容を確認しておきましょう。

 

■相続税と贈与税の一本化は来年度以降に持ち越し

「相続税と贈与税の一本化」は、相続税を節税するために生前贈与を活用するのが難しくなるのではとの見方もありましたが、令和4年度税制改正大綱では「本格的な検討を進める」記述にとどまり、具体的な改正は見送りとなりました。

 

「今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」(令和4年度税制改正大綱より)

 

「相続税と贈与税の一本化」がどのような内容になるかは気になるところですね。

年間110万円までなら非課税枠(基礎控除額)がある「暦年課税」制度はご存知の方も多いでしょう。この非課税枠を活用すれば、下の世代へ贈与税の負担なく資産を渡すことができます。この暦年課税制度を活用しての節税対策のやりすぎは良くないという考えから、相続税と贈与税を一体として税金を計算する仕組みへの移行が検討されているようです。

現行の暦年課税制度では、相続発生前の3年以内に行われた贈与財産は相続財産に含められ、相続税の課税対象となります。来年度以降の税制改正においては、この3年という期間を10年とするドイツ、15年とするフランスといった諸外国の制度にならい、見直されることも考えられます。

また相続時精算課税制度では、2,500万円まで贈与税がかからない非課税枠がありますが、相続の際にはこの制度を使っての贈与財産は、何年前かにかかわらずすべて相続税の課税対象となります。このように贈与財産にも相続税を課税できる相続時精算課税制度を、贈与税の原則的な計算方法とする可能性もあるようです。

 

■住宅取得等資金の贈与の非課税措置は2年延長

令和4年度税制改正大綱では資産税にかかわる項目として、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が2年延長となり、令和5年12月31日まで適用可能となります。非課税限度額は省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅は500万円とそれぞれ500万円引き下げられ、内容についても若干の見直しがなされています。

今後の改正の可能性もふまえ、相続の準備は早めに進めておきたいですね。

 

親世代からはじめる相続 ~円満相続の最短ルート~

2022.7.21

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

どのご家庭もいつか迎える相続ですが、相続の話題、切り出すのは親世代と子世代どちらからが良いと思いますか?個人的には、親世代から切り出すのが良いと思います。さらには円満相続への最短ルートとも思いますので、今回はその理由からお話しします。

 

■子世代から相続の話題を切り出すと起きがちなこと

相続の話題はとても繊細ですので、子世代からは触れづらいものです。話を切り出すことで、「親子関係が険悪になるかもしれない」、「財産が欲しがっていると思われるのでは」と心配をされるでしょう。しかもこのような心配をしている事態は、ちょっとした言い方次第で実際に起きてしまうようです。

「大変なことになるのは分かっていたが、親には切り出せなかった…」と、準備ができないまま相続を迎えられる方も多いです。その方々が相続を迎えるまでの経緯はよく似ていて、親世代が元気なうちは「まだ先の話なのに嫌な思いをするだろう」、親世代の体力の衰えが出てきてからは「こんな状況ではとても話せない」と考えながら、相続を迎えています。

また親世代も、子供から相続の話を振られると少なからずショックを受ける方が多いです。「相続の準備が必要とは分かっているが、自分が死ぬのを待たれているよう」と感じるようです。

このように子世代から相続の話題を切り出すと、お互いに気持ちよく相続の準備を始めるのはなかなか難しいといえます。

 

■相続は親世代が準備をはじめ、子世代と共有する

円満相続を迎えているご家族は、親世代が相続の方針を決めて対策をしています。さらに子世代と共有することで、相続後の思いがけないトラブルもないように準備をしています。

円満相続に向けて、まずは財産の洗い出しから取りかかりましょう。次に、自分亡き後の心配事が何かを洗い出します。残される家族の今後の生活に不安はないか、遺産の分け方で揉め事が起きないか、必要な方は相続税の負担や承継する事業等についても考えてみましょう。その上で、とるべき対策を講じていきます。

そしてぜひ、想いを実現する遺言書を作成しておきましょう。

 

もし対策が必要な場合には、専門家の手を借りることも考えてみてください。何が最適な対策か判断できない場合には、書籍等で十分な知識を得ても解けない、専門家の知識と経験が必要な難しい課題といえるでしょう。一緒に考えてくれる相談先を決めるのも、大切な相続の準備です。

 

早いものでもう7月、今年も半分が過ぎました。8月にはお盆を迎えます。ご家族で集まる機会にむけて、ぜひ相続について考えてみましょう。

令和4年の路線価発表! ~2年ぶりの上昇~

2022.7.14

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

7月1日に公表された今年分の路線価、みなさんはもう確認されましたか?路線価は毎年1月1日時点の道路に面する土地1㎡当たりの価格を評価したもので、その年の相続税や贈与税を算定するうえで基準となる指標です。

