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相続のきほん(その2)

2023.6.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回も引き続き「相続」のきほんについてもう少しお話しします。相続の軸となる内容ですので、しっかりおさえておきたいところです。相続は被相続人と相続人のどちらの立場かで、みえ方が変わります。

 

被相続人からみた相続

遺言を作るか作らないかにより異なる

遺言による相続・・・遺言に従った相続(遺言相続)

遺言を作らない場合の相続・・・民法に従った相続(法定相続)

 

相続人からみた相続

単純承認、相続放棄、限定承認を選ぶことができる

①単純承認・・・プラス財産とマイナス財産のすべてを受け継ぐ

②相続放棄・・・プラス財産もマイナス財産も一切受け継がない

③限定承認・・・プラス財産の範囲内でマイナス財産を負担する

債務を一切相続しないためには、相続放棄の手続きが必要

相続があったことを知った時から「3カ月以内」に、「家庭裁判所」に「相続放棄の申述」をします

※「遺産分割の話し合いで財産を受け取らないことに決めた」だけでは、完全に債務を免れることはできません

 

それぞれの立場で相続をとらえられると、揉めることもなく無理のない家族想いの相続を迎えることができるでしょう。

 

民法に従った相続のきほんは大切なポイントです。

相続人は誰なのかは民法で定められていますので、考え方をおさえておきましょう。

相続人は誰?

 

法定相続分も大切なポイントです。下の図で確認しておきましょう。

法定相続分はどのくらい

法定相続分とは、遺言書がない場合に各法定相続人が譲り受けることのできる遺産の割合のこと

※同順位の者が複数いる場合は、さらに人数で頭割りします

相続のきほん(その1)

2023.6.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

皆さんは相続を学ぶのに一番スムーズなのは、どんな順番だと思いますか?個人的には次の流れが一番スムーズだと思います。

 

「相続」の基本を知る

「税金」の基本を知る

「遺言書」の基本を知る

 

この中でも今回は、「相続」の基本についてもう少し掘り下げてお話しします。

「相続」の基本を知る

全体ではなく、一部分を知るだけで十分

おさえるポイント3つ

①法廷相続人

②法定相続分

③相続手続きの内容と期限

 

「相続」とはどういうことかについて知るのに、おさえておきたい用語があります。

相続の基本用語3つ

①「被相続人」:亡くなった人のこと(相続される側の人)

②「相続人」:被相続人を相続する人のこと

③「法廷相続人」:民法の規定により、相続人となる人のこと

 

相続により、承継されるものも確認しておきましょう。マイナスの財産がある時は特に注意が必要です。

相続により、相続人に承継されるもの

財産上の地位

①プラスの財産・・・不動産、預貯金、有価証券など

②マイナスの財産・・・借入、債務など

※相続放棄や限定承認をしない限り、「借金なども引き継ぎます」

③当然に承継されないもの

  • ・・・ⅰ. 被相続人の一身に専属したもの
  •    ⅱ. 位牌・墳墓などの祭祀財産
  •    ⅲ. 生命保険金、死亡退職金、遺族年金など、契約や法律に基づいて支払われるもの

 

次回も「相続」のきほんについて、もう少しお話しします。

「配偶者の居住の権利」を考える(その2)

2023.6.1

今回は「配偶者居住権」の取得方法と設定時の注意事項をお話しします。

 

  1. 3 配偶者居住権の取得方法
    1. (1) 配偶者居住権は、遺贈(遺言で財産や権利を与える)、遺産分割によって取得するもので、相続開始により当然に生じる権利ではありません
      • (ア) 「遺言書」で取得させる場合は、次のような文例とする。
      • 第〇条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産を遺言者の長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させ、当該不動産について配偶者居住権を妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に遺贈する。
      • (イ) 遺言書がない場合は、次のような文例の「遺産分割協議書」とする。
      • 第〇条 下記の不動産について、長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)はその所有権を取得し、妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)は配偶者居住権を取得する。
    2.  (2) 「配偶者居住権」は、建物の全部に及び居住部分以外に、店舗として使用していた部分や人に賃貸して家賃を得ていた部分がある場合に、居住部分だけでなく建物全体について使用及び収益させることができます。
      • (ア) 居住建物の利用方法は、基本的に相続開始前と同じで、住居としての利用部分は引き続き住居として利用しなければならない。

