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最新・相続ジャーナル

令和5年度の税制改正大網はどうなる?

2022.11.29

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

例年12月10日に決定し発表される税制改正大綱ですが、今回はどのような内容が盛り込まれるでしょうか。令和4年度は持ち越しとなった「相続税と贈与税の一本化」について、改めて注目が集まっています。

 

■相続税と贈与税の一本化とは?

年間110万円までなら非課税枠(基礎控除額)がある「暦年課税」制度はご存知の方も多いでしょう。現行の暦年課税制度では、相続発生前の3年以内に行われた贈与財産は相続財産に含められ、相続税の課税対象となります。令和5年度以降の税制改正においては、この3年という期間を10年とするドイツ、15年とするフランスといった諸外国の制度にならい、見直されることも考えられています。

また相続時精算課税制度では、2,500万円まで贈与税がかからない非課税枠がありますが、相続の際にはこの制度を使っての贈与財産は、何年前かにかかわらずすべて相続税の課税対象となります。このように、贈与財産にも相続税を課税できる相続時精算課税制度を、贈与税の原則的な計算方法とする可能性もあるようです。

このような「相続税と贈与税の一本化」がはじまると、相続税を節税するために生前贈与を活用するのが難しくなるのではとの見方がされています。昨年の税制改正大綱では「本格的な検討を進める」との記述にとどまり具体的な改正は見送りとなりましたが、「相続税と贈与税の一本化」が実際どのような内容になるか注目していきたいですね。

 

■セミナー開催のご案内

10月17日に開催しました『「配偶者居住権」でできる相続税の節税対策』セミナーへは、たくさんのご参加を頂きありがとうございました。ご好評につき第2期では、特別企画として税制改正大綱の速報もお届けします。ぜひご家族皆様でご参加ください。

 

「配偶者居住権」でできる相続税の節税対策

★特別企画★

相続税・贈与税はどう変わる?速報!!令和5年度の税制改正大網

開催日時:2022年12月19日(月)14時30分~

会場:埼玉会館7A会議室

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知っておきたい生前贈与の基本と活用⑦ 贈与税の配偶者控除 ~長年連れ添った配偶者への贈り物(おしどり贈与)~

2022.11.22

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は「贈与税の配偶者控除」についてお話しします。これまで2回にわたって下の代への贈与についてお話してきましたが、配偶者間の贈与で節税ができればとお考えの方もいらっしゃるでしょう。そこで活用できるのが「贈与税の配偶者控除」です。利用すべきかの判断が重要な制度ですのでポイントを確認しておきましょう。

 

この制度は婚姻期間20年以上の夫婦間で、贈与を受ける側が住むための不動産そのもの(土地のみでもOK)か、これを購入するための金銭の贈与が対象となり、非課税枠は2,000万円です。贈与した側に相続が発生した際に、贈与した財産を相続財産へ持ち戻さなくて良い点もメリットといえるでしょう。贈与税の基礎控除110万円を含めると2,110万円までを非課税で贈与できますが、この非課税枠を使えるのは夫婦間で一度だけです。

 

お得に思えるこの制度ですが、利用前に知っておきたい注意点がいくつかあります。

まず居住用不動産を無税で配偶者に渡したいのであれば、生前に贈与をしなくても相続時に1憶6,000万円と法定相続分のどちらか多い額までは非課税となる「配偶者の税額軽減」を使えば、相続税がかからない点です。次に、不動産を贈与する場合にかかる不動産取得税や登録免許税ですが、相続時よりも贈与時の方が税率が高い点も注意しましょう。

また、相続時に自宅の土地評価額を8割下げられる小規模宅地等の特例は、贈与の際には適用できないのもデメリットといえます。配偶者は居住用不動産を贈与されることにより財産が増えますので、二次相続時の相続税の負担も考慮する必要があるでしょう。

 