 

■全国平均の路線価は2年ぶりの上昇

今年の路線価は全国平均で昨年比0.5%上昇(昨年は0.5%下落)となり、2年ぶりに上昇に転じました。都道府県別の路線価では、20都道府県で上昇(昨年は7府県)。上昇率のトップは北海道で、再開発が進む札幌市の伸びが大きく昨年比4.0%の上昇となりました。次いで福岡県3.6%、宮城県2.9%、沖縄県1.6%の上昇でした。

一方、下落したのは昨年比マイナス1.3%の和歌山県、次いで愛媛県1.1%、群馬県1.0%の順に27県(昨年は39都府県)でした。

路線価日本一は37年連続となる東京都中央区銀座5丁目の鳩居堂前で、1㎡当たり4,224万円。とはいえ昨年比1.1%の下落となり、コロナ禍前に4年連続の最高額更新をしたものの、今年で2年連続の下落となりました。新型コロナウィルスの影響が徐々に緩和されたことが起因し、路線価の全国平均は上昇しましたが、一方でインバウンド需要の影響が大きい地域では依然として下落が続いているようです。

 

■埼玉県内の路線価も上昇

埼玉県内の路線価も昨年より平均0.4%の上昇(昨年は0.6%減少)となり、2年ぶりに上昇に転じました。埼玉県内の路線価トップは、今年も大宮区桜木町2丁目の大宮駅西口駅前ロータリーで、1㎡当たり440万円。昨年比3.3%の上昇と2年ぶりにプラスに転じました。浦和区高砂1丁目の浦和駅西口駅前ロータリーは、1㎡当たり196万円。こちらも昨年比3.2%の上昇となっています。

都心に近く元々需要の高い県南地域が回復してくるとともに、郊外もリモートワークの浸透や移住の拡大により堅調で、東松山市の市道23号線(東松山駅前)は3.7%上昇と大きく伸び、川越市の川越駅東口駅前広場も0.9%上昇しました。

 

順位 署名 最高路線価の所在地 路線価 昨年比
1 大宮 さいたま市大宮区桜木町2丁目 大宮駅西口駅前ロータリー 440万円 3.3%
2 浦和 さいたま市浦和区高砂1丁目 浦和駅西口駅前ロータリー 196万円 3.2%
3 川口 川口市栄町3丁目 駅前産業道路 194万円 0.0%
4 西川口 川口市川口1丁目 川口駅東口駅前ロータリー 184万円 0.0%
5 川越 川越市脇田町 川越駅東口駅前広場 107万円 0.9%

 

 

変わってきた成年後見制度 ~成年後見人には身近な親族を~

2022.7.7

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

少し前になりますが平成31年3月18日に開催された有識者会議で、最高裁判所は成年後見人等には身近な親族を選任することが望ましいという考えを明らかにしました。後見人による財産の横領等の被害が増えたことを背景に、後見人には親族以外の第三者として専門家が選任される傾向にある中で、この見解表明はニュースでも話題になりました。

その後の成年後見制度の変化を、今年3月に最高裁判所が公開した「成年後見関係事件の概況 令和2年1月~12月」からみてみましょう。

 

■成年後見の利用は増えている

成年後見関係の申立件数は、昨年に比べて約3.5%と増加しました。ただ、急速に進む高齢化に見合う程には、成年後見制度の利用は進んでいないようです。

 

■申立動機で最も多いのは、預貯金等の管理・解約

成年後見関係の申立原因は、やはり認知症が最も多く全体の64.1%。申立の動機として最も多いのが預貯金等の管理・解約で、全体の37.1%を占めます。

今年の2月18日に全国銀行協会が発表した考えでは、認知症等による口座凍結への対応は成年後見制度の利用が原則としています。このことからも、今後も認知症等による口座凍結が成年後見制度利用の主要動機となることが見込まれます。

 

■親族は成年後見人になれる?

