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最新・相続ジャーナル

財産リストを作成しましょう~不動産はどのように評価する?~

2025.6.2

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は財産リストを作成するときの不動産の評価方法についてお話しします。まずは土地について確認していきましょう。

 

■自宅土地(自用地)の評価方法 路線価方式

路線価は毎年7月に公表され、その年の相続税や贈与税を計算する際の基準として使われます。路線価は道路に面した標準的な宅地の1㎡あたりの価額を示していて、千円単位で表示されています。それでは、自宅として使用している土地の前面道路に路線価が付されている場合について、次の計算例で確認してみましょう。

 

■自宅土地(自用地)の評価方法 ②倍率方式

一方で、路線価が決められていない宅地の評価では倍率方式が使われます。この評価方法では、固定資産税評価額に国税庁が公表している「倍率表」に記載の倍率をかけて評価額を求めます。このように路線価方式と倍率方式のどちらを使うかは、土地の所在地によって変わります。まずはどちらの方式に当てはまるのか「路線価図」の確認からはじめましょう。

 

 

財産リストを作成しましょう~財産の種類ごとの評価方法~

2025.5.8

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は前回に続き、財産リストの作成の際の、それぞれの財産の評価額の考え方についてお話しします。財産リストを作成することで、相続税がかかるかどうかを把握でき、自分に必要な対策が何かも明確になるため、遺言書の作成をスムーズに進めることができます。それでは、それぞれの財産の評価方法を確認していきましょう。前回掲載した財産リストの見本と照らし合わせてみてください。

 

■プラスの財産

①金融資産(預貯金・有価証券など)

金融機関名や支店名、預貯金の種類(普通預金・定期預金など)や、株式・投資信託の内容を記入し、現在の残高・評価額を記入します。

▶注意点:「タンス預金」や、家族名義の口座へ預金移動をした「名義預金」は、誰の財産とみなされるか、贈与として扱われるかなどで判断が分かれます。税理士によっても解釈が異なるケースが多いでしょう。残されるご家族が困ることのないように、事前に専門家へ相談しておくと良いでしょう。

②不動産(土地・建物)

土地や建物の評価額を記入します。計算方法が少し複雑なため、詳細は次回詳しく説明します。

➂その他の財産(書画・骨董品、贈与など)

書画や骨董品は、売却した場合の見込額を記入します。贈与財産については、「相続財産として扱うか」、「そもそも贈与と認められるか」など、判断が難しいポイントが多いです。贈与税の制度も変更されているため、専門家に相談して判断すると良いでしょう。

 

■みなし相続財産

④死亡保険金

保険会社名や保険の種類、受取額を記入します。相続時に支払われる死亡保険金のうち、被相続人が契約者で、相続人が受取人の死亡保険金には非課税枠があります。

非課税枠の計算方法:「500万円 × 法定相続人の数」

▶注意点:孫など相続人以外の人が受取人の場合はこの非課税枠が適用されず、さらに相続税が2割増しになる可能性があるため、契約内容をしっかり確認しておきましょう。

 

■マイナスの財産

⑤債務(借入)

借入金がある場合は、借入先・内容・残高を記入します。

 

財産リストを整理して必要な対策を把握することで、「誰にどの財産を残すのか」もはっきりしてきます。リストの作成をしっかり行い、相続の準備を進めてきましょう。

財産リストを作成しましょう~遺言書の準備~

2025.4.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、財産リストの作成についてお話しします。財産リストを作ると財産の分け方を検討しやすくなり、遺言書の準備がスムーズに進みます。さらに、相続税がかかるかどうかを確認することもできます。相続税がかかるかを把握することにより、分割対策・節税対策・納税対策(前回までにお話しした3つの対策)のうち、どの対策が必要かを検討しやすくなるでしょう。そこで、今回からは財産リストの作成に必要な相続税の知識について詳しく解説していきます。

では、相続税がかかるかどうかを判断するために、何を確認すればよいでしょうか。それには、次の2つのポイントが大切になります。

1.基礎控除額」の確認

2.相続税の対象となる財産の総額の確認

 

相続税の対象となる財産の合計額が「基礎控除額」を超えなければ、相続税はかかりません。つまり対象財産が基礎控除額以下であれば、基本的に相続税対策を考える必要はないということです。財産リストを作成することでこれら2つのポイントを確認でき、相続税がかかるかを把握することができます。