以上の注意点がある中で、この制度を検討した方が良いケースを考えてみましょう。例えば財産の大半が不動産であって、多額の相続税がかかることが見込まれ、売却予定がない自宅を相続財産から切り離した方が良い場合には、不動産取得税や登録免許税といった費用を考慮してもこの制度を検討して良いでしょう。その他、税金面以外の事情により自宅を配偶者の名義にしておいた方が場合が挙げられます。

「贈与税の配偶者控除」を利用した方が良いケースは思ったより少ないといえますので、専門家とよく相談のうえ検討する必要があるといえますね。

 

最後に、贈与税の配偶者控除のポイント改めて確認しましょう。

□ 婚姻期間20年以上の、長年連れ添った夫婦に認められた特権

□ 居住用不動産(土地のみ可)、または居住用不動産を購入するための金銭の贈与が対象

□ 非課税枠は2,000万円(1回限り!)

知っておきたい生前贈与の基本と活用⑥ ~住宅取得等資金の贈与~

2022.11.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は「住宅取得等資金の贈与」についてお話しします。

この制度の適用を受けると、父母や祖父母から18歳以上の子や孫(日本在住)への贈与につき、要件を満たせば一定額までが非課税となります。相続時精算課税制度とは違い、贈与者の相続財産への持ち戻しがない点は大きなメリットであり、暦年贈与(基礎控除110万円)、または相続時精算課税(特別控除2,500万円)との併用も可能です。下の世代がマイホーム購入を検討する時期にあれば、ぜひ活用したい制度ですね。

 

非課税の特例適用を受けるための主な要件は下記の通りです。
1. 住宅取得のための資金の贈与(不動産そのものの贈与は対象外です)
2. 子や孫の贈与の年の合計所得金額が2,000万円以下
3. 家屋の床面積は40㎡~240㎡
4. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて自己居住用の家屋の取得、新築、増築等をすること

 

一定の要件を満たしていれば、新築等する建物の種類に応じて、下記金額まで贈与税が非課税となります。

(特例で認められている非課税額)
・住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日:2022年1月1日~2023年3月31日
・省エネ等住宅:1,000万円
・上記以外の住宅:500万円
(注)省エネ等住宅とは、住宅が断熱等性能等級4もしくは一次エネルギー消費量等級4以上相当または耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上もしくは免震建築物であること等に適合する住宅をさし、住宅性能証明書等で証明する必要があります。

 

贈与のタイミングには特に注意をしましょう。もし売買契約時の手付金として贈与を受け、翌年3月15日までに引き渡しが間に合わなければ、非課税の特例が利用できなくなってしまいます。このような事態を避けるために、贈与は引き渡しの時に行うのが確実といえます。

 

知っておきたい生前贈与の基本と活用⑤ ~2,500万円まで非課税の相続時精算課税~ 

2022.11.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回からは、いろいろな贈与の特例についてお話しします。まずは「相続時精算課税」の制度から確認しましょう。

相続時精算課税を選択できるのは、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与する場合で、贈与税の申告書とともに「相続時精算課税選択届出書」の税務署への提出が必要です。

この課税方法を選択すると、財産を受け取る人ひとりあたり2,500万円までは贈与税がかかりません。2,500万円を越えた贈与については、20%の贈与税がかかります。

相続時精算課税は贈与時の税負担は軽減されますが、かわりに相続の際には、相続時精算課税を使った贈与財産についても相続財産に含め、相続税を計算することとなります。贈与した時に贈与税がかからなくても、将来的に相続税の課税対象になることに注意しましょう。

 

 

注意をしたいのは、一度でも相続時精算課税を利用すると暦年課税(基礎控除額110万円)は使えなくなり、以後の贈与には全て相続時精算課税が適用される点です。贈与の110万円の非課税枠は二度と使えなくなるため、たとえ少額の贈与であっても必ず申告が必要となります。110万円ずつコツコツ贈与をされたい方には不向きといえますね。

 