      • (イ) 従前の用法が住居部分は住居とし、店舗部分は店舗又は住居とし、賃貸部分を賃貸又は住居として利用することができる(民1032Ⅰ)。

      • (ウ) 但し、所有権者が認める場合はそれ以外の用法も可能である。

    3.  (3) 居住建物の所有者は「配偶者居住権」の登記設定の義務を負い(民1031)、配偶者居住権者はその登記請求ができます。
      • (ア) 配偶者居住権者はこの登記により、物権取得者その他第三者に対抗力を有し(民605)、占有妨害の停止、占有物返還請求ができる(民603の4)。
      • (イ) 設定登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の2である。
    4.  (4) 配偶者居住権の存続期間は「配偶者の終身の間とする」とされ(民1030本文)、その死亡により消滅します 。
      • (ア) 遺言や遺産分割協議で居住する期間を決められる(民1030但書)。
        • a) 「別段の定め」をすれば、10年間あるいは20年間など任意に期間を定めることもできる(民1030但書)が、存続期間の変更はできない。
        • b) 但し、期間満了前に権利者が死亡した場合は権利は消滅する。

      • (イ) 配偶者居住権を譲渡(売却)することはできない(民1032Ⅱ)。
      • (ウ) 居住建物を取得した相続人の承諾を得れば、建物の増改築、人に賃貸して家賃収入を得ることができる(民1032Ⅲ)。
      • (エ) 配偶者居住権の放棄又は合意による解除は可能である。
    5. (5) 「配偶者居住権」の遺贈については「特別受益者の相続分」の「持戻し免除の意思表示の推定規定」(民903Ⅳ)を準用しています(民1028Ⅲ)。
      • (ア) 「配偶者居住権」については、上記推定規定を活用した「遺言公正証書」を作成しておくのが最善であると思われる。
      • (イ) 遺産分割協議で「配偶者居住権」の合意を得るには、大変な精神的負担が掛かるし、調停・審判の手続きも大変である。

 

  1. 4 配偶者は「配偶者居住権」を設定する場合、以下の事項を念頭に置き、自宅の取得方法を良く考慮する必要があります。
    1. (1) 「配偶者居住権」を活用すると、配偶者は自宅の所有権を取得する場合よりも低い評価額で居住権を取得し、その評価額の引き下げ分だけ預貯金等を多く相続して老後資金を増額できるメリットがあります。
      • (ア) 配偶者は、遺産分割(法定相続分2分の1)で住居(土地・建物)の所有権を取得すれば住み続けられるが、その分、預貯金などの取り分が減り生活資金に困る虞があります。
      • (イ) また、主たる相続財産が住居である場合は、遺産分割のために住居を売却せざるを得なくなる場合があります。
    2. (2) 「配偶者居住権」は財産的価値があるので相続税の課税対象となります
      • (ア) 「居住権」は住居に住むだけの権利で、その相続財産としての評価額は、配偶者の年齢の平均余命などから算出します。
        • a) 高齢者ほど余命が短いので不動産の評価額(配偶者居住権の負担のない場合の不動産価額)よりも低く算定され、その分、預貯金など他の財産を多く受け取れる。
        • b) 「配偶者居住権」は配偶者が自宅に住み続けられる権利なので、高齢になるほど自宅に住み続ける期間が短くなり、その価値は減少する。
        • c) 配偶者居住権の価額が不動産の価額と同じになってしまうこともあり、その場合は配偶者居住権を利用する意味が殆どなくなる。
      • (イ) 遺産分割時の「配偶者居住権」の評価方法は次の通りです。
        •  a) 評価額は、共同相続人間で合意による相当額で算定してもよい
        •  b) 遺産分割協議や調停で価額を合意できなければ、審判で決める。
        •  c) 相続税の申告時までに配偶者居住権の評価を決める必要があり、この場合の評価方法は、国税庁の通達で指定された評価方法によるので、遺産分割時の評価方法でも参考にできる。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

「デジタル遺言」制度の創設 ~遺言もインターネット上で作成・保管ができるように~

2023.5.25

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今年5月時点のマイナンバーカードの普及率は申請ベースで人口の約76%に達したとされ、マイナンバーカードの普及とともに公共サービスのデジタル化が進んでいます。相続にかかわる分野でも今後デジタル化に向け制度の整備が進むようです。内容をご紹介します。

 

■政府が掲げる「死亡・相続ワンストップサービス」とは?