 

■財産リスト作成時のポイント

財産リストは、次のような形式で作成しましょう。ご夫婦の場合、それぞれ個別に作成することをおすすめします。

リストは上から順番に記入していきます。まずは基礎控除額の計算方法を確認しておきましょう。計算式は赤枠に記載の通りです。

 

法定相続人の人数ごとの基礎控除額は計算すると次の表のようになります。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

 

次回からは財産欄の記入ができるように、財産の種類ごとの評価額の考え方についてお話しします。

遺言書を作成する前に考えておきたい3つのポイント(その2)

2025.4.1

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、前回に引き続き遺言書を作成する前に押さえておきたい重要な3つのポイント中から、3つ目のポイントについてご説明します。

 

■3つ目のポイント:財産を分かりやすくリストにまとめる

遺言書を作成する前に、ご自身の財産をしっかり整理し、リストにまとめることが大切です。次の手順で進めてみましょう。

①財産の内容を書き出す

まず、金融資産であれば「〇〇銀行、普通預金」、不動産であれば「土地、さいたま市浦和区〇〇」、生命保険であれば「〇〇生命、終身保険」といった具体的な内容をリストアップします。ローンなどの債務がある場合も忘れずに記載しましょう。

②それぞれの財産の現在の価格を記入する

財産ごとに、現在の残高や評価額を記載します。生命保険であれば死亡保険金額を確認しましょう。

➂財産を誰に残すかを決める

前回お伝えした2つのポイントを思い出しながら、どの財産を誰に残すかを考えましょう。その際、家族全体のバランスに配慮することが大切です。過去に家族に金銭的な援助をした場合や、それぞれの現在の生活状況にも目を向けてみてください。

 

財産リストを作成すると、遺言書の作成に進めるように財産の分け方を事前にしっかり考えることができるだけでなく、相続税がかかるかどうかも確認しやすくなります。このことからも、財産リストの準備はとても大切といえます。

 

それでは、これまでの3つのポイントのおさらいです。

1.相続準備の目的をはっきりさせる
誰のために、どのような目的で相続準備をするのかを明確にすること

2.必要な相続対策を確認する

①分割対策、②節税対策、③納税対策、この3つの中で必要なものを見極めること

3.財産リストを作り、分け方を決める

財産をしっかりリストにまとめ、誰に何を残すか具体的に決めること

 

次回は、財産リストの作成方法について、相続税の確認もできるようにもう少し詳しくお話しします。2つ目のポイントである必要な相続対策を確認できるように、しっかり理解しておきましょう。

遺言書を作成する前に考えておきたい3つのポイント(その1)

2025.3.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

今回は、遺言書を作る前に考えておきたい大切なポイントを3つに絞ってお伝えします。遺言書を作る上で一番大切なことでもありますので、しっかりとおさえておきましょう。

 

■1つ目のポイント:相続の準備をする目的

まずは「誰のために、どんな状態にしておきたいか」を考えてみましょう。相続の準備をする目的は人それぞれですが、例えばこんな場合が考えられます。

✔ 妻が自分の相続後も安心して暮らせるようにしておきたい

✔ 家族が遺産分けで争わないようにしておきたい

✔ 子どもがスムーズに事業を引き継げるようにしておきたい など

このように目的を具体的にしておくと、相続の準備はとても進めやすくなります。

「そろそろ遺言書を作ろうかな」と考えている方は、まずは目的を1つ決めることが大切です。もし複数の目的が思い浮かんだ場合は、その中でも一番大切なものを1つに絞りましょう。目的がはっきりしないと、なかなか準備が進まなかったり、途中で何をどうしたら良いのかと迷ってしまうこともあります。ゴールが見えないと、たどり着くのは難しいですよね。

 

■2つ目のポイント:どんな相続の準備が必要か

次に考えておきたいのは、「どのような相続の準備が必要か」です。相続の準備は、大きく次の3つの対策に分けられます。

①分割対策 財産をどう分けるかを考えること(これは、どなたにも必要な対策でしょう)