それでは、相続時精算課税と暦年課税のどちらを選んだ方が税金の面で有利でしょうか。例えば将来、相続税がかからない見込みであれば、相続時精算課税を使うことで贈与税の負担なく大きな金額を贈与することができ、相続税もかからないので有利といえるでしょう。

また相続時精算課税を使った贈与財産は、相続の際には贈与時の評価額で相続税を計算します。そのため、将来的に価格の上昇が見込まれる財産についても、相続時精算課税により贈与をすることは有利と考えられます。

相続時精算課税は大きな金額を次世代に移すことができますが、税制上有利かの判断を含め安易な選択は厳禁といえます。必ず税理士と綿密な打ち合わせをしてから実行しましょう。

会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その21)

2022.11.1

今回は、「円滑化法」の「民法の特例」適用のための「手続要件」及び申請手続等について話します。申請手続等が煩雑ですが、このような準備を要することを確認しておいてください。

 

  1. 1 民法特例の適用のための「手続要件」
    1. (1) 経済産業大臣の確認を得る(法7)。
      • (ア) 特例合意後1か月以内に「遺留分に関する民法の特例に係る確認申請書」と「確認証明申請書」を大臣に提出する(2項)。申請は、中小企業庁に対し後継者単独で行います(3項)。
      • (イ) 経済産業大臣が円滑法に合致しているかを確認します。
        • ① 当該合意が経営の承継の円滑化を図るためにされたこと(1号)
        • ② 申請者が当該合意をした日において後継者の要件を満たすこと(2号)
        • ③ 当該合意をした日において合意対象の株式を除くと後継者が議決権の過半数を確保することができないこと(3号)
        • ④ 旧代表者の推定相続人及び会社事業後継者が、後継者が合意対象の株式を処分した場合、及び旧代表者生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなった場合に取ることのできる処置の定めをしていること(4号)
      • (ウ) 「申請書」に次の書類を添付します(3項)。
        • a) 合意の当事者全員の署名又は記名押印のある次に掲げる書面。
        •  ⅰ 「合意に関する書面」(当事者全員の印鑑登録証明書を添付
        •  ⅱ 「合意の当事者全員が特例中小企業者の経営の承継の円滑化を図るために当該合意をした旨の記載のある書面」
        • b) 遺留分計算を合意時の株式等の価額で固定する定めをしたときは、その「固定価額の証明を記載した書面」
        • c) その他、定款、登記事項証明書、従業員数証明書、貸借対照表・損益計算書及び事業報告書(過去3期分)、上場会社に該当しない旨の誓約書、旧代表者が従前代表者であった旨の登記事項証明書、推定相続人を明らかにする戸籍謄本(他に相続人がいないことの確認)、株主名簿等、農業生産法人である場合はその法人である旨の農業委員会の証明書等
      • (エ) 上記確認を得ると、「確認書」と同時に「遺留分に関する民法の特例に係る確認証明書」の交付を受け、これらが家庭裁判所の許可申立てにおける添付書類となります。
    1. (2) 家庭裁判所の許可を受ければ効力を生じます(法8)。
      • (ア) 後継者は、経済産業大臣の確認を得た後、1か月以内に「家事審判申立書」により許可の申立をする(1項)。
      • (イ) 特例合意が推定相続人全員の真意に出たかを審判の対象とし、裁判所はその心証を得たときに許可する(2項)。
      • (ウ) 家事審判法第9条第1項甲類に掲げる審判事項とみなされる(法11)
  1. 2 合意の効力(法9)は、除外合意、固定合意、付随合意に規定した通りです。

    1. (1) 合意の効力は、当事者以外の者(第三者)に対してする遺留分侵害額の請求に影響を及ぼさない(3項)。
    2. (2) 特例合意の当事者が旧代表者よりも先に死亡した場合は、当該当事者の代襲者は、その特例合意の当事者たる地位を相続するから、代襲者には特例合意の効力が及ぶ。
  2. 3 合意の効力が消滅する場合は次の通りです(法10条)。