相続手続きは市役所へ行けば終わると思っていたのに、年金事務所、法務局、税務署とたくさんの窓口をまわり、各先とのやりとりや書類の提出等、手続きの煩雑さに驚かれた方も多いでしょう。この現状をふまえて、政府は「死亡・相続ワンストップサービス」の政策推進を掲げています。具体的には、遺族が行う手続きを削減、故人の生前情報をデジタル化、相続人であることのオンライン認証といった取り組みを進め、行政手続きだけでなく民間手続きも含めた死亡・相続のワンストップサービス等を目指すとしています。

相続の窓口がひとつになれば、故人を偲ぶ時間もないまま煩雑な手続きに追われることもなくなります。制度開始が待たれるところですが、はじまるのはいつ頃になるでしょうか。この制度ではマイナンバーにより死亡の情報をつなげることで、各行政で故人の相続関係・財産状況等の情報を共有し、相続手続きの集約がなされると思われます。先行する「マイナ保険証」で混乱が相次ぐ現状をふまえると、安全性と実効性を担保したうえで「死亡・相続ワンストップサービス」の仕組みが出来上がるのはまだまだ先のことかもしれません。

 

■「デジタル遺言」で相続をもっと円滑に

5月6日の日本経済新聞の一面で「デジタル遺言、制度創設へ」と報じられましたが、この制度は「死亡・相続ワンストップサービス」より先にはじまる見込みです。民法の改正も必要ですので制度開始は少し先になりそうですが、年内に法務省が有識者会議を立ち上げ、2024年3月を目標に新制度の方向性を提言するとされています。

「デジタル遺言」の新制度により、遺言はどのように変わるでしょうか。現行の制度では遺言を作成する人が紙に直筆で内容を書く自筆証書遺言や、公証人に作成を委嘱する公正証書遺言等があります。これまでに自筆証書遺言は使いやすく変わってきており、2019年1月からは財産目録をパソコンで作成して良いとして、全文自筆の要件が緩和されています。2020年7月からは、法務局での自筆証書遺言保管制度も開始されています。このように使い勝手が良くなってきたものの、現行制度は紙がベースのままです。新制度では、自筆証書遺言をパソコン等で作成しクラウド等に保管する案があるようです。フォーマットに沿って遺言の内容を入力することになれば、知識を得ないと何から書き始めたら良いか分からないということもなくなるため、遺言を作り始めるハードルがぐっと下がります。本人確認はマイナンバーの顔写真との照合、電子署名や電子印鑑等により代替、改ざん防止のためにブロックチェーン技術を使うこと等が検討されています。

 

遺言は相続の準備の柱といえますので、円滑で円満な相続に向けて制度が便利に変わっていくことを期待したいですね。

 

 

作っておきたい財産リスト(その2)

2023.5.18

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

前回のテーマにつづきます。

 

■やっておきたい預貯金や株式、その他の財産の整理

預貯金口座はまとめておく

  • ・ネット銀行、ネット証券は特に注意する
  • ・貸金庫に保管するものにも注意

株式や投資信託もほどほどにしておく

  • ・相続する家族が詳しくないことが多い

終身の生命保険相続対策に使える

  • ・非課税枠を活用する

借入も相続財産

  • ・相続放棄(3ヶ月以内)を検討する必要がある

 

■作っておきたい遺言書

公正証書が基本と考える

  • ・手続き上、無効となるおそれがほとんどありません

揉めないように準備できるのは自分だけ

  • ・遺言書は家族がこれからを「生きる」ためのものです

相続税、遺留分の問題も考慮する

  • ・専門家の手も借りましょう

人生100年時代、介護施設の費用がいくら必要かも知っておく

  • ・「相続対策」とあわせて、認知症を患いお金の管理が難しくなった場合に財産管理をどんな方法を使って誰に託すのか、検討することも必要です。

 

作っておきたい財産リスト

2023.5.11

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

相続の準備に必要なことのひとつとして、財産リストを作っておくと良いでしょう。

 