②節税対策 相続税の負担を少しでも減らすための方法を考えることす

➂納税対策 相続税を支払うための資金をどう確保するかを考えること

これらの3つの対策の中から、自分に必要なものをしっかり把握しておきましょう。

1つ目のポイントで「目的」を決めたら、次にこの「対策」を確認するという順番が大切です。順番を守ることで、準備がスムーズに進みやすくなるはずです。

 

次回は3つ目のポイントについてお伝えします。3つのポイントをしっかりと考えて、安心できる相続の準備を進めてください。

相続対策と相続税対策について(その2)

2025.3.1

前回に続いて、相続対策(遺言の作成)についてお話しします。

 

第2 相続対策(遺言の作成)について

  1. 5 相続財産の分割の方法として<「遺言の作成」>について話します。ご存じの通り、遺言がない場合法定相続人全員の「遺産分割協議」により、合意に至らない場合は「法定相続」によることになります。
    1. (1) 共同相続人のうちの特定の相続人に遺産を取得させる場合、遺言書に「○○に○○を相続させる」(「相続させる旨の遺言」と呼びます)と記載します。
    2. (2) <「相続させる旨の遺言」>は、「全部の相続財産を相続させる」とする場合と、「特定の財産を相続させる」(「特定財産承継遺言」(民1014条2項)とする場合があり、遺贈としてでなく、その遺言により相続の効力として相続人が相続財産を当然に承継します。
      • (ア) 「相続させる」旨の遺言は、特段の事情のない限り「遺産分割方法の指定」であると解され、遺産分割手続を経ずに被相続人の死亡と同時に物権的効力が生じ、直ちにその遺産はその相続人に承継されます。
        • a) 民法908条1項は「被相続人は、遺言で遺産の分割の方法を定め・・・ることができる」と規定しています。
        • b) 「遺産の分割の方法を定める」とは、他の共同相続人と遺産分割の協議をしないで、その指定された相続財産が相続開始と同時に指定の相続人や受遺者のものになることです。
        • c) 最高裁判例は、「相続させる」趣旨の遺言は、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、民法908条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、・・・このような遺言にあっては、何らの行為を要せずして被相続人の死亡の時に、直ちに当該遺産が分割されて当該相続人に相続により承継される、と判示しています(最判平成3、4、19 )。
      • (イ) なお、民法改正(民法899条の2)により承継した相続財産のうち法定相続分を超える部分は、登記がなければ第三者に対抗できないとされています。
    1. (3) これに対し「遺贈」とは、遺言によって財産を贈る者(「遺贈者」)が相続人あるいは相続人以外の者(「受遺者」)に対し、財産上の権利義務の全部又は一部を無償譲渡することです。
      • (ア) 「遺贈」は遺言者の意思表示(遺言)によって権利(遺産の全部又は一部)を、無償または負担を付して他に譲与する(変動させる)>もので、<贈与のようなものと言われます。
      • (イ) 遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」とがあり、受遺者には相続人以外の者も含まれます
        • a) 「遺言者は包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」(民964)。(但書遺留分の規定に違反できない)は削除された。)
        • b) 「包括遺贈」とは遺産の全部又は一部を一定の割合を示してする遺贈で、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」(民990)と規定されているので、従って遺産を当然かつ包括的に承継することになります。
        • c) 「包括遺贈」は相続と異ならないので、従って他に包括受遺者又は相続人がいるときは、遺産は共有となります。
      • (ウ) 「遺贈」による受遺者には、「割合的包括受遺者」と「遺産全部の包括受遺者」があり、前者の承認及び放棄は相続に準じ、後者は相続が開始すると遺産全部が直ちに受遺者に帰属するので、遺産分割の対象とはなりません(民964)。
        • a) 他の相続人が相続を放棄した場合、割合的包括受遺者が相続人でないときは、遺贈される相続分の割合には影響を受けません。
        • b) 全部包括遺贈については、遺留分侵害額請求の問題が生じるだけで、遺産分割の問題とはなりません。
      • (エ) 遺言で<遺言者の介護にした相続人でない長男の嫁など>に自宅や預貯金等を取得させたい場合は、「遺贈」の遺言で財産を取得させます。
    2. (4) 遺言書で特定の相続人に不動産を取得させる場合は、取得させる不動産の全てを記載し、漏れのないよう注意を要します。
      • (ア) 例えば遺言書に相続させる自宅敷地に付随する「私道」(「位置指定道路」など)の記載が漏れ(固定資産税が非課税で価値が小さいため)、その結果「私道」の遺産分割協議を要することが、予期せぬ紛争の種となる恐れがあります。
      • (イ) もちろん、「一切の不動産を相続させる」とか、「上記の各財産以外の財産の全てを相続させる」等との記載がある場合は問題はありません。
    3. (5) また、遺言書には予備的遺言」(補充遺言)を記載して置くことで、遺言の無効による遺産分割協議の対応を回避することができます。
      • (ア) 「遺贈は遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」(民994Ⅰ)、「停止条件付の遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも前項と同様とする。」(民994Ⅱ)と規定され、受遺者(相続人)が死亡すると遺言の「○○に○○財産を相続させる」とした部分が無効となり、○○財産については相続人全員による遺産分割協議を要することになります。
      • (イ) 「但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」(民994Ⅱ但書)と規定されています。
        • a) 受遺者(相続人)の死亡により受遺者に取得させる予定の財産の遺言はその部分が無効となり、それは相続人全員の遺産分割協議の対象財産となります。
        • b) しかしながら、その場合でも遺言者が遺言で別段の意思表示をしておけば、その遺言が有効となります。この遺言を予備的(補充的)遺言と言います。
        •  1)  予備的遺言は、遺言者が死亡するよりも前に受遺者(相続人)が死亡することを条件とする「条件付遺言」とされ、その場合予備的遺言において指定された者が受遺者(相続人)となります。
        •  2) 例えば「妻○○が遺言者より以前に死亡したときは、妻に相続させるとした上記財産を遺言者の長男○○(○年○月○日生)に相続させる」などと、遺言書に新たな取得者を予備的に指定します。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」