    1.  ① 経済産業大臣の確認が取り消されたとき(①)。

    2.  ② 旧代表者の生前に後継者が死亡し、又は後見開始、補佐開始の審判を受けたとき(②)。
    3.  ③ 特例合意の当事者以外の者が新たに旧代表者の推定相続人になったこと(再婚、新たな子供の出生など ③)。

    4.  ④ 特例合意の当事者の代襲者が旧代表者の養子となったこと(遺留分を取得する者が新たに生じた場合 ④)。

  3. 4 <二人の子供を共に経営者にする場合>は、次の点に注意を要します。

    1. (1) 旧代表者の子供2名を共に後継者とする場合は、共には「後継者」の要件を満たせないので、会社を2分割して子供2名をそれぞれの会社の代表者とし、各会社の「後継者」とする対策を検討すべきです。
    2. (2) この場合には、子供が相互に他の会社の経営に関与させないようにします。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

知っておきたい生前贈与の基本と活用④ ~正しい生前贈与の方法~

2022.10.25

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

さて、相続税の節税対策として活用されることも多い生前贈与。取り組みやすい反面、正しく対処しなければ、相続の際に税務署から「贈与ではない」と指摘されるケースがあります。「せっかくの生前贈与が相続対策になっていなかった」ということがないよう、贈与であることをしっかり説明できるように必ず証拠を残すことがポイントです。贈与はこっそりとではなく堂々と行いましょう。

まず現金を贈与する場合には、手渡しでは証拠が残りません。資金移動の証拠を残すためにも、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の口座間での銀行振込により行うようにしましょう。そしてもらう側の通帳と印鑑は、前回でお話しした「名義預金」と判断されないように、必ず受贈者が管理をすることです。「通帳や印鑑を渡したら、すぐに使ってしまうから」と心配される方は、贈与する意図や思いをしっかり伝えていないことが殆どです。どの対策でもいえることですが、なぜ贈与が必要なのかを一緒に考え、共有することが大切ですね。

また、税務署から否認されることがないよう完璧を目指すなら、贈与の都度、贈与契約書を作成することをお勧めします。贈与者が認知症気味で意思能力の有無が曖昧な時等にも、贈与契約書に「あげる意思」を明確に残しておくと良いでしょう。贈与契約書は下記の方法で作成します。

①贈与する人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)を明記する。

②贈与したという事実と内容を明記する。

③贈与をした年月日を明記する。

④贈与者と受贈者の氏名を明記し、捺印する。

 

 

1年間に贈与を受けた合計額が基礎控除額110万円を超える場合には、贈与税の申告をする必要があります。令和4年分の贈与税の申告は、申告期限近くに慌てることのないよう早めにご準備ください。

知っておきたい生前贈与の基本と活用③ ~妻の「へそくり」に税金がかかる~

2022.10.18

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

専業主婦の妻が貯めた「へそくり」。妻の「へそくり」は誰の財産だと思いますか?家計をうまくやりくりしてきた結果なのだから「へそくり」は妻の財産と考えたいところですが、特に夫の相続が起きた時には注意が必要です。「へそくり」はもともとは夫が働いて得た給与であり、妻の手元にあったとしても夫の財産とみなされ、多くの場合が夫の財産として相続税の課税対象になります。

そこで、「へそくり」は夫から妻へ贈与したものなので妻の財産としたいところですが、税務署はあげるという意思表示が明確でないという趣旨で贈与の成立を認めない傾向にあります。「へそくり」は夫に内緒でするものでしょうから、現実的とは言えないかもしれませんが、客観的な証拠を残すため贈与契約書を作成するなどして、夫から妻への贈与という形を整えておくというのも良いでしょう。

「へそくり」は税務調査で指摘を受け、相続税が追徴課税されるといったケースもあります。妻自身の収入などの固有財産と「へそくり」とを明確に分けておくなどし、税理士に相談しながら事前に準備をしておくことをお勧めします。