財産リストの考え方と使い方

①まず正確な金額ではなく、概算がわかればOK

何がどれ位あるのか、家族が分かるようにしておくことが大切です。

②「基礎控除額」を超えるのか確認する

相続税を計算する上での評価額でリストを作成します。

10ヶ月の相続税の申告期限内の手続きが必要なのか、家族にも伝えておきましょう。

相続税の節税ができないかも検討します。

財産リストは、遺言書作成の第一歩

誰に何を譲るか迷ったら、残される家族の今後の生活を支えるためという視点で考えます。

相続人以外に財産を譲るのであれば、遺言を作成するしかありません。

 

路線価を調べよう!~自宅の土地~

路線価とは・・・

路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格のことで相続税や贈与税を算出する際の基準となります。

【基本の計算式】 土地の相続税評価額=路線価×敷地面積(㎡)

 

■固定資産税の納付書を見てみよう!~自宅の建物~

課税明細書の「価格」、「評価額」(=固定資産税評価額)の欄を確認

【基本の計算式】 建物の相続税評価額=固定資産税評価額×100%

(注意)借地権も相続財産に含まれます

地主から土地を借りて、建物を建てている方は注意しましょう。

期限がある相続手続きに注意

2023.4.25

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

相続手続きの中でも、期限がある手続きには早めに着手する必要があります。

 

相続放棄・・・3か月以内

債務を一切相続しないためには、相続放棄の手続きをすることが必要です。

相続があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に「相続放棄の申述」をします。

<注>「遺産分割の話し合いで財産を受け取らないことに決めた」は相続放棄ではありません。

相続税申告・・・10か月以内

相続税の申告が必要な場合には、相続発生から10か月以内に相続税の申告・納税します。

申告に必要な資料の収集、相続財産の分け方の協議、「遺産分割協議書」の作成、相続税の計算、納税資金の準備などを

10か月以内に完了させます。

 

財産リストを作成して期限のある手続きが必要と分かったら、ご家族にその旨を伝えておきましょう。

思ったより大変な相続手続き

2023.4.18

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

ご相続が起きた時に多くの方が驚かれるのが、必要な手続きの多さです。処理しきれずに期限のある手続きが間に合わないという事態を避けるためには、専門家の手を借りることも必要でしょう。
相続手続きのうち、自分でできるもの、専門家に依頼した方が良いものを私見ですが色分けしてみました。実際にはどう進めるのが良いか、ご自身やご家族と照らし合わせながらお考え下さい。

 

次回は期限がある相続手続きについてお話しします。

「相続土地国庫帰属制度」がはじまります ~令和5年4月27日スタートの新制度~

2023.4.10

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

さて、所有者不明土地問題の解消のため創設された「相続土地国庫帰属制度」がいよいよ4月27日から施行されます。一定の要件を満たした上で審査を通過すれば、相続により(売買等は対象外)取得した土地の所有権と管理責任を国に引き取ってもらうことができます。

 

■まずは法務局での事前相談を予約

今年の2月22日から事前相談の受付が施行に先立ちはじまりました。制度利用を検討されている方は、まずは法務局へ事前相談の予約をしてみて下さい。法務局の窓口での対面または電話で個別相談を受けてくれます。窓口での対面の方が持参した資料を一緒に見ながら相談できますので、より的確な回答をもらえるでしょう。相談できる法務局は手放そうとしている土地を管轄する法務局(本局)ですが、遠方で出向くのが難しい場合にはお近くの法務局(本局)へも相談可能です。手放したい土地の所有者本人はもちろん、ご家族・ご親族も相談できます。

法務局手続案内予約サービス

 

■事前相談の前にご準備を

事前相談では「この土地を引き取ってもらうことはできそうか」「申請書類を準備したが不備や漏れはないか」といった個別具体的な相談ができますが、1回の相談時間は30分と限られています。相談時間の延長はできないようですので、引き取ってもらえない土地の要件、負担金の算出方法といった基本的な内容は、事前に法務省のHPで確認しておくとよいでしょう。分かりやすくまとめられています。

相続土地国庫帰属制度全体の概要

事前相談では持参された資料をもとに相談に応じてくれます。具体的な回答をしてもらえるように、土地の状況等が分かる資料や写真をできる限り準備しておくと良いでしょう。

 