親族以外の専門家等が成年後見人等に選任されたものは、全体の80.3%。親族等が選任されたものは全体の19.7%にとどまりました。親族が後見人になるのは難しいように思える結果ですが、そうとも限らない様です。令和2年2月からのデータですが、成年後見人等の候補者として親族が記載されていたのはわずか23.6%。「親族が後見人になるのは難しい」という認識から、そもそも申立の際に親族を候補者として記載していないという背景があるのかもしれません。認知症による財産管理の問題には事前の対策が大切なのはもちろんですが、それぞれの制度の変化にも注視していきたいですね。

 

 

《まどか円満相続情報マガジン 令和3年冬第14号掲載》

会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その17)

2022.7.1

今回は、前回に引き続き【Ⅳ】「非上場株式」の「①<株主区分>」の「同族株主」「同族株主以外の株主」(非同族株主)の評価方法について説明します。

 

【Ⅴ】 「同族株主」の意義、同族株主間の相続・贈与に適用される評価方法

 

  1. 1 「会社を支配する一族」とは、会社の株式の50%超を持っている一族(「同族株主グループ」)などを言い、原則的評価方式により株式の評価額を計算し、会社を支配できない「少数株主グループ」は「特例的評価方式」(配当還元方式)によります。少数株主グループにとって、株式は配当金を受け取れる価値くらいしかないのです。
  2. 「同族株主」とは、判定時におけるその会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令第4条 (同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係のある個人または法人をいう)の有する議決権割合の合計が30%以上である場合におけるその株主とグループ構成員をいいます(評基通188(1))。

    1. (1) 一つの株主グループの議決権割合合計が50%超である場合は、他に同割合合計が30%以上のグループが存在しても、そのグループは同族株主になりません。
    2. (2) なお、上記によっても同族株主がいない場合は、15%以上のグループが同族株主等に該当することになります。
      • (ア) その割合は、議決権の割合で判定し無議決権株式は含めない)、「自己株式」は、発行済株式数(分母)から除かれる(評基通188-3)。
      • (イ) 株式の評価において<同族関係者の範囲>とされるのは、次の通りである。
      •  a)同族関係者となる個人
      •   ① 株主の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)
      •   ② 株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
      •   ③ 株主等(個人に限る)の使用人
      •   ④ 株主等(個人に限る)から受ける金銭等により生計を維持している者
      •   ⑤ 上記②~④の者と生計を一にするこれらの者の親族
      •  b)同族関係者となる法人
      •   ① 株主の1人が他の会社の発行済株式の50%超を有する場合の当該他の会社(株主が個人である場合には同族関係者となる個人を含む(以下同じ))
      •   ② 株主の1人及び上記①の会社とで他の会社の発行済株式の50%超を有する場合の当該他の会社
      •   ③ 株主の1人及び上記①、②の会社とで他の会社の発行済株式の50%超を有する場合の当該他の会社
      • (ウ) <親族以外の株主から株式を買い取る場合>は、財産評価基本通達による評価額よりも低額であるときは、買い受けた同族株主に贈与税が課税されるリスクがある(相法7、相基通9-2)。
    3. (3) その他の株主は、すべて「同族株主以外の株主」(非同族株主)となります。

  3. 3 株主(同族(支配株主)、非同族)の自社株の評価方法

    1. (1) 「同族株主」(同族会社のオーナー及びその一族)と判定され、支配株主となった場合保有目的が支配権の行使)は、原則的評価方式類似業種比準方式純資産価額方式等)による評価額となります(下記の区分による(財産評価基本通達178))。

      • (ア) 例えば、1) 社長の株式を後継者の長男へ贈与する場合 2) 会長である兄の株式を、弟の社長が買い取る場合 3) 社長が従業員の株式を買い取る場合。
      • (イ) 「純資産価額方式」は、資産から負債を引いた純資産額を株式数で割って評価。
      • (ウ) 「類似業種比準方式」は、市場価格で決まる上場企業の株価を参考にして実態に見合った評価をするので、純資産価額よりも株式の価値が低い場合が多い評価引き下げの対策として、業種選択、従業員数の削減の方法がある。
    2. (2) 非同族株主少数株主、同族でない株主)の場合、例えば社長の株式を従業員や従業員持株会へ売却する場合などの評価方法は、買取人が下記の4類型に該当すれば、配当還元方式保有目的が配当の受取りで評価する。

      • (ア) 同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式

      • (イ) 中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満である者の取得した株式(評基通188(2))
      •  a)課税時期において、評価会社の役員(社長、理事長等)である者及び相続税等の法定申告期限までの間に役員となる者を除く。
      •  b)「中心的な同族株主」とは、同族株主の1人と配偶者などの近しい親族等だけで、25%以上の議決権を有する場合のその株主をいう(評基通188(2))。
      •   1) 「近しい親族等」とは、①配偶者、②直系血族、③兄弟姉妹、④1親等姻族、⑤株主の1人及び①~④までの者が同族関係者である会社を指す。
      •   2) これらの者が有する議決権の合計数がその会社の議決権総数の25%以上である場合をいう。
      •  c)<取得者が中心的な同族株主に該当するか否かの判定>は、株式移動後の株数で、取得者を本人とし、各人別に1人ずつ判定する。
      • (ウ) 同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満である場合におけるその株主の取得した株式(評基通188(3))