 

「へそくり」と同じように通いしたいのが、税務調査で一番争点となる「名義預金」です。名義預金とは、亡くなった人の家族の名義だが、実質的には亡くなった人のものである預金をいいます。例えば下の図のように、祖父が孫に知らせることなく貯めていた預貯金は、相続が発生し相続税の対象となるので注意しましょう。

 

 

実質的に名義人自身が管理・所有していないと判断され、名義預金は相続税の課税対象となります。名義預金と判断されないためには、正しい方法で贈与を行うことが大切ですね。次回は贈与の方法について詳しくお話しします。

意外と大変!相続手続きの戸籍集め ~楽になる制度と今後の法改正~

2022.10.11

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

相続の手続きでは、亡くなられた方の出生から死亡までの一連の戸籍を集める必要があります。集めた戸籍は預貯金の払戻や名義変更、株式などの名義変更、不動産の名義書き換え、相続税申告といったほとんどの相続手続きで各手続き先へ提出することになります。戸籍はひとつの役所で出生からのすべてを集められると思い込んでいる方も多く、意外と手間もかかりますので確認しておきましょう。

 

■戸籍集めは、ひとつの役所で終わらない?

例えば、父の相続手続きのため出生から死亡までの戸籍を集めるとします。本籍地の川口市役所へ戸籍をもらいに行くと、川口市役所ではすべての戸籍が揃わないことが分かりました。父が過去に神奈川県から川口市に転籍(本籍地を変更)していたためで、神奈川県の戸籍は神奈川県の役所へ請求しなければなりません。このように過去に本籍のあったすべての役所へ戸籍を請求して出生までさかのぼる必要があります。本籍地を一度も変えていない方はひとつの役所で済みますが、転籍を繰り返している場合などはすべて揃うのに数か月かかることもあります。相続人が兄弟姉妹や甥姪だけの場合にはさらに大変で、亡くなった方の両親の戸籍も出生までさかのぼる必要があります。

遠方の役所の戸籍は、郵便局の定額小為替を同封して郵送で請求することもできます。郵便の往復で日数もかかりますので、複数の役所へ郵送請求する場合には気をつけましょう。

さて、そもそもなぜ過去の戸籍まで必要なのでしょうか。その理由は、相続人が誰かを確定させるためです。戸籍は結婚や離婚、転籍、電子化による様式変更などによりその都度新しく作成されていて、原則として出生、離婚、養子縁組などの相続人確定に必要な情報は、作成された期間中の戸籍にしか記載されていないのです。過去の戸籍をとってみると、養子などの相続人にあたる方がいると判明することもあります。

 

■相続手続きは「法定相続情報一覧図の写し」で効率よく

揃えた戸籍の束は、相続手続きが必要な先へ順番に提出していくことになりますが、金融機関や証券会社、法務局など提出先が多いほど手間と時間がかかります。法定相続情報証明制度はこのような煩雑な手間と時間を解消できる便利な制度です。法務局にすべての戸籍と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、その一覧図に認証文を付した写しが無料で必要枚数交付してもらえます。その後の相続手続きは、この法定相続情報一覧図の写しを利用することができ、戸除の束をその都度出す必要がなくなりますのでぜひ活用しましょう。

 

■戸籍法の改正で戸籍集めが楽に

はじまるのは2025年以降の予定ですが、戸籍法の改正により、最寄りの市区町村役場の窓口で全国の戸籍を発行してもらうことができるようになります。オンライン請求での戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)の発行も予定されていますので、手間と時間が大幅に軽減される見込みです。実際の運用についてはこれから明らかになるようですので、注目していきたいですね。

会社経営者の事業承継について考えてみましょう(その20)

2022.10.1

今回は、前回に引き続き「円滑化法」(民法の特例)の「特例合意の要件」等について話します。

 