<資料や写真の具体例>

・登記事項証明書又は登記簿謄本

・法務局で取得した地図又は公図

・法務局で取得した地積測量図

・土地の測量図面

・土地の現況・全体が分かる画像又は写真 等

 

■事前相談での注意点

事前相談では、持参された資料や写真の範囲の情報をもとに、あくまで法務局担当者の個人的な見解をしめしてくれるまでです。実際に申請をした後に行われる審査では、審査担当者がその土地に出向いて現地調査をしたり、関係機関から提供された資料を確認したりした上で、承認するかしないかの判断がなされます。相談に応じてくれた法務局担当者の見解が、実際の審査結果とは異なることもありますので注意しましょう。

相続法に新設された「配偶者の居住の権利」(民法1028条~1041条)を考える(その1)

2023.4.3

今回から「配偶者居住権」について、4回に渡り、その利用と相続対策についてお話しします。

 

  1. 1 「配偶者居住権」には、「配偶者長期居住権」(民法1028条以下)と「配偶者短期居住権」(民法1037条以下)があります。
    1. (1) 「配偶者長期居住権」(単に「配偶者居住権」と言う)は、国民の急速な高齢化に伴い、残された配偶者が安定した生活を維持できるようにするため、配偶者の遺産の取り分の選択肢として新設された制度であり配偶者が自宅を相続しなくても生涯住み続けることができる権利です。
    2. (2) また「配偶者短期居住権」は、それが新設される前は判例により「使用貸借の合意(無償使用の合意)を推定する」とされ、少なくとも遺産分割が終わるまでの居住を認めるとされておりました。
  2. 2 「配偶者居住権」は、住居の権利を「所有権」と「配偶者居住権」に分割し、配偶者に「居住権」を取得させることで、住居が子供や他人の所有になっても終身の間又は一定期間居住できるとしています。

    1. (1) 夫又は妻が亡くなった場合相続が開始します。
      • (ア) 例えば、妻子の相続で子が自宅の居住建物とその敷地の所有権を取得し、これに対し妻が建物の「配偶者居住権」と土地の「敷地利用権」を取得することにします。
      • (イ) 以前は、自宅を所有する夫が死亡すると妻子間でその相続を巡って紛糾し、妻が自宅を相続できないと自宅に住み続けることが困難となることも起こりました。
    2. (2) 「配偶者居住権」は、相続開始時に住居に無償で居住していた場合遺産分割協議・遺贈(遺言)・死因贈与により取得することができます。
      • (ア) 【民1028Ⅰ】「被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利配偶者居住権)を取得する。」
      •  「1 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。」
      •  「2 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。」
        • a) 「但し、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。」(Ⅰ但書)
        • b) 「配偶者居住権」には、登記を必要とする(民1031)。
      •  (イ) 「居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは配偶者居住権は消滅しない。」(Ⅱ)。

      •  (ウ) 「配偶者居住権の遺贈について、民法903Ⅳ(特別受益者の相続分)を準用する。」(Ⅲ)され,持戻しの適用はありません。
      •  【民法903Ⅳ】「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人はその遺贈又は贈与について1項(持戻し)の適用しない旨の意思表示をしたものと推定する
    1. (3) 「配偶者短期居住権」とは、「配偶者は被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じて各号に定める日までの間、その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住部分のみ「配偶者短期居住権」)を有する」(民1037)とされています。
      • (ア) 被相続人の相続開始時に配偶者が住んでいた住居から追い出される事態にならないように「短期居住権」が設けられました。
      •  ①居住建物につき配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始時から6か月経過する日のいずれか遅い日
      •  ②前号に掲げる場合以外の場合は、第3項(配偶者短期居住権の消滅)の申入れの日から6か月を経過する日
      • (イ) この制度の創設は、配偶者が急に住まいを失うことを回避し、遺産分割が終わるまで従前の住居に無償で住むことができるとし、配偶者のそれまでの生活状態を一時的に保護しますが次の制約があります。」
        • a) 配偶者は、従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって使用する義務がある(民1038Ⅰ)。
        • b) 居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物を使用させることができない(Ⅱ)。
        • c) 前2項に違反したときは、居住建物取得者は配偶者に対する意思表示によって、配偶者短期居住権を消滅させることができる(Ⅲ)。
      •  (ウ) 権利の価額は、遺産分割でも相続税の算定でもゼロとして扱います。

 

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

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