遺言書を作成する具体的なステップ

2025.2.15

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

相続の仕事に携わって10年ほど経つのですが、「遺言書を作成しよう」と思いながらも、なかなか進まない方が多いように感じます。みなさん相続に関する情報収集をしっかりとされているのに、なぜでしょうか。
大きな理由の一つは、遺言書を作成するための具体的な進め方がわからないからではないかと思います。というのも、遺言書に関する知識面での情報は豊富にあり収集しやすいのですが、遺言書を完成させるまでの具体的な進め方の情報は意外と少ないのです。そこで今回から、遺言書作成をスムーズに進める方法をお伝えしていきます。本題に入る前に、まずは遺言書を作成するメリットについて考えておきましょう。

 

遺言書を作成すると、どんな良いことがあるでしょうか。代表的なメリットとして、以下のような点が思い浮かぶでしょう。

✔家族間の争いを避けられる ✔残される家族の不安が軽減される

✔相続手続きが簡単になる ✔遺言書を作成した人の想いを形にできる

 

中でも最大のメリットは、相続発生後に「遺産分割協議」を行う必要がなくなることです。この協議では相続人全員の合意が必要ですが、意見がまとまらない場合には親しい家族が遺産をめぐって争うような事態も考えられます。家族の問題で弁護士に依頼をしたり、裁判所での調停が必要になったりする事態は避けたいところです。遺言書があれば、こうした心配を未然に防ぐことができます。

次のようなケースに当てはまる場合などは特に、トラブルに発展したり、相続手続きが複雑化して時間や労力を奪われたりすることが考えられますので、必ず遺言書を作成しておきたいところです。

✔相続人同士の仲が悪い ✔再婚で前の配偶者との間に子どもがいる

✔子どものいない夫婦 ✔相続人にあたる人がいない

✔自宅が財産のほとんどを占めている ✔自宅を子どもの一人と共有している

✔相続人以外に財産を渡したい ✔事業を営んでおり、一人に集中して相続させたい

 

遺言書作成は難しいと思われがちですが、具体的な手順を知れば意外とスムーズに進められます。次回から、遺言書作成の進め方について詳しくお話ししていきます。まずは「遺言書を作ることでご家族が将来どれだけ安心できるか」をぜひ想像してみてください。

 

相続対策と相続税対策について(その1)

2025.2.1

今回から相続対策と相続税対策についてお話しして参ります。

 