  1. 1 <特例合意>の必要的要件

    1. (1) <会社経営者の場合>の<特例合意の定め>は、「後継者が先代経営者から贈与、又は当該株式等の受贈者からの相続により取得した株式等の全部又は一部」を対象とし、次の内容となります(法4)。

      • (ア) 特例中小企業者の経営承継の円滑化を図ることを目的とした合意であること。
      •  a) 後継者となるべき者を含む推定相続人全員の「合意書面」とする(法4Ⅰ)。
      •   1) 推定相続人でも遺留分権のない兄弟姉妹及びこれらの者の子は除かれる
      •   2) 特例合意では、推定相続人の1人が他の推定相続人の代理人になれない。
      •   3) 被後継者への代償財産は必ずしも必要でない
      •  b) 後継者の有する株式等が、特例合意対象株式等を除くと議決権の100分の50を超えていないこと(法4Ⅰ但書)。過半数を超えている場合は適用されない。
      • (イ) 除外合意株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しない(除外する)旨の合意)(法4Ⅰ①)。
      •   a)他の相続人は「除外合意」により、後継者が先代経営者から贈与等によって取得した自社株式の価額について遺留分の主張ができなくなる
      •   b)これにより相続紛争のリスクを抑え、後継者に集中的に株式を承継させることができる。
      • (ウ) 固定合意株式等の全部又は一部について「遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額」を当該合意の時における価額(相当な価額として証明をしたものに限る。)に固定する旨の合意)(法4Ⅰ②)。
      •  a) 現経営者が高齢でなく死亡(相続開始)まで相当の歳月があるとき、後継者の貢献によって株式の評価が上昇した場合、「遺留分の争い」や経営のモチベーションの減退を起こさせないように、予め「固定合意」をし、生前贈与後相続開始時までに上昇した株式価値を遺留分額の算定に影響させないようにする。
      •  b) 合意時の「固定合意」の株式価額の相当性を担保する為、税理士、公認会計士、弁護士等による証明を必要とする。
      • (エ) 以下の事由が生じた場合には、後継者以外の推定相続人が対処できる措置を定めておく必要がある(法4Ⅳ)
      •  a) 後継者が合意の対象となった株式等を処分した場合(Ⅳ①)
      •   1) 「定め」は、「非後継者に一定の金銭を支払う」、「非後継者はその合意を解除できる」などとする。
      •   2) また、「この場合でも非後継者は何も異議を述べず、一切の金銭を請求しない」とすることもできる。
      •  b) 先代者の生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなった場合(Ⅳ②)
      •   1) その記載例として「旧代表者の生存中に後継者が合意対象株式を処分し、又は特例中小企業者の代表取締役を退任したときは、後継者以外の推定相続人は特例合意を解除し、又は一定額の違約金の支払いを請求することができる。」とする。
      •   2) あるいは「旧代表者の死亡後に後継者が合意対象株式を処分し、又は特例中小企業者の代表取締役を退任した場合でも、後継者以外の推定相続人は何らの異議を述べず、一切の金銭の請求をしない。」としても良い。
      •  c) <後継者が死亡した場合で、子供(先代経営者の孫)が後継者の受贈した株式等を相続し、既に経営に参画している場合>は、先代経営者の存命中に孫が叔父・叔母ら推定相続人と合意すれば、再度特例の適用を受けられる。

 

    1. (2) <個人事業者の場合>先代の個人事業者の後継者と推定相続人は、全員の合意をもって後継者が先代からの贈与、又は当該事業用資産受贈者からの相続により、取得した事業用資産の全部、又は一部について書面で「除外合意ができる(法4Ⅲ)。

      • (ア) 上記(1)の(エ)(法4Ⅳ①②)と同様の措置を定める必要がある(法4Ⅴ①③)。

      • (イ) 当該事業用資産を事業用以外の用に供した場合に取る措置(法4Ⅴ②)の定め。
      • (ウ) 個人事業者の場合は「固定合意」(株式等の価額に関する合意)の適用はない。
    1. (3) 「円滑化法」は、「付随合意(オプションの合意)を任意に追加とすることを認めている(法5)。但し、固定合意の場合は除く
      • (ア) <会社の旧代表者の推定相続人>は4条1項の合意の際に、<個人事業者の推定相続人>は4条3項の合意の際に、併せて全員の合意をもって、書面で次の定めをすることができる。