      • (エ) 中心的な株主がおり、かつ、同族株主のいない会社の株主のうち、課税時期において株主の1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%以上である場合におけるその株主で、その者の株式取得後の議決権の数がその会社の議決権総数の5%未満であるもの((2)の役員である者及び役員となる者を除く)の取得した株式(評基通188(4))

 

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

どう対応する?相続発生後の口座凍結 ~「預貯金の仮払い制度」~

2022.6.23

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

みなさんは「相続が起きると口座が凍結される」という話を聞いたことがありますか?口座が凍結されると、窓口やATMでの入出金ができなくなる他、振込や振替も制限されます。

口座は凍結されるのは金融機関が口座名義人の死亡を知ったときですが、役所から金融機関に死亡の連絡がいくわけではありません。実際に口座凍結されるのは、金融機関窓口へ相続手続きで使用する書類をもらいに行ったときなど、ご家族が死亡を伝えたときです。思いがけず口座が凍結され急ぎの支払などに困らないように、対応方法を確認しておきましょう。

 

■遺言書や遺産分割協議書で預貯金の払戻し手続きを行う

有効な遺言書があれば、遺言執行者が単独で払戻し手続きを行うことができます。遺言書がない場合には、法定相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書と添付書類を提出して払戻し手続きを行います。ただ、遺産分けの話し合いがまとまるまでは、それなりの日数がかかるものです。万が一、話し合いがまとまらず家庭裁判所へ持ち込まれる事態となれば、払戻しができるのは数か月後、数年後となってしまうかもしれません。

 

■「預貯金の仮払い制度」を利用する

上記のように遺言書がなく遺産分割協議を経なければならない場合でも、葬儀費用や相続人の当面の生活費といった急ぎの資金に困ることがないように、新しい制度ができました。2019年7月に施行された「預貯金の仮払い制度」です。相続人全員の同意がなくても次の2つの方法で、遺産分割協議がまとまる前に預貯金の払戻しを受けることができます。

①金融機関で直接払戻しの請求をする

相続人のうちの1人が払戻し可能な額は、「相続開始時の預貯金の額×1/3×払戻しをする相続人の法定相続分」で、同一金融機関から払戻しできる額は、相続人1人につき150万円が上限です。仮払いを受けた分は、実際に相続する額から差し引かれます。

<相続人:妻、長男、次男の3人/長男が払戻しの請求をする場合>

A銀行1200万円

1200万円×1/3×1/4=100万円 → 長男が引き出せる上限額:100万円

B銀行2100万円

2100万円×1/3×1/4=175万円 → 長男が引き出せる上限額:150万円

②家庭裁判所の判断を得て払戻しを受ける

この場合は払戻し額に上限はなく、家庭裁判所が必要と認めた額の引き出しができます。ただ、家庭裁判所での手続きは手間や費用、時間もかかるうえ、その額が必要と認められる理由が必要です。相続後すぐの費用や、十分な額を確保したい場合には向かないといえます。

 

「預貯金の仮払い制度」は当面の生活費や急ぎの支払資金を確保するために新設された制度ですが、十分な額を確保するのは難しいのが実態です。新制度はできましたが、ご家族がご相続後も安心して過ごせるように、遺言書で準備をしておくことが大切ですね。

成年年齢の引き下げ ~相続はここが変わる~

2022.6.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。成年年齢の引き下げにより、相続に関しても変わる点がいくつかありますので確認をしておきましょう。

 

■遺産分割協議に参加できる年齢も、18歳に引き下げ

未成年者は遺産分割協議に参加できません。そのため相続人の中に未成年者がいる場合、相続関係によっては家庭裁判所に特別代理人を選んでもらい、未成年者に代わり遺産分割協議に参加してもらう必要があります。

これまでは遺産分割協議に参加できるのは20歳以上でしたが、2022年4月1日以降は、その時点で18歳以上であれば遺産分割協議に参加することができるようになりました。4月以降に遺産分割協議を行うのであれば、特別代理人選任の手続きが不要となるケースも考えられるでしょう。

 