第1 相続対策(遺言の作成)について

  1. 1 「相続対策」は、「相続税対策に繋がる」と言われ、更に相続税の軽減対策や納税資金対策にも繋がるので「100人中100人に必要だ」とも言われています。

    1. (1) さて、元・作家、経済評論家、株式投資の名人で「金儲けの神様」と呼ばれた亡邱永漢さんが、その著作『相続対策できましたか』(PHP研究所)を物しています。
      • (ア) その「第一章 死んだら財産争いが始まります」で、「相続は人生最後の宿題です」とし、「第二章 相続対策は十年の歳月をかけて」と題しておりますが、結局「人生最後の宿題」は「遺言書」の作成に帰着します。
      • (イ) 今年はそれを「人生早目の宿題」として考えて見ましょう。既に「遺言書」を作られた方には暫しお付き合い願います。
    2. (2) 邱さんの言う「死んだら財産争いが始まります」は他人事ではありません。
      • (ア) 親の「うちの家族に限って揉める訳がない」、「揉めるほどの財産はないし、子供達は生活に困っていないので大丈夫だ」との声はその願望に過ぎません。子供達の仲は、親の欲目と、子供達同士が受け止めている感覚とは異なることが多いのです。
      • (イ) 子(兄弟姉妹)が仲良くても親が亡くなりその重石がなくなると、親の介護や生前贈与などを巡る不満の鬱積、各家庭の事情(子供の教育費・自宅の住宅ローンなど)もあって、金銭的な利害が対立し、話し合いは縺れて感情的争いになり、家族関係が絶縁する例があります。「遺産は家庭争議の元」になりかねません。
    3. (3) 「生前に財産の分け方を家族で話し合って遺産分割する」との考え方もあり、親の威光でその家庭教育が浸透している場合は兎も角も、生前の遺産分けの約束には法的拘束力がないし、これが却って親の生前に「争続」問題を生じさせる結果となることもあります。情けない話ですが「お金を見て目が眩まない人はいません」。
    4. (4) 決して望ましくないが、『きょうだいは他人の始まり』を肝に銘ずべきです。

 

  1. 2 ところで「相続」とは、財産上の地位(又は権利義務)と「法律上の地位」の承継であり、非財産法(身分法)上の地位は承継の対象に含まれません。
    1. (1) 相続は、死亡者(被相続人)の「最終意思」か「法律の規定」に従います。
    2. (2) 「法定相続」は被相続人の意思にかかわらず、法律の規定に基づいて効力が発生するもので無遺言相続とも呼ばれます。
    3. (3) これに対し、「遺言による相続」は、遺言者(被相続人)の財産的地位(又は権利義務)の承継が、遺言者の「最終意思」に基づいて行われるのです。
      • (ア) 「遺言」には「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」もありますが、一番安全な「公正証書遺言」に限ると言って差し支えないと思います。
        • a) 「遺言公正証書」は、法務省が任命した公証人が遺言者の意思を確認して作成するので、その効力に争う余地はありません。
        • b) 例え相続人が一人であっても、遺言書には相続の執行手続(預貯金の解約手続など)を簡易化できるメリットがあるので、それを活用すべきです。
      • (イ) 但し「遺留分」のある一定の相続人がいる場合は、遺言は遺産の一定割合で法律上の制限(法律による相続)による修正を受けることがあります。
      • (ウ) 遺言は、財産法上の地位の承継のみを内容とするものですが、身分法上の地位ないし権利義務の変動を目的とすることもあります。

 

  1. 3 通常「相続人」と呼ばれる「法定相続人」は<配偶者の株><血族関係の株>があり、配偶者が先に死亡すると<配偶者の株><血族関係の株>に吸収されます。

    1. (1) <血族関係の株>は、1順位は子(人数で分ける)、代襲相続人(孫の相続)、再代襲者(被代襲者の直系卑属、民887Ⅲ)、養子、胎児(民886)ですが、<子が相続放棄した場合>その子(孫)達は相続人になれないので注意を要します。

    2. (2) 第2順位は直系尊属(代襲相続はない)、3順位は兄弟姉妹(その子(甥・姪)に代襲相続権があり再代襲は無い)で、兄弟姉妹には遺留分権はありません

 