        • a) 「株式以外の財産の除外合意
        •  1) 後継者が当該旧代表者から贈与された株式等以外の財産の全部又は一部について、その価額を遺留分算定基礎財産から除外する旨の定め(法5①)。
        •  2) 例えば、工場、土地、機械等の事業用財産、特許等の知的財産権など。
        • b) 個人事業者の場合の事業用資産を除く、その他の財産(法5②)。
      • (イ) 「公平措置の合意」(法6)(会社の場合、個人事業者の場合)
        • a) 推定相続人全員の書面により、「推定相続人間(後継者を含む)の衡平を図るための措置」について合意することができる(法6Ⅰ)。
        •  1) 例えば、後継者が後継者以外の推定相続人へ一定額の金銭を代償金として支払う旨の合意
        •  2) 他の相続人の相続株式を一定額で買い取る合意なども可能である。
        •  3) 上記1),2)の場合において、支払の分割、会社経営が思わしくなくなった場合の支払中止、あるいは延期等の条件を付することもできる。
        • b) 前項の合意として、財産の全部又は一部について、その価額を遺留分算定財産から除外する旨の合意(法6条Ⅱ)。
    1. (4) 特例合意について、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受けることについては,次回に説明します。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」。

知っておきたい生前贈与の基本と活用② ~見落としがちな贈与税がかかるケース~

2022.9.22

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は引き続き贈与のお話です。贈与と意識せずに行ったものや、贈与ではないと思っているものでも、贈与に該当し贈与税の対象となることがあります。思いがけないところで贈与税が課税されることのないように、注意したいケースをいくつかご紹介します。

 

例えば子供のローンの返済を親が代わりにしてあげる場合に、贈与にはあたらないと考える方が多いのではないでしょうか。「いつか返してくれればいいよ」、「出世払いでいいよ」と返済の予定も特に決めない場合は注意が必要です。

お金の貸し借りは返済があってこそですから、明確な返済がなければ贈与(債務免除)とみなされ、贈与税が課税対象となる可能性があります。親が行ったのはあくまで一時的な立替払いであって、贈与に該当しませんというのであれば、少額ずつでも定期的な返済が必要でしょう。税務署も親子間だからこそお金の移動について厳しくチェックする傾向にありますので、しっかり準備をしておきたいですね。

 

また、老後資金として契約されている方も多い個人年金保険についても確認しておきましょう。前提として、保険金の課税関係は「保険料負担者」・「被保険者」・「受取人」が誰かで考えます。例えば、保険料負担者と被保険者を父、受取人を子とすると生命保険金は相続税の対象となりますが、契約者が母であっても実際に保険料を負担しているのは父で、被保険者が母、受取人が子の場合は父から子への贈与となり、贈与税の対象となります。なお、保険料負担者と受取人が同じ場合は所得税がかかります。

 

個人年金については、保険料負担者と受取人が同じ下表ケース1の場合、夫が受け取った年金は雑所得として所得税と住民税がかかります。保険料負担者と受取人が異なるケース2の場合には、年金の受け取りがはじまった時点で、夫から妻へ年金を受け取る権利が贈与されたとみなされます。そのため、年金開始時点で年金受給権の権利評価額に贈与税がかかり、2年目からは所得税と住民税がかかることになります。

 

 

保険は課税関係が複雑ですので、契約前によく確認する必要があります。「生命保険金は相続税の非課税枠(法定相続人の数×500万円)があるからと契約したのに対象にならなかった」、「個人年金を受け取ったら思いがけず贈与税がかかってしまった」など、せっかくの保険の活用が無駄にならないようにしたいですね。

 

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