■相続税の「未成年者控除」

相続人が未成年者であるとき、相続発生時から満20歳になるまでの年数1年あたり10万円が相続税額から控除される、「未成年者控除」という制度があります。2022年4月1日以降に開始した相続については、この年齢が20歳から18歳に引き下げられます。改正により、控除できる額が2年分の20万円少なくなるといえます。

 

■贈与税についても各制度で適用年齢が広がります

「相続時精算課税制度」では、現状は60歳以上の祖父母から20歳以上の子や孫への贈与という条件がありますが、2022年4月1日以降の贈与は、18歳以上の子や孫への贈与となり、2年早く適用を受けられます。

「相続時精算課税制度」の内容も確認しておきましょう。この制度を使うと2500万円までの贈与には贈与税がかかりません。ただ、この制度を利用して贈与した財産は、贈与した人の相続時に相続財産に加算されます。また、子はいるけれど孫にも贈与をする場合(代襲相続人ではない孫への贈与の場合)などは相続税が2割加算となる点、毎年110万円までは非課税になる暦年贈与が使えなくなる点も注意をしたいところです。

挙式や新居、出産や不妊治療といった結婚・子育て資金の一括贈与が1000万円まで非課税となる「結婚・子育て資金の一括贈与」制度、2022年度の税制改正大綱で贈与税の非課税措置が2023年末まで2年延長された「住宅取得等資金の贈与」制度も、20歳以上から18歳以上に引き下げられます。父母や祖父母から贈与を受けた財産(特例贈与財産)の対象年齢も同様に引き下げです。

どの制度についても、年齢の基準は贈与する年の1月1日時点ですので注意をしましょう。

 

対象となる年齢のご家族がいる場合には、相続の進め方を一度考える必要があるかもしれません。ご家族の背景や事情をふまえ、何が最適なのか専門家と相談しながら進めると良いでしょう。

相続争いのいちばんの原因

2022.6.9

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

みなさんは、相続で揉めてしまう一番の原因は何だと思いますか?「うちは家族仲が良いから揉めることなんてない」、「うちはそんなに財産はないから揉めようがない」と考えている方にとっては思いがけないことかもしれませんが、一番の原因は不動産があることです。もちろん自宅も不動産ですので、持ち家にお住まいの方は相続で揉めないための準備が必要といえます。なぜ不動産があることで揉めてしまうのか、理由を確認しておきましょう。

 

■自宅は相続人全員に平等に分けられる?

お金であれば、1円単位で相続人に分けることができます。自宅もお金と同じように、平等に分けることができるでしょうか。

相続人間で共有にする方法が思い浮かぶかもしれませんが、これはお勧めできません。共有にするということは、その不動産についての決定権が共有者全員にあるということです。例えば売却等をしたいときも、全員で意見を合わせて協力しながら進めなければなりません。共有している方に相続が起きた場合には、その相続人の方々との共有となります。将来、共有関係が複雑になっていくことで「全員で協力して」がより難しくなるおそれがでてきます。

それでは自宅をひとりへ相続させる場合、他の相続人とのバランスはとれるでしょうか。財産のうち自宅の占める割合が高いほど、自宅以外の財産でバランスをとるのは難しいものです。もし自宅以外にアパート等を所有しているとしても、それぞれ価値の違う不動産を平等に分けるのは難しいでしょう。

不動産は、安心して暮らしていくことや資産形成において大切なものですが、お金のように分けるのが難しいことから、相続の場では思いがけない争いの種になることがあります。

 

■揉めないための一番の対策は、遺言書を作成しておくこと

不動産があること以外にも、これまでの資金援助(学生時代の学費、マイホーム資金、孫の学費など)や、介護に尽くしたり、事業を手伝ってきた相続人の相続分などで揉めてしまうケースも多いです。相続人の間に、「〇〇ばかり援助してもらってきた」、「自分はこんなに動いてきたのに、〇〇は何もしてこなかった」という不満はないでしょうか。その背景には、ご家族それぞれの理由があるものです。ただこれまでの不平等との思いが、相続の場で一気に噴き出せば、争いとなってしまうでしょう。思い当たることがある場合には、対策を考える必要があります。

揉めないための一番の対策は、やはり遺言書を作成しておくことです。平等に分けることができない場合でも、「付言」で丁寧に理由や想いをのこしておくことで、争いになるリスクを減らすことができます。

遺言書があってもなお不満が残る場合には、相続の方向性を相続人に事前に伝えておくことも考えましょう。遺言書の作成とあわせて生命保険を活用することもできますが、加入できる年齢に制限もあるので早めの対応が必要です。相続後も変わらずご家族の絆をつなげように、相続も計画性をもって準備をすることが大切ですね。

 

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