  1. 4 「相続対策」で最優先すべきは「相続争いの防止」で、「納税資金対策」も必要です。
    1. (1) 財産を残したい人、例えば家族の中の弱者、遺言者の介護に当たってくれた嫁などがいれば、確実に財産を残せるように生前対策として遺言書の作成は必至であり、これにより家族の幸せを確保するのが重要です。その結果として「節税対策」にも役立つ取り組み方が望ましいと思います。
    2. (2) 被相続人の判断能力が低下する前に、先ず「遺言公正証書」を作成し、更に「任意後見契約公正証書」を締結し、相続対策もできるようにしておくことも大事です。
      • (ア) 被相続人が成年後見人を決めて、財産管理やその処分権限を具体的に与えておけば、被相続人の判断能力が低下あるいは喪失しても相続対策は可能です。
      • (イ) 成年後見制度には「任意後見契約」と「法定後見制度」があり、「法定後見」は被後見人の財産を守ることが任務となり、財産の贈与や自宅売却には家庭裁判所の許可を要し、その実現は極めて困難と言えます(次回説明します)。
    3. (3) 「相続対策は先ず財産の棚卸しから」で、先ず相続財産の全部を把握し、相続人への財産の配分を考え、「遺言書」の案を構想し、相続税の負担がある場合は「納税資金」についても考えておくことが大事です。
      • (ア) 遺言書に相続財産の全容が明確に記載されてあれば、遺言の執行手続が速やかにでき、遺産分割を早期に終えることができます。
      • (イ) 夫婦に子供がいなく、妻又は夫に遺産全部を相続させる場合は、親あるいは兄弟姉妹も法定相続人となるので、遺言書を作成しておくことが最も大事です。
        • a) 遺言書がないため、妻が夫の姉妹から遺産分割を求められ、夫婦が居住したマンションを売却せざるを得なかった事例もあります。
        • b) これは「法律が冷たい」のではなく、夫婦が相続対策を怠っていたのです。
      • (ウ) 司法統計によると遺産分割調停(家庭裁判所申立事件)は年々件数が増加し、令和4年は14,371件に達し、その8~9割が相続税がかからないか、殆どかからない場合が占めており、「第一章」の「死んだら財産争いが始まります」を地で行っているかのようです。

筆者紹介

特別顧問

弁護士 青木 幹治(青木幹治法律事務所) 元浦和公証センター公証人

経 歴
宮城県白石市の蔵王連峰の麓にて出生、現在は埼玉県蓮田に在住。 東京地検を中心に、北は北海道の釧路地検から、南は沖縄の那覇地検に勤務。 浦和地検、東京地検特捜部検事、内閣情報調査室調査官などを経て、福井地検検事正、そして最高検察庁検事を最後に退官。検察官時代は、脱税事件を中心に捜査畑一筋。 平成18年より、浦和公証センター公証人に任命。埼玉公証人会、関東公証人会の各会長を歴任。 相談者の想いを汲みとり、言葉には表れない想いや願いを公正証書に結実。 平成28年に公証人を退任し、青木幹治法律事務所を開設。 (一社)埼玉県相続サポートセンターの特別顧問にも就任。 座右の銘は「為せば成る」

財産リストを作成しましょう

2025.1.16

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

皆さんは実際に贈与をする際、何のために贈与をするのか、贈与をすることでその目的は達成できるのか、しっかりと検討をされていますか?

 

例えば相続税の負担を抑えるために贈与を検討している方の中には、実際には相続税がかからない見込みの方もいます。具体的に対策を講じる前には、財産の明確なリストアップをしておきましょう。次のような財産リストを参考に、ぜひ作成してみて下さい。

 

思ったより大変な相続手続き

2025.1.6

こんにちは。相続コーディネーターの古丸です。

 

ご相続手続きを一通り終えた方の感想は、大半が「ほっとしました」「大変でした」です。相続手続きの煩雑さも大きな理由でしょう。ご相続が起きた場合に戸惑わないように、どんな相続手続きが必要でいつまでに行うのか確認しておきましょう。

 

■相続開始後のスケジュール

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■満席御礼■ 相続の準備完全ガイド【第1講座】相続・相続税のきほん 第4期

2025年6月29日(日)午後2時00分~3時30分(午後1時45分受付開始